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焦っては駄目 #パウリー

 私はこう見えても尽くすタイプだから、デートの時に好きな男の好きな服を着るくらいなんともない。だから今日だって、タートルネックの膝丈ニットワンピにジャケットを羽織ってるし、もちろんタイツは110デニールだ。今日、肌色なのは顔と手くらい。肌寒い季節ならこうやってなんとかなるけど夏は死ぬ。だから、少し意地悪でも、荒療治でも、なにか手を打たないと、とそう思ったのだ。

「ごめん、パウリー。お待たせ」
「おう」

 パウリーはもう待ち合わせ場所にしていた花屋の前で待っていた。わたしが駆け寄ると、パウリーが私の頭の先から爪先までさっと目でなぞる。パウリーは肌が見える服を過度に嫌うけど、肌が見えなければ、そううるさく言うこともない。今日の格好は合格だったのだろう、「見たことねェ服だな」とちゃんと新しい服だと気がついてくれた。

「デート用に買っちゃった」
「……悪くねェな」
「似合っててかわいい、ってことだよね」
「知らねェよ!」

 相変わらず思春期の男の子みたいな人だ。そんなところも好きだけど、成人した男女がそればっかりじゃ私も困る。慣れていないだけなら慣らしていけばいい。

「パウリー!」

 言いながら彼の腕に抱きついた。パウリーは「ウカ!? こらっ! 放せ!」と相変わらずだったが、今日の私には秘策があるのだ。私は振り払われないよう頑張ってパウリーの耳元まで顔を寄せてこう囁く。

「今日、つけてないの」

 何のことかわかる?と続けなくても、真っ赤になって口をパクパクさせているパウリーの顔で全部わかった。

   ◆

「パウリー! ちょっと、どこいくの!」

 パウリーは顔を真っ赤にしたまま、私の手を引いて彼の勤務先であるガレーラカンパニーの造船ドッグの方へどんどん大股で歩いていく。私はついていくので精一杯だ。今日は休日だから市街には人がたくさん溢れていたけど、オフィス街といっても差し支えないこちらの方はほとんど人気がなかった。倉庫が建ち並ぶ迷路のような区画を縫うように連れ回されたところで、ようやくパウリーが立ち止まってこちらを向き、肩を掴まれ、そのまま倉庫の壁に押しやられた。

ウカ! お前なあ!」
「へ?」
「俺がどんだけ我慢してたと思ってんだ!」
「な、なにを?」
「俺は! だ、大事にしたいと……そう、思ってたのに……」
「え、ご、ごめん! でも、え?」
「いい、ってことだよな?」
「んぅッ──!」

 返事をする前に唇を奪われた。両手で顔を包まれ、舌が荒々しく入ってくる。フレンチ・キスなら付き合ってから何度かしたが、こんなのは初めてだった。葉巻の煙の味がして、彼がいつも使っている整髪料の香りが鼻孔をくすぐる。息つく暇も与えてくれず、束の間、唇が離れるときだけ、ちゅ、と水音が響いた。合間に、ふ、あ、と自分の声も混ざる。私の頬を覆う彼の手のひらは大きくて厚くて柔らかかった。

「ぱ、ぱう、りー!」
「あァ?」
「ちょ、っと、待って」
「待てねェよ」

 そういってパウリーは「何もつけてない」胸の膨らみに手をあてがった。

「こ、ここで!?」
「お前がつけてこなかったんだろ?! 声出すなよ」
「む、むりいッ──! ッ──!」

 さっきの長いいやらしいキスのせいで屹立してしまっている胸のそれを、パウリーの太くて武骨な親指が、ゆっくり、その存在を確かめるように上下に擦る。私には服の上からでも十分な刺激だった。指が動く度、背中に電流が走り、膝がガクガクと震える。丹念にこすられたそれは、もう固く尖っているのが服を着ていても丸分かりだ。パウリーはそれでもやめてくれない。むしろ少しずつ指の動きが速くなっていく。口元を手で押さえていても、しゅ、しゅ、と擦られるのにあわせて喘ぎ声が漏れてしまう。

「んっ……んぅッ──!」
「俺だってな……」
「んんッ! ──ッ! んあッ!」
「男なんだぞ」
「んあああッッ!!!!」

 擦られていた乳首を急にぎゅうっと摘ままれ、たまらず悲鳴のような声をあげてしまった。

「声出すなって言ったろ?」

 耳元でそう囁かれても無理なものは無理だ。首を大きく振ったが「仕方ねェな」と唇で塞がれた。いつのまにか股の間にパウリーの足があり、ぐりぐりと押し付けてきた。そうやって、舌で口内を蹂躙され、指で胸を玩ばれ、足で一番敏感な部分を刺激される。あまりの快感に腰が引けるが、パウリーと後ろの倉庫の壁がそれを許さない。どんどん快楽に追い詰められていき、逃げ場がない。もう────

「アイスバーグさん?」
「カリファ? 休日にどうしたんだ?」

 突如、見知った人たちの声が聞こえてきて、潮が引くように一気に快感が冷めていった。パウリーも同じようにぎょっとしたのがわかった。すぐ唇を離し、顔こそ向けなかったものの、耳だけそちらに傾けていた。声はそう近くない。そしてそのまま遠くなっていった。二人とも同じタイミングで息を吐く。短くはない気まずい沈黙のあと、パウリーが服の乱れを直しながらそっと呟く。

「わ、悪かった……」
「え?」
「その……こんな外でよ……」
「わ、私もごめん。からかうような真似して……その、大事にしてもらってたのに……」
「いや、俺も……服とか、気ィ遣わせて……。ま、じゃ、遅くなっちまったけど飯行くか?」
「え?」
「え?」

 思わず出た私の戸惑いにパウリーも同じように戸惑っている。でも、このままご飯なんか食べられるわけない。パウリーも同じでしょ?

「行くならベッドがいい」
「は、ハレンチなこと言うな!」

 パウリーはまた顔を真っ赤にしていつもみたいに喚いていたけど、私は彼の喉がごくりを動いたのを見逃さなかった。きっとこれから手を引かれて連れていかれるのは彼の部屋だ。下腹が疼く。
おしまい

官能小説,短編,ONEPIECE 2421字 No.61 

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