注文の多いターゲット #掌編 #練習続きを読む「随分手間をかけさすのう」 誰に言い訳する必要もないのに、ついそんな言葉が口をついた。こう言っておけば、弁明できる気がしたのだが、馬鹿らしい。革命軍の女に嫌々従ったなんて、そんなの信じてもらえるわけがないのに。 夕焼けに染まる橙色の浜辺には自分達しかいなかった。靴が濡れるのも厭わず波打ち際を歩く彼女の「ひゃ、冷たい」という軽やかな声が、波の音にかき消されることなく聞こえる。 彼女の家のドアを開け、名を呼び、お前を殺しに来たのだと説明すると、目の前の彼女は呆気なく生きることを諦めた。逃げようとしたり叫ばれたり暴れられたりしては面倒なので、彼女の諦めの良さは好都合だった。今日は当たりを引いたなと、ほくそ笑む。そして、夕飯のメニューに思いを巡らせたのだが、それは気が早すぎた。 彼女は『出来れば海で死にたい』と言い出した。「手を握っててくれる?」「この期に及んでまだ注文が?」「不快かな?」 難なく死を受け入れたかと思えばこの有様だ。騙された気分にもなるが、別に拒否してもいいのだ。それをしないのは、これ以上生きる気はないのに、死に方にはこだわる女のアンバランスさからなんとなく目が離せなくなったから。死に方に何か意味があるのか知りたかった。 左手をスラックスで拭い彼女の右手を取る。彼女は少し目を見開いた。絡めた指は細く、折ってしまわないかとひやひやする。「武器、使うのね」「今日は持っとるからのう。使わなきゃ手が汚れるじゃろ」 彼女は繋いでいない右手の刀に視線を落としつつ、それを聞いて普通の笑顔を見せた。なぜ笑うのかはわからない。「最期に言い残すことは?」「それを伝えに行ったあなたが私の大事な人を殺しちゃうかもしれないじゃない」「それもそうか」「仲間も、友も、家族も。どうかあなたに会わないで欲しい」「嫌われたのう」 目を閉じた彼女にあわせて右手の刀を振る。瞬間、彼女の唇が「痛くしないでね」と紡いだ。 くそ、と眉間に皺が寄る。手元が。畳む No.421 2023/12/06(Wed) 20:40 869 字
来たよ🐾ボタンや👏、ありがとうございます!#お返事 昨日は無性に眠くて21時頃に寝てしまってそのまま朝までぐっすりでした。今日は久しぶりに小説みたいな文章を書きました!よかった!書くまでに考えたこともチラ見せしてます。なんとか書けてる!書くことへのハードル、というか、「良い話を書きたい」と思って「書けない」と思うより、まずは駄文でも最後まで仕上げていきたいと思った今夜。#日記 No.420 2023/12/05(Tue) 22:13 195 字
海辺の二人 #掌編 #練習続きを読む「随分手間をかけさすのう」 そう言いながら付き合ってくれた彼は、口調のわりには楽しそうだった。夕焼けに染まる海は美しく、沈む夕日に伸びる光の道はゆらゆらと波にあわせて形を変えた。沈む太陽に希望を感じたのは初めてだ。何もこんな日に。 浜辺には私たちしかいなかった。波の音が意外に大きい。 革命軍である私を殺しに来たのだと、彼は説明した。どうにも逃げられないと観念した私は『出来れば海辺で死にたい』と頼んでみる。冗談みたいな私の頼みを最後まで聞いてくれたのにも驚いたが、本当に連れてくるのだからもっと驚いた。「手を握っててくれる?」「この期に及んでまだ注文が?」「不快かな?」 どうせ死ぬなら、と気が大きくなって言ってみたのだが、彼は軽く息を吐いた後、大きな掌を黒いスラックスで乱暴に拭って、思っていたよりずっと優しく私の右手指と絡めた。彼の右手にはいつの間にか刀が握られている。「武器、使うのね」「今日は持っとるからのう。使わなきゃ手が汚れるじゃろ」 あれ、嫌なんじゃ、と眉を顰める彼がおかしかった。『手が汚れる』とは文字通りの意味なのだろう。素手で命を奪うことへの抵抗感が、彼にもあるんだなあとぼんやり思って、なんだか嬉しくなった。「最期に言い残すことは?」「それを伝えに行ったあなたが私の大事な人を殺しちゃうかもしれないじゃない」「それもそうか」「仲間も、友も、家族も。どうかあなたに会わないで欲しい」「嫌われたのう」 寂しそうに言うのはずるい、と思う。目を閉じる。「痛くしないでね」 彼がぎょっとしたのが見なくてもわかった。手元が狂わないことを祈る。畳む No.419 2023/12/05(Tue) 21:40 719 字
12/4朝:(忘れた)昼:手巻き寿司(まぐろ)、ゆでたまご、アロエヨーグルト夜:おでん(はんぺん、たまご、こんにゃく)、おこわ、えのき炒め、マカロニ12/5朝:ツナ納豆、飲むヨーグルト昼:山菜月見とろろそうめん、飲むヨーグルト夜:そぼろ卵かけご飯、えのき炒め今日はエアロバイク15分漕いで、ステッパーに30分乗りました。一人暮らしを始めてから続けている朝のルーティンが「トイレに行ってから全裸で体重をはかる」なんですが、ここに運動を組み込もうとすると無理がある(面倒になる)ので、やめようと思う!(己にとってはなかなかの決断なので「!」となっています。)起きて、トイレ行って、服脱いで体重はかって、また服着て、運動して…とやってたのをやめる!起きて、お茶飲んで、トイレ行って、運動して、シャワー浴びて、服着るときにはかる!これまでは、その日一番軽い身体ではかることを優先していたのですが、いいなと思える体重から8キロも太って、しかも昨日今日で1キロとか増減してる状況で、今更、さっき水飲んだから300g増えたのかあ…とか思うのどうでもいいなとようやく思えてきて。それより運動を続けることを大事にしたい。家族も、腹筋鍛える!と宣言していたので、私もまたぼちぼち頑張ろうと思います。自分以外の何かのせいで、私が体調崩したり、運動辞めたり、ご飯食べるの適当になって健康が損なわれていくの、腹立つ~と思っているので。やれることからぼちぼちと…。#日記 No.417 2023/12/05(Tue) 20:41 637 字
朝:たらこうどん昼:ごはん、唐揚げ、酢の物、スープ夜:そぼろ卵かけご飯、カップ焼きそば自炊をするようになって長いのですが、今日初めて揚げ物(唐揚げ)が上手にできました!感動!何度か挑戦して、そのたびにもう二度と揚げないと心折れていたのですが出来た!!!!!!嬉しい!!!!!自炊に慣れてくるとなかなか新作って挑戦しないので、何食べのシロさんはすごいな…。#日記 No.414 2023/12/03(Sun) 22:45 187 字
LION ライオン 25年目のただいま 観ました実話なのがすごい!初め、駅で子供が一人で「帰りたい」と叫んでも、周囲の大人は追い払うだけ、というのに違和感があったんですけど、あれがインドの現実なんだなと知って驚きました。よく冗談みたいな調子で描写される「インドで子供たちに囲まれる図」は本当なんだな、と。知ってはいたけど、なんていうか…帰る家がない子供たちなんだという想像が及んでいなかったというか。養父母の「世界には人が溢れている。自分たちで産むのではなく、傷ついた子供を引き取って育てられたら役に立てる」という考えはなかなか持てるものではないし、持てても実行に移すのは相当な覚悟がいるだろうと思うので、本当にすごいなあと思いました。お兄さんに会えたらいいなと思っていたので、お兄さんもサルーが行方不明になった夜に列車に轢かれてしまって…というのはかなり衝撃でした。きっとサルーを探し回ってたからだよね…?辛い。お兄さんにこそ会って謝りたかっただろうなと思うので。エンドロールで養父母と幸せそうに暮らすサルーとマントッシュの写真が流れてなんだかじんときました。#感想 No.413 2023/12/03(Sun) 22:41 491 字
「随分手間をかけさすのう」
誰に言い訳する必要もないのに、ついそんな言葉が口をついた。こう言っておけば、弁明できる気がしたのだが、馬鹿らしい。革命軍の女に嫌々従ったなんて、そんなの信じてもらえるわけがないのに。
夕焼けに染まる橙色の浜辺には自分達しかいなかった。靴が濡れるのも厭わず波打ち際を歩く彼女の「ひゃ、冷たい」という軽やかな声が、波の音にかき消されることなく聞こえる。
彼女の家のドアを開け、名を呼び、お前を殺しに来たのだと説明すると、目の前の彼女は呆気なく生きることを諦めた。逃げようとしたり叫ばれたり暴れられたりしては面倒なので、彼女の諦めの良さは好都合だった。今日は当たりを引いたなと、ほくそ笑む。そして、夕飯のメニューに思いを巡らせたのだが、それは気が早すぎた。
彼女は『出来れば海で死にたい』と言い出した。
「手を握っててくれる?」
「この期に及んでまだ注文が?」
「不快かな?」
難なく死を受け入れたかと思えばこの有様だ。騙された気分にもなるが、別に拒否してもいいのだ。それをしないのは、これ以上生きる気はないのに、死に方にはこだわる女のアンバランスさからなんとなく目が離せなくなったから。死に方に何か意味があるのか知りたかった。
左手をスラックスで拭い彼女の右手を取る。彼女は少し目を見開いた。絡めた指は細く、折ってしまわないかとひやひやする。
「武器、使うのね」
「今日は持っとるからのう。使わなきゃ手が汚れるじゃろ」
彼女は繋いでいない右手の刀に視線を落としつつ、それを聞いて普通の笑顔を見せた。なぜ笑うのかはわからない。
「最期に言い残すことは?」
「それを伝えに行ったあなたが私の大事な人を殺しちゃうかもしれないじゃない」
「それもそうか」
「仲間も、友も、家族も。どうかあなたに会わないで欲しい」
「嫌われたのう」
目を閉じた彼女にあわせて右手の刀を振る。瞬間、彼女の唇が「痛くしないでね」と紡いだ。
くそ、と眉間に皺が寄る。手元が。畳む