BUKKOMI

脳直日記です

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自己投影型無個性夢主万歳派なので、というのは言い訳かもだけど、ヒロインのキャラに幅がないから似たような話ばっかりになるんかな
#twi
No.41
68 字
ウェンザレインストップス#掌編

「雨がお嫌いですか?」

 朝から降りやまぬ雨を見つめながら、ぎり、と葉巻を噛みしめているように見える社長にそっと声をかける。地上三十階にあるこのフロアから見えるのは灰色の曇り空ばかりで、こうも優しい雨では音もせず降っているのかよくわからない。社長は雨に濡れるだけのモノトーンの街からは目を離さず、私の問いかけに問いで答えた。

「なぜ、そう思う?」

 昔のあなたを知っているので、とは思うだけで決して口にしない。そばにいると何度も口をついて出そうになってしまうこの思いを、私は唇を噛んで胸の中にぐっと閉じ込める。その時の、うっ、と喉の詰まる感覚にも、もう慣れてしまった。それくらい、そばにいる。
 「昔」というのは今から何年前、というわけではなく、きっと前世と説明される「いつか」。あなたは「砂漠の王」で「サー」だった。私は、レインディナーズで借金のカタにと置いて行かれた小娘で、あなたに拾ってもらって、秘書の真似事を。大変に優秀な副社長の補佐の補佐の補佐、くらいだったけれど、いなくても決して困らないが、あって邪魔なものでもない、くらいの働きはしたようで、サーが最後の作戦に打って出るというその日まで仕えた。
 ナノハナにサーの葉巻を受け取りに行った私は、副社長からきつく言われていた。「明朝七時までに街を出るように」と。理由を知ったのは街が火の海になってからだ。「明日、珍しい葉巻が届くよ」と店主に教えてもらい、ナノハナに泊まってそれを待つことにしたのだが、それが運の尽き。私の最後の記憶は、頬で感じた、ナノハナの熱く乾いた地面の固さだ。大方、騒乱の流れ弾に倒れたのだろう。サーがあの世でどう生きたか、私は知らない。
 次の世でも秘書の真似事をしたのはなぜなのか、自分でもわからない。いくつめかの派遣先でサーに会うまで、私は砂漠の国での思い出を、思い出とは呼べずにいた。黒髪を後ろに撫でつけたオールバック、顔を横断する薄い傷跡、左手の義手。ひとつひとつ、記憶のピースが嚙み合っていく中、最後に嵌まったピースは声だった。『新しい秘書というのは君か?』

「他意は、ありません」

 嘘だ、本当はいつも探している。あなたが「サー」だと確信できる何かを。好きな葉巻、好きなお酒、好きな料理、苦手なもの。雨もそのひとつ。昔のあなたは、理由はわからなかったけれど、雨が嫌いにみえた。それは晴れを好んだわけじゃなく、渇きを好んでいるようで。常に何かに飢えていて、満足しなかった。
 でも、あの日のサーは、いつになく上機嫌で、だから私は、お祝いの葉巻を。

「……雨は苦手だ」

 社長が独り言みたいに呟く。そして、「雨はおれをひどく、不自由にする。なぜか、そんな気分になるものでね」と言いながらゆっくりと振り返り、社長の中に「サー」を探す私を見つめた。「おれが何を言っているか、君にはわからないだろう?」社長は私を見つめながら、そのもっと奥を覗き込むようだった。私は「はい」とも「わかります」とも言えず、ただ黙るしかなかった。
 社長がおもむろに口を開く。

「なぜ、言いつけどおり街を出なかったんだ? お嬢さん」

 サーの問いに何と答えるべきか、言葉より先に零れたのは涙だった。クハハ、と笑うサーはぼやけて見えなくて、声だけがやけに遠くに聞こえる。

「雨は苦手なんだ、知っているだろう?」
畳む

No.39
1414 字
覆面企画、答え合わせがありました。色んな方とたくさんお話できて楽しかった~

#twi
No.37
45 字
昨日、お慕いしている方から創作論を伺うことが出来て「なーる!」となったことがあったのでそのへん含めの備忘の日記です。

#KISSMEMORE で自分のスタイルが揺らいだ理由について

私がそもそも小説もどきを書き始めたきっかけは、もうとんでもなく昔の話なのに、今でも鮮明に覚えているのですが、戯れに書いた5行くらいのSS(SS…)を褒められたからでした。それまではイラストを描いていたんですが、大してうまくもなく(というか、上手くなりたい、とデッサンとか練習しようというところまで意識がなかった)、戯れに書いたSSの方が反応があったんですよね。
さすがにまんま残ってなかったけど内容は、ウソップとルフィの話で、ウソップがヤソップと同じ台詞を言うのを聞いたルフィが笑顔になる、みたいな文章でした。

ちょろい私はそのまま字書きに転向。
書き始めたころは、選んで「一瞬」を書いていたわけではなくて、消去法で「一瞬」しか書けなくて、結局そのスタイルがずーっと続いていたように思います。長いストーリーが思いつかない、というのもありますね。私は大体「この一言を言わせたい!」みたいな感じで書き始めるので、1話の中で日をまたぐことすら稀といいますか。お話の中で経過している時間が、たった5分とか全然ある。

短編連作が好きだったのも、もちろん形式として好きだったけど(ブラックジャックとか、ポーの一族とか)、そもそも長編を書ける力、構成力がなかったので、思いつくまま、同じ舞台設定で色んなシーンを書いていくと、いくつかまとまったときに、なんとなーくひとつの作品に見える、というのが自分には無理がなくて、合ってるように思っていました。

で、かなりの期間創作から離れていて、私がまたこうして書き始めてみたときに!なぜか!本当に無意識なんですが、書こうと思った話が長編じみていたんですよね…?いや、本当に不思議だし、意識してなかったし、今気づいたんですけど。でも、その理由は「セルフリメイク」にあるかもなと思い至りました。

元の話を書いたときはそのシリーズに流れるストーリーなんてなかったんです。思いつくまま、思いついたシーンを書いていたので。例えばリメイク前の#KISSMEMORE ですが、

カクと付き合っている、というのは前提で
掌…尊敬するアイスバーグが自分を褒めてくれたと知って感極まるヒロイン
額…女だてらに、と無理しているんじゃないかと心配してくれるパウリー
頬…熱を出したルッチを看病するヒロイン
唇…アイスバーグがヒロインを褒めていたと伝えるカク

こんな感じで思いつくまま、時系列なんて気にせずに、どんどん書いていきました。で、最後の話だけこれまでを振り返るような話にして、なんとな~くまとまった、テーマに沿った一つのシリーズ、という風情に。

これをリメイクしよう、と思った時になんとなく「全体を通した大きな流れ」みたいなものを自分の中で作ってしまった=長編、という形式になってしまったのかなと自己分析しています。#KISSMEMORE は、このままだと、カクと付き合っているのに他の男にもちゅっちゅする無節操ヒロインかやべえな🤦‍♀️と思ってしまって…。全面的に見直しました。

短編連作は「結果」ですが、この「結果」を見据えて書き始めてしまった=長編、みたいな。

でも、長編なんて書いたことないので、すぐに詰まってしまって。この時期に頼った「プロット」と「本にしてみよう」という気持ちも、#KISSMEMORE で自分のスタイルが揺らいだ理由につながると思っています。

まずプロットは、これまで全然作ったことなくて!このとき私が参考にしたプロットはいろいろあるし、そして今も全然確立できてないんですが、この動画を見て、これをやってみたら「長く書けるかも」と思ってしまったんですね。(決してこの方が悪いという話ではなく!とても参考になるわかりやすい動画でした。)

長く、というのは「本にする」というのを意識しすぎたせいです。あと、プロットとはこうなんだ、こうでなきゃいけないと思いすぎてしまったというか。#KISSMEMORE の1話を例にすると、元々は「勘違いでカクにキスされるヒロイン」が書きたくて。そのシーンだけでも話は成り立つのですが(動画の方もそうおっしゃっています)、上記動画に影響されて、

起 カクとの出会い
承 カクに食事に誘われる
転 勘違いでカクにキスされる
結 カクを慰める、パウリーに怒りを覚える

といった起承転結で書き直しました。でも正直「起」とか無理矢理書いたので書きたいシーン、が特段なかったんですよね…。書きたいシーンがあれば別だったんだと思いますが、無いのに無理矢理書いたので、なんかつまんないな~無駄に長いな~という印象になったんだと思います。
動画の方では「カクとの出会い」にさらに起承転結を作る、という方法が紹介されていて、そうすると「転」が多くなってだれない。といった説明でした。この方法「確かにすごい!」となって真似してみたのですが、結局「カクとの出会い」の起承転結をちゃんと作れなかったので、結果として、冗長になっただけ、になってしまった気がします。

お慕いしている方は「書きたいシーンにピントを絞る」と表現されていて、これは、まさに私がやってきたというか、これしかやれない、ということだったので、そっか…これでもいいんだなと改めて思った次第です。
というか結局「書きたいこと書きゃあいいんだな!」ですね。それが長編になるか短編になるかは結果なだけであって。ここまで書くとすべての元凶は「本にしたい」という気持ちな気がしてきました。本にしてみるが楽しくて、またやりたいと思ったのですが、好きなだけ書いてから考えるようにしたいと思います。

書きたい一瞬ばっかり書くぞ!
No.36
2421 字
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