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カテゴリ「猛獣たちの躾け方」に属する投稿[4件]
冤罪 #カク #カリファ
ウカさんの挨拶が終わったあと、ルッチとカク、ジャブラ、フクロウはその場に残され、この前の任務の報告をさせられたようだ。退室を許された私たちに特段予定はなく、なんとなく私の部屋でお茶をすることにするが、クマドリは鍛練があると言うので廊下で別れた。 結局、ブルーノにだけ紅茶を淹れる。
「カリファは知り合いなのか?」
「ええ、父の関係で。子供の頃良くしてもらったわ」
「どんな人なんだ?」
「どんな……」
どんな、と問われて、なんと言えばいいか迷った。私の知っているウカさんは、子供の頃、会えば必ず屈んで目線を合わせてくれ、そして「お元気ですか?怪我などされていませんか?」と心配してくれる、そういう人だ。初めは、他の大人たちと同じく、父へのアピールかと疑ったこともあったが、どうやらそんなこともなく、結果としてなついてしまった自分がいる。そして、なついた結果の秘密も。 だから、
「仕事は出来る人だと思うわ」
こうなった以上私はウカさんの味方だ。みんなには悪いけど。
ブルーノは「そうか」と応じて、それ以上何も聞いてこなかった。
ルッチとカクは戻ってこなかったが、ジャブラとフクロウは廊下でジャブラがやいのやいのと騒がしいのがわかったので部屋に寄らないか、と声をかける。
お茶を出しながら、フクロウに「どうだった?」それとなく話を振ってみたのだが、彼には本当に珍しく口が固い。ウカさんに怯えているようにも見えるが、言いふらした後のルッチからの制裁が怖いのだろうか。「いや、まあ、ルッチが……うまく説明してくれた……」となんとも歯切れが悪く、この場にいては喋りたくないことも喋ってしまいそうで不安だとでもいうように、淹れたお茶もそのままに、そそくさと退室してしまった。その代わり、ジャブラが普段以上に饒舌に教えてくれる。
「いやァ、いいもん見たぜ! あいつらにも言ったがよ。おれは完全にウカ派だ。ルッチの野郎が怒りでわなわな震えるところなんて、なかなか見られねえぞ!」
しかも女相手に! と相当愉快なようで、ジャブラは笑いが止まらない。先程の出来事を反芻して、また一人、くくと笑っている。
「ルッチの枷なのか?」
とブルーノは腕を組んだ。ルッチの枷、そんなものにウカさんがなれるだろうか。
「にしても、ルッチのやつに忠誠誓って跪けたァ……最高だ」
「ウカさん、ルッチにそんなこと言ったの?」
「ルッチはどうしたんだ?」
「差し出されたウカの指をちゅうちゅう吸ってやがったぜ。傑作だ。ウカは微動だにしてなかったけどな」
ブルーノはよくわからん人だな、と紅茶を啜った。カリファは他の二人に気づかれないようにため息をつく。私から言わせれば「相変わらずだな」だ。
「悪いけど、お開きにしてもらえる? ウカさんに改めて挨拶してくるわ」
二人を無理やり追い出してドレッサーの前に座った。ヘアオイルを手のひらで温め、手櫛で髪を整えながら、なかなか減らない香水瓶をいくつか眺める。髪をいじりながら迷って、シンプルで無機質、長方形の板みたいなガラス瓶を手に取った。買ってはみたものの、なかなかつける機会のなかった香り。胸元より少し下、みぞおちの辺りにワンプッシュする。これは、悪女の香りだ。ウカさんに会うなら、これくらいでないと。体温で肌に馴染んでいく香りを確かめながらシャツのボタンをかけ直す。
ひとまず長官室へと歩いていくと、ちょうど、長官室前の会議室から出てくるウカさんと鉢合わせた。なぜ使われていない会議室から? という疑問と、心なしか汗ばんでいるように見えるその姿に少しだけひっかかりを覚えるが、あまり気にも留めずに声をかける。
「ウカさん」
「カリファ! さっきはろくな挨拶もできなくて申し訳ない。変わりないかな?」
両手を広げてハグのポーズをとるウカさんに釣られるようにハグをする。もう私の方が背が高くなってしまったから、ウカさんのつむじが見えた。こうして触れてみるとウカさんは思っていたより随分小柄だ。見上げてくるウカさんがにやりと笑った。
「大きくなったね。こんな香りまで似合うようになって。感慨深いよ」
「……恐縮です」
ウカさんに気に入られたくて悩んだ香りなのに、いざ褒められると照れてしまう。体温が上がると、また香りが立ち上るような気がして、気恥ずかしい。ウカさんの前では、いつまでも何もできない少女のようだ。ウカさんの瞳はそんな私を簡単に見透かしているような気がして、目が合わせられない。
「もう私の方が屈んでもらわないといけないな」
「背ばかり高くなってしまって」
「そんなことないだろう。任務の成果は聞いているよ」
あの可愛いカリファがねえ、とさっき整えた毛先をウカさんが手ですくので、髪もちゃんとしておいて良かったとこっそり胸を撫で下ろした。 ふと、ウカさんのネクタイが無いことに気がつく。挨拶の時はしていたはずだが、では、なぜ?さっき気にとめなかった違和感が少しずつ膨らんでいく。
「……ウカさん、ネクタイは?」
「ああ、さっき外してどこにやったか……」
ウカさんがちらりと目線をやった会議室を私は見逃さない。いやいや、そこにはないよと私を制止するウカさんを無視してドアを開けると、ウカさんのネクタイが所在なさげにはらりとした佇まいで床に落ちていた。後ろでウカさんが額に手をあてている気配がする。振り向いて詰め寄るとウカさんがわたわたと言い訳をし始めた。
「いや、カリファ、これは君が思っているような」
「誰? ルッチ? ジャブラ?」
「いやあ……」
「……まさか、カクなの!?」
カクはまだ子供よ! とあからさまに眉間に皺を寄せた私に、ウカさんは心外だと頬を膨らませた。見くびるな、とも。
「私は何もしていない」ウカさんは両手をあげて、降伏のポーズをとる。
「……嘘よ」
「酷いなあ、本当だよ。私は彼に触れていない。餌を撒いたら、かかってしまったんだ」
言っておくが私は被害者だぞ?と全く害を被っていないような顔でウカさんが捲し立てる。床に落ちていたネクタイを拾い上げ、手で埃を拭うようにしてからウカさんに手渡した。
「どうせ楽しんだくせに」
「おいおい、カリファ。いつの間にそんなに口が悪くなったんだ?」
攻撃的な笑みを浮かべながら下から睨むようにこちらを視線で射抜いてくるウカさんにぞくりとしながら、私はカクのこれからを思ってまたため息をついた。
おしまい
←
ウカさんの挨拶が終わったあと、ルッチとカク、ジャブラ、フクロウはその場に残され、この前の任務の報告をさせられたようだ。退室を許された私たちに特段予定はなく、なんとなく私の部屋でお茶をすることにするが、クマドリは鍛練があると言うので廊下で別れた。 結局、ブルーノにだけ紅茶を淹れる。
「カリファは知り合いなのか?」
「ええ、父の関係で。子供の頃良くしてもらったわ」
「どんな人なんだ?」
「どんな……」
どんな、と問われて、なんと言えばいいか迷った。私の知っているウカさんは、子供の頃、会えば必ず屈んで目線を合わせてくれ、そして「お元気ですか?怪我などされていませんか?」と心配してくれる、そういう人だ。初めは、他の大人たちと同じく、父へのアピールかと疑ったこともあったが、どうやらそんなこともなく、結果としてなついてしまった自分がいる。そして、なついた結果の秘密も。 だから、
「仕事は出来る人だと思うわ」
こうなった以上私はウカさんの味方だ。みんなには悪いけど。
ブルーノは「そうか」と応じて、それ以上何も聞いてこなかった。
ルッチとカクは戻ってこなかったが、ジャブラとフクロウは廊下でジャブラがやいのやいのと騒がしいのがわかったので部屋に寄らないか、と声をかける。
お茶を出しながら、フクロウに「どうだった?」それとなく話を振ってみたのだが、彼には本当に珍しく口が固い。ウカさんに怯えているようにも見えるが、言いふらした後のルッチからの制裁が怖いのだろうか。「いや、まあ、ルッチが……うまく説明してくれた……」となんとも歯切れが悪く、この場にいては喋りたくないことも喋ってしまいそうで不安だとでもいうように、淹れたお茶もそのままに、そそくさと退室してしまった。その代わり、ジャブラが普段以上に饒舌に教えてくれる。
「いやァ、いいもん見たぜ! あいつらにも言ったがよ。おれは完全にウカ派だ。ルッチの野郎が怒りでわなわな震えるところなんて、なかなか見られねえぞ!」
しかも女相手に! と相当愉快なようで、ジャブラは笑いが止まらない。先程の出来事を反芻して、また一人、くくと笑っている。
「ルッチの枷なのか?」
とブルーノは腕を組んだ。ルッチの枷、そんなものにウカさんがなれるだろうか。
「にしても、ルッチのやつに忠誠誓って跪けたァ……最高だ」
「ウカさん、ルッチにそんなこと言ったの?」
「ルッチはどうしたんだ?」
「差し出されたウカの指をちゅうちゅう吸ってやがったぜ。傑作だ。ウカは微動だにしてなかったけどな」
ブルーノはよくわからん人だな、と紅茶を啜った。カリファは他の二人に気づかれないようにため息をつく。私から言わせれば「相変わらずだな」だ。
「悪いけど、お開きにしてもらえる? ウカさんに改めて挨拶してくるわ」
二人を無理やり追い出してドレッサーの前に座った。ヘアオイルを手のひらで温め、手櫛で髪を整えながら、なかなか減らない香水瓶をいくつか眺める。髪をいじりながら迷って、シンプルで無機質、長方形の板みたいなガラス瓶を手に取った。買ってはみたものの、なかなかつける機会のなかった香り。胸元より少し下、みぞおちの辺りにワンプッシュする。これは、悪女の香りだ。ウカさんに会うなら、これくらいでないと。体温で肌に馴染んでいく香りを確かめながらシャツのボタンをかけ直す。
ひとまず長官室へと歩いていくと、ちょうど、長官室前の会議室から出てくるウカさんと鉢合わせた。なぜ使われていない会議室から? という疑問と、心なしか汗ばんでいるように見えるその姿に少しだけひっかかりを覚えるが、あまり気にも留めずに声をかける。
「ウカさん」
「カリファ! さっきはろくな挨拶もできなくて申し訳ない。変わりないかな?」
両手を広げてハグのポーズをとるウカさんに釣られるようにハグをする。もう私の方が背が高くなってしまったから、ウカさんのつむじが見えた。こうして触れてみるとウカさんは思っていたより随分小柄だ。見上げてくるウカさんがにやりと笑った。
「大きくなったね。こんな香りまで似合うようになって。感慨深いよ」
「……恐縮です」
ウカさんに気に入られたくて悩んだ香りなのに、いざ褒められると照れてしまう。体温が上がると、また香りが立ち上るような気がして、気恥ずかしい。ウカさんの前では、いつまでも何もできない少女のようだ。ウカさんの瞳はそんな私を簡単に見透かしているような気がして、目が合わせられない。
「もう私の方が屈んでもらわないといけないな」
「背ばかり高くなってしまって」
「そんなことないだろう。任務の成果は聞いているよ」
あの可愛いカリファがねえ、とさっき整えた毛先をウカさんが手ですくので、髪もちゃんとしておいて良かったとこっそり胸を撫で下ろした。 ふと、ウカさんのネクタイが無いことに気がつく。挨拶の時はしていたはずだが、では、なぜ?さっき気にとめなかった違和感が少しずつ膨らんでいく。
「……ウカさん、ネクタイは?」
「ああ、さっき外してどこにやったか……」
ウカさんがちらりと目線をやった会議室を私は見逃さない。いやいや、そこにはないよと私を制止するウカさんを無視してドアを開けると、ウカさんのネクタイが所在なさげにはらりとした佇まいで床に落ちていた。後ろでウカさんが額に手をあてている気配がする。振り向いて詰め寄るとウカさんがわたわたと言い訳をし始めた。
「いや、カリファ、これは君が思っているような」
「誰? ルッチ? ジャブラ?」
「いやあ……」
「……まさか、カクなの!?」
カクはまだ子供よ! とあからさまに眉間に皺を寄せた私に、ウカさんは心外だと頬を膨らませた。見くびるな、とも。
「私は何もしていない」ウカさんは両手をあげて、降伏のポーズをとる。
「……嘘よ」
「酷いなあ、本当だよ。私は彼に触れていない。餌を撒いたら、かかってしまったんだ」
言っておくが私は被害者だぞ?と全く害を被っていないような顔でウカさんが捲し立てる。床に落ちていたネクタイを拾い上げ、手で埃を拭うようにしてからウカさんに手渡した。
「どうせ楽しんだくせに」
「おいおい、カリファ。いつの間にそんなに口が悪くなったんだ?」
攻撃的な笑みを浮かべながら下から睨むようにこちらを視線で射抜いてくるウカさんにぞくりとしながら、私はカクのこれからを思ってまたため息をついた。
おしまい
←
可愛い部下の望みなら #カク
副長官殿に煽られまくって結局豹化したルッチの代わりに、報告書もとい顛末書を提出しに長官室の前に来たカクは自分の耳を疑った。
「ス パ ン ダ ム さん!!!」
「おお、どうだった?」
「やっぱり無理ありますよ、あのキャラは!!!」
「いけるいける! 舐められるよりマシだろ」
「ルッチ怖いって! 豹ルッチは特に怖い!」
さっきまであのルッチを詰問していた女性と、部屋のなかで「ルッチ怖い」と喚いている女性は同一人物だろうか。声は同じに聞こえるが、とカクは恐る恐るノックをしてドア開ける。
「長官、この前の任務の報告書を」
「おや? ルッチくんは来ないのか?」
さっきまでルッチ怖いと喚いていたであろうウカはやれやれといった様子で、「嫌われてしまったようです」と先程自分達に見せたのと同じ態度でスパンダムに話しかける。
「お前、何やったんだよ」
「何も。ちょうどカクくんが報告書を持ってきてくれた、この任務の顛末を少々聞いていただけですよ」
ルッチを散々煽って、指までしゃぶらせておいてよく言う、とカクは心のなかで毒づいた。でもまあ、いい。
「わしはこれで」
「私も少しはずします」
一緒に部屋を出るそぶりだったので、副長官殿のためにドアを開けてやると、ウカは片手を上げ軽く礼を言った。ウカが廊下に出たところでカクも続き、後ろ手でドアを閉めて、小さな、でも、たっぷりと悪意を込めた声で一言。
「上官の弱味を握って強請るなんぞ、諜報部員冥利に尽きるのう」
言いながら、カクはウカに制止の間を与えぬようすかさずウカの手首をぎゅっと握って脈をとる。
「……乙女の肌に無許可で触れる罪は重いぞ?」
言葉とは裏腹な脈の速さにカクは身震いした。こんなにも動揺しているはずなのに、それを決して悟らせないその目ができるのか。
「さて、わしにも忠誠を誓ってもらおうかの」
無論、唇で。カクは愉快そうに先ほどのウカと同じ台詞を吐いた。
(あんの……くそバカ長官ンンン!!!)
ウカは「この部屋は防音仕様だからな!」と宣った長官の言葉を不用意に信じた自分を恥じた。確かCP9のメンバーでは最年少だという目の前の青年は面白そうなおもちゃを見つけた、という顔を隠そうともしないし、手も離してくれない。
「あの部屋が防音仕様だと信じているのは長官だけじゃぞ。全部筒抜けだということを誰も教えてやっとらんからのう」
「部下に恵まれない長官が気の毒だね」
「ルッチが怖いんじゃろう?あんなに怯えてかわいそうに。ワシが守ってやろう」
「まさか。“可愛い”の聞き間違いだろう?」
ルッチにも同じ台詞が通用するといいのう、と毒を孕んだ笑顔で面白そうに言葉を重ねてくるカクにウカはお手上げだと両手を上げた。
「わかった、降参だ。何が望みかな?」
「強請りの相場は金か身体か、そうじゃろう?」
彼が下卑た要求をしてくるのは正直以外だったのでウカはほんの少し目を丸くする。金にも身体にも興味がなさそうなので、てっきりウカの更迭を要求するものと思っていた。
「意外と品がないね」
「何事も経験じゃろ?」
「訓練に明け暮れていた子供の考えそうなことだ」
言うなり身体を突き飛ばされ、ウカは廊下の壁に背中を打ち付ける。ウカが体勢を整える前にカクは目の前に立ち塞がり、ウカの両手をとって壁に磔にする。そして、唇が触れそうになるくらい顔を近づけてにっこり笑った。
「決めた。わしが子供かどうか、その身体で確かめるといい」
「急に荒っぽいね。図星ですと高らかに宣言しているようなものだ」
「その仮面、必ず剥いでやるからの」
カクは長官室の廊下を挟んで目の前にある会議室のドアを開けると、ウカをそこに押し込んだ。簡素な机と椅子が数組あるだけのそう広くない小会議室だ。長官室のすぐそばということもあって、ここを使うのはCP9の面々だけ。そして、赴任してきたばかりの副長官に挨拶以外の大した予定があるはずもない。
「そんなに発散できなくて辛かったのか? かわいそうに」
「それはお前さんもじゃろ?」
カクは机に浅く腰かけるようにしていたウカの足の間に自分の足をいれてぐりぐりと押し付けた。ウカの身体は傍目には無反応に見えたが、両手首を拘束しつつ、脈を取るのも忘れない。
「ルッチの舌はそんなによかったか?股が濡れているぞ」
「──ッ! 本当に……ッ! 品の、ない子だ。まさか経験もないのか?」
「だからそれを確かめてみろと言っておろう」
両手を使えないのはカクにとっても面倒だったためウカのネクタイを引き抜き、後ろ手に縛った。ついでにシャツのボタンも外していくと汗ばんだウカの肌が少し露になる。下着を緩めてインナーと一緒に上にずり上げると、胸の突起が固く屹立しているのが見ただけでもわかった。この状態であの口ぶりなのだから恐れ入る。
「ふ、口では余裕ぶっているが身体は正直じゃのう」
「だから……そういう物言いはどこで覚えてくる──っんん!」
「胸ばかり気にして、股のことは忘れとったのか?」
カクが足でウカの足の間にある敏感な部分を刺激すると、さすがのウカも不意打ちがすぎたのか、声を漏らしてしまったようだった。
「ゆっくり焦らす時間もないし、順当なところから責めておくか」
カクはウカのベルトを緩めスラックスとショーツを足元まで下ろした。これで簡単な足枷にもなる。
「もっと丁重に扱えないものか? 仮にも上司で乙女だぞ」
「すまん、すまん。今度はベッドの上で頭から爪先までゆっくり可愛がってやるから、今は勘弁してくれ」
「今度だと?」
「まさか副長官殿は“強請り”がたった一回で済むとでも?おめでたいのう」
「ふざけるのも──ッぁん! あ、あぁ! んんぁッ! ま、まて──ッ! ぅあッ!」
「やっぱり可愛い声も出せるんじゃな」
カクは左手を胸の飾りに、右手をさっきまで足で刺激していた突起に添え、もう片方の胸の尖りを口に含むと、指と舌を使って三ヶ所を一気に責め立てた。押し寄せる快感が大きすぎて、ウカは思わず腰をひいてなんとかやり過ごそうとするが、カクの足と机に阻まれ思うように逃げられない。
「そんなにこひをふらんでも……ちゃんと弄っとるじゃろ」
「咥えながら──ぁッ! 喋るなッ!」
「ふまんの」
カクはさっきからずっと同じリズムで絶え間なく刺激を与え、ウカの身体に快感をどんどん蓄積していく。何パターンかを試し、一番反応がいい動きを探った。
「ウカは指で乳首をこりこりされるのが好きなんじゃなあ? 残念じゃがもうバレとるぞ。で、舐めるときは下から上に押し込むように、じゃろ? 下の方は優しくカリカリされるのがいいみたいじゃの」
「わか……った、気に、なるのも──ッぁ……大概に……んぅッ!」
「ここまで蕩けさせておいてその言葉が出るのか。天晴れじゃな」
でももう終いじゃ、とカクはウカの身体から手と口を離すと、ウカの身体を抱えて机の上に転がした。ウカを拘束していたネクタイをほどいて仰向けに寝かせる。そして、手慣れた手つきで自分のモノを露にするとスラックスと下着で自由がきかないままのウカの両足をぐいとウカの顔の方に押しやって、先端を濡れそぼったウカの秘所に押しあてた。
「脱がすのが面倒での。悪いが今日はこれで」
「乙女の扱いと物言いについては……今後たっぷりと教育してやろう」
下半身をとろとろにさせながらもカクを睨み付け折れないウカに、カクは自分の嗜虐心をウカの手のひらでなぜられたような感覚に陥る。
ウカの蜜壺は十分に潤っていたが、体位のせいもあり、さすがに一気には貫けない。カクはゆっくりと腰を動かし、少し抜いてはまた奥へ、奥へと進めていく。進むほどにウカの中襞はカクに吸い付き、腰の進みに合わせてウカが声を殺しきれず小さく喘ぐ。
「んぁぁ……ッ! ……ぅあッ! ……ひ……ぁッ!」
「押し殺してる声もいいのう。ただ……いつまで我慢できるかの?」
それを合図にカクは収まりきった自身をそのままに、律動を早めた。なるべくウカの最奥を刺激できるよう腰を密着させる。
「さすがにこの短時間で子宮はおろせなかったか。また今度じゃな」
「ん゛ん゛ッッ! ん゛んんッ! んああッ!」
カクの知ったような軽口に、ウカは言い返したかったが、いま口を開くと喘ぎ声しか出せないことは自分でもよくわかっていた。そのため必死に手で口を押さえた。その様子をカクが楽しそうに見下ろしてにやにやしているのにも気づいたが、カクの硬くなったモノが自分のナカをトントントントンと突くたび、電流が走るような刺激に頭を真っ白にされてしまい、快感で思考が塗り潰されていく。
「おっ?! 中がひくついてきとるの。時間ももうないし、合わせてやろう」
カクがさらにウカを追い込むようにウカの乳首に両手を添えた。添えているだけでも、揺さぶられているので刺激がうまれてしまう。
「そっ! それはッ! だめ、だッ」
「だめと言われて止める男がいるのか? 好きなんじゃろう? 指でつままれてくりくり弄られるのが」
「あああああッ!」
ナカからの刺激と相まって、ピストンされながら乳首をつままれ玩ばれたウカは呆気なく果ててしまった。身体を震わせながら果てたウカの、その肉襞のうねりを楽しみつつ抗うように腰を動かしていたカクもほどなくして熱い飛沫を迸らせた。
カクは、はあはあと肩で息をするウカの耳元でそっと囁く。
「次は、最後のあの声で一晩中鳴かせるからの」
「はぁ、はぁ……、ふう……お手並み拝見といこう」
ウカはまだあのウカだった。カクは面白くなさそうに唇を噛む。
おしまい
← →
副長官殿に煽られまくって結局豹化したルッチの代わりに、報告書もとい顛末書を提出しに長官室の前に来たカクは自分の耳を疑った。
「ス パ ン ダ ム さん!!!」
「おお、どうだった?」
「やっぱり無理ありますよ、あのキャラは!!!」
「いけるいける! 舐められるよりマシだろ」
「ルッチ怖いって! 豹ルッチは特に怖い!」
さっきまであのルッチを詰問していた女性と、部屋のなかで「ルッチ怖い」と喚いている女性は同一人物だろうか。声は同じに聞こえるが、とカクは恐る恐るノックをしてドア開ける。
「長官、この前の任務の報告書を」
「おや? ルッチくんは来ないのか?」
さっきまでルッチ怖いと喚いていたであろうウカはやれやれといった様子で、「嫌われてしまったようです」と先程自分達に見せたのと同じ態度でスパンダムに話しかける。
「お前、何やったんだよ」
「何も。ちょうどカクくんが報告書を持ってきてくれた、この任務の顛末を少々聞いていただけですよ」
ルッチを散々煽って、指までしゃぶらせておいてよく言う、とカクは心のなかで毒づいた。でもまあ、いい。
「わしはこれで」
「私も少しはずします」
一緒に部屋を出るそぶりだったので、副長官殿のためにドアを開けてやると、ウカは片手を上げ軽く礼を言った。ウカが廊下に出たところでカクも続き、後ろ手でドアを閉めて、小さな、でも、たっぷりと悪意を込めた声で一言。
「上官の弱味を握って強請るなんぞ、諜報部員冥利に尽きるのう」
言いながら、カクはウカに制止の間を与えぬようすかさずウカの手首をぎゅっと握って脈をとる。
「……乙女の肌に無許可で触れる罪は重いぞ?」
言葉とは裏腹な脈の速さにカクは身震いした。こんなにも動揺しているはずなのに、それを決して悟らせないその目ができるのか。
「さて、わしにも忠誠を誓ってもらおうかの」
無論、唇で。カクは愉快そうに先ほどのウカと同じ台詞を吐いた。
(あんの……くそバカ長官ンンン!!!)
ウカは「この部屋は防音仕様だからな!」と宣った長官の言葉を不用意に信じた自分を恥じた。確かCP9のメンバーでは最年少だという目の前の青年は面白そうなおもちゃを見つけた、という顔を隠そうともしないし、手も離してくれない。
「あの部屋が防音仕様だと信じているのは長官だけじゃぞ。全部筒抜けだということを誰も教えてやっとらんからのう」
「部下に恵まれない長官が気の毒だね」
「ルッチが怖いんじゃろう?あんなに怯えてかわいそうに。ワシが守ってやろう」
「まさか。“可愛い”の聞き間違いだろう?」
ルッチにも同じ台詞が通用するといいのう、と毒を孕んだ笑顔で面白そうに言葉を重ねてくるカクにウカはお手上げだと両手を上げた。
「わかった、降参だ。何が望みかな?」
「強請りの相場は金か身体か、そうじゃろう?」
彼が下卑た要求をしてくるのは正直以外だったのでウカはほんの少し目を丸くする。金にも身体にも興味がなさそうなので、てっきりウカの更迭を要求するものと思っていた。
「意外と品がないね」
「何事も経験じゃろ?」
「訓練に明け暮れていた子供の考えそうなことだ」
言うなり身体を突き飛ばされ、ウカは廊下の壁に背中を打ち付ける。ウカが体勢を整える前にカクは目の前に立ち塞がり、ウカの両手をとって壁に磔にする。そして、唇が触れそうになるくらい顔を近づけてにっこり笑った。
「決めた。わしが子供かどうか、その身体で確かめるといい」
「急に荒っぽいね。図星ですと高らかに宣言しているようなものだ」
「その仮面、必ず剥いでやるからの」
カクは長官室の廊下を挟んで目の前にある会議室のドアを開けると、ウカをそこに押し込んだ。簡素な机と椅子が数組あるだけのそう広くない小会議室だ。長官室のすぐそばということもあって、ここを使うのはCP9の面々だけ。そして、赴任してきたばかりの副長官に挨拶以外の大した予定があるはずもない。
「そんなに発散できなくて辛かったのか? かわいそうに」
「それはお前さんもじゃろ?」
カクは机に浅く腰かけるようにしていたウカの足の間に自分の足をいれてぐりぐりと押し付けた。ウカの身体は傍目には無反応に見えたが、両手首を拘束しつつ、脈を取るのも忘れない。
「ルッチの舌はそんなによかったか?股が濡れているぞ」
「──ッ! 本当に……ッ! 品の、ない子だ。まさか経験もないのか?」
「だからそれを確かめてみろと言っておろう」
両手を使えないのはカクにとっても面倒だったためウカのネクタイを引き抜き、後ろ手に縛った。ついでにシャツのボタンも外していくと汗ばんだウカの肌が少し露になる。下着を緩めてインナーと一緒に上にずり上げると、胸の突起が固く屹立しているのが見ただけでもわかった。この状態であの口ぶりなのだから恐れ入る。
「ふ、口では余裕ぶっているが身体は正直じゃのう」
「だから……そういう物言いはどこで覚えてくる──っんん!」
「胸ばかり気にして、股のことは忘れとったのか?」
カクが足でウカの足の間にある敏感な部分を刺激すると、さすがのウカも不意打ちがすぎたのか、声を漏らしてしまったようだった。
「ゆっくり焦らす時間もないし、順当なところから責めておくか」
カクはウカのベルトを緩めスラックスとショーツを足元まで下ろした。これで簡単な足枷にもなる。
「もっと丁重に扱えないものか? 仮にも上司で乙女だぞ」
「すまん、すまん。今度はベッドの上で頭から爪先までゆっくり可愛がってやるから、今は勘弁してくれ」
「今度だと?」
「まさか副長官殿は“強請り”がたった一回で済むとでも?おめでたいのう」
「ふざけるのも──ッぁん! あ、あぁ! んんぁッ! ま、まて──ッ! ぅあッ!」
「やっぱり可愛い声も出せるんじゃな」
カクは左手を胸の飾りに、右手をさっきまで足で刺激していた突起に添え、もう片方の胸の尖りを口に含むと、指と舌を使って三ヶ所を一気に責め立てた。押し寄せる快感が大きすぎて、ウカは思わず腰をひいてなんとかやり過ごそうとするが、カクの足と机に阻まれ思うように逃げられない。
「そんなにこひをふらんでも……ちゃんと弄っとるじゃろ」
「咥えながら──ぁッ! 喋るなッ!」
「ふまんの」
カクはさっきからずっと同じリズムで絶え間なく刺激を与え、ウカの身体に快感をどんどん蓄積していく。何パターンかを試し、一番反応がいい動きを探った。
「ウカは指で乳首をこりこりされるのが好きなんじゃなあ? 残念じゃがもうバレとるぞ。で、舐めるときは下から上に押し込むように、じゃろ? 下の方は優しくカリカリされるのがいいみたいじゃの」
「わか……った、気に、なるのも──ッぁ……大概に……んぅッ!」
「ここまで蕩けさせておいてその言葉が出るのか。天晴れじゃな」
でももう終いじゃ、とカクはウカの身体から手と口を離すと、ウカの身体を抱えて机の上に転がした。ウカを拘束していたネクタイをほどいて仰向けに寝かせる。そして、手慣れた手つきで自分のモノを露にするとスラックスと下着で自由がきかないままのウカの両足をぐいとウカの顔の方に押しやって、先端を濡れそぼったウカの秘所に押しあてた。
「脱がすのが面倒での。悪いが今日はこれで」
「乙女の扱いと物言いについては……今後たっぷりと教育してやろう」
下半身をとろとろにさせながらもカクを睨み付け折れないウカに、カクは自分の嗜虐心をウカの手のひらでなぜられたような感覚に陥る。
ウカの蜜壺は十分に潤っていたが、体位のせいもあり、さすがに一気には貫けない。カクはゆっくりと腰を動かし、少し抜いてはまた奥へ、奥へと進めていく。進むほどにウカの中襞はカクに吸い付き、腰の進みに合わせてウカが声を殺しきれず小さく喘ぐ。
「んぁぁ……ッ! ……ぅあッ! ……ひ……ぁッ!」
「押し殺してる声もいいのう。ただ……いつまで我慢できるかの?」
それを合図にカクは収まりきった自身をそのままに、律動を早めた。なるべくウカの最奥を刺激できるよう腰を密着させる。
「さすがにこの短時間で子宮はおろせなかったか。また今度じゃな」
「ん゛ん゛ッッ! ん゛んんッ! んああッ!」
カクの知ったような軽口に、ウカは言い返したかったが、いま口を開くと喘ぎ声しか出せないことは自分でもよくわかっていた。そのため必死に手で口を押さえた。その様子をカクが楽しそうに見下ろしてにやにやしているのにも気づいたが、カクの硬くなったモノが自分のナカをトントントントンと突くたび、電流が走るような刺激に頭を真っ白にされてしまい、快感で思考が塗り潰されていく。
「おっ?! 中がひくついてきとるの。時間ももうないし、合わせてやろう」
カクがさらにウカを追い込むようにウカの乳首に両手を添えた。添えているだけでも、揺さぶられているので刺激がうまれてしまう。
「そっ! それはッ! だめ、だッ」
「だめと言われて止める男がいるのか? 好きなんじゃろう? 指でつままれてくりくり弄られるのが」
「あああああッ!」
ナカからの刺激と相まって、ピストンされながら乳首をつままれ玩ばれたウカは呆気なく果ててしまった。身体を震わせながら果てたウカの、その肉襞のうねりを楽しみつつ抗うように腰を動かしていたカクもほどなくして熱い飛沫を迸らせた。
カクは、はあはあと肩で息をするウカの耳元でそっと囁く。
「次は、最後のあの声で一晩中鳴かせるからの」
「はぁ、はぁ……、ふう……お手並み拝見といこう」
ウカはまだあのウカだった。カクは面白くなさそうに唇を噛む。
おしまい
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眼前の攻防 #カク #ルッチ #ジャブラ #長編第1話
「さて、何度言えばわかるのかな?」
表向きは大変に多忙なスパンダム長官を補佐するという名目、本当のところは不甲斐ない長官の補佐をさせようという理由で新たに派遣されてきた副長官殿はウカと名乗り、挨拶もままならないうちに申し訳ないがと言いながら、ルッチ、カク、ジャブラ、フクロウを横一列に並ばせて笑顔で問いかけた。ルッチの片眉がぴくりを動いたであろうことを長年の付き合いで察したカクは内心「勘弁してくれ」と頭を抱えたくなっている。ジャブラは両手をポケットの突っ込みながら欠伸をし、フクロウは背筋は伸ばしつつも、気まずそうに視線を明後日の方へと向けていた。
「君たちはCP9。他のCPの模範になってもらわねば。そうだろう? ロブ・ルッチくん?」
「……何がご不満で?」
ルッチが苛立ちを隠そうともせず不遜な態度で応戦するので、隣のカクは肩をすくめた。
「失態を隠そうと予定より多く殺すのはやめてくれないか? なあ、フクロウくん」
突然名を呼ばれたフクロウがびくりと身体を震わせたのをみたルッチは、フクロウが謝罪の言葉を口にする前に「失態ではありませんし、そもそもやつらは世界政府にたてつく不穏分子です」と擁護する。ウカは少しだけ目を丸くして、フクロウくんはいいリーダーに恵まれたね、と微笑んだ。
「命令以上に人を殺すのは失態ではない、と。そうだ、そうだ。君はそうだった」
でもね、と一段低い声でウカは続ける。
「頭の言う通りに動かない手足になんの価値が?」
ウカの言葉にジャブラがぴゅうと口笛を吹いた。ルッチがやり込められているのが楽しくてしょうがないのだろうが、ルッチとジャブラの間に挟まれているカクは気が気でない。フクロウはウカの迫力に白目をむいており、立っているのがやっとのようだ。ウカとルッチのにらみ合いは恐らく十秒にも満たないものだったが、ビリビリと張りつめた空気は吸うだけで息苦しく、カクとフクロウは息を潜めた。
そんななか、根負けしたルッチは大きく大袈裟に息を吐くと「…………善処します」と思ってもいないことをとりあえず答える。
「よろしい。さあさあ、話はこれだけだ」
ウカは両手をパンと叩いて部屋を後にしようとしたが、ドアの前で、おっと忘れるところだったと踵を返して恐ろしい言葉を口にする。
「忠誠を誓うキスがまだだったね」
◆
カツカツと革靴の底を鳴らしながらウカが近づいてくる。殺意を噛み潰したようなルッチの歯軋りが聞こえ、カクがルッチが殴りかかりそうになったら全力で止めんと、そう覚悟を決めたそのとき、
「おれァ誓うぜ~!」
とジャブラがウカの手をすっと取った。片手はポケットに突っ込んだまま、ウカの手の甲に口づける。ウカは少し驚いたようだが目を輝かせた。
「ジャブラさん! 嬉しいです。仕事ぶりでも認めていただけるよう尽力しますので」
「ルッチにあれだけ言えれば、あのヘボ長官より役に立つぜ! まずぁ合格だ! おいお前ら! おれは完っ全にウカ派だかんな」
よろしく頼むぜ、とウカの肩を組むジャブラを見てカクは目眩を覚えた。ルッチは額に青筋をたてながらその光景を睨みつけている。
「忠誠を誓う?そんな行為に意味がありますか?」
「愚問だ」
ルッチの問いをウカがぴしゃりとはねつける。博識な君ならもちろん知っているだろうが、と前置きをしてウカは言葉を続けた。
「人間は自分が思っている以上に身体の動きに脳が騙される。”すること”が重要なんだよ」
乙女に恥をかかせないでほしいね、とルッチの口元へ手をさしのべながら、ウカは暗く冷たい声音で最後通告を突きつける。
「死にたくなかったら、死ぬまでおれの上官でいることですね」
「心配には及ばないよ」
ここは力がすべてじゃない。知っているだろう? とウカの高笑いが響く。
◆
「さあ」
自分より背の低い女のはずなのになぜか始終上から見下ろされているような気分で、ルッチはかなり苛ついていた。ジャブラがウカと一緒になってこちらをにやにやと眺めてくるのも癪に障る。
ルッチはウカが差し出した手を取ると、口づけの代わりに、人差し指に甘く噛みついた。だが、ウカは声をあげるどころか、微動だにもしない。
「……声を出さないのは立派ですね」
「獣に手を出すのだからね。噛まれるくらいは覚悟の上だよ」
「痛みにはなれているようで。大したものだ。では、これは?」
ルッチはウカを睨み付けながらさっきつけた人差し指の歯形を舌でゆっくり何度もなぞった。指の腹を舌先でくすぐり、舌の柔らかさと温かさを無理矢理押し付ける。そうして舌で指を嬲ったあとは、指を口に含むようにしてちゅう、と吸う。
そんなことをしてみても、呆れるほどに表情を変えず、うすら笑いを顔に貼りつけたままのウカをみて、ルッチは諦めたように唇を離した。
「体温あがってんぜ? ウカ」
ジャブラの声にルッチは耳を疑った。声出してもよかったのによ、と耳元で囁かれているウカには、少なくとも全くそんな気配はない。ジャブラさんがくっついてるからですよ、と媚びたような物言いは聞くに堪えなかったが、果たして真実は。
「それにしても驚いたよ。噛みついたあと傷をなめるなんてね。誰にしつけてもらったんだ?」
かわいい猫ちゃん?
ウカが言い終わるや否や、ルッチが獣の唸り声をあげながら豹の姿になっていくのをカクとフクロウが慌てて止め、ジャブラは腹を抱えて笑っている。副長官は、後は任せた、と颯爽と部屋をあとにした。
おしまい
→
「さて、何度言えばわかるのかな?」
表向きは大変に多忙なスパンダム長官を補佐するという名目、本当のところは不甲斐ない長官の補佐をさせようという理由で新たに派遣されてきた副長官殿はウカと名乗り、挨拶もままならないうちに申し訳ないがと言いながら、ルッチ、カク、ジャブラ、フクロウを横一列に並ばせて笑顔で問いかけた。ルッチの片眉がぴくりを動いたであろうことを長年の付き合いで察したカクは内心「勘弁してくれ」と頭を抱えたくなっている。ジャブラは両手をポケットの突っ込みながら欠伸をし、フクロウは背筋は伸ばしつつも、気まずそうに視線を明後日の方へと向けていた。
「君たちはCP9。他のCPの模範になってもらわねば。そうだろう? ロブ・ルッチくん?」
「……何がご不満で?」
ルッチが苛立ちを隠そうともせず不遜な態度で応戦するので、隣のカクは肩をすくめた。
「失態を隠そうと予定より多く殺すのはやめてくれないか? なあ、フクロウくん」
突然名を呼ばれたフクロウがびくりと身体を震わせたのをみたルッチは、フクロウが謝罪の言葉を口にする前に「失態ではありませんし、そもそもやつらは世界政府にたてつく不穏分子です」と擁護する。ウカは少しだけ目を丸くして、フクロウくんはいいリーダーに恵まれたね、と微笑んだ。
「命令以上に人を殺すのは失態ではない、と。そうだ、そうだ。君はそうだった」
でもね、と一段低い声でウカは続ける。
「頭の言う通りに動かない手足になんの価値が?」
ウカの言葉にジャブラがぴゅうと口笛を吹いた。ルッチがやり込められているのが楽しくてしょうがないのだろうが、ルッチとジャブラの間に挟まれているカクは気が気でない。フクロウはウカの迫力に白目をむいており、立っているのがやっとのようだ。ウカとルッチのにらみ合いは恐らく十秒にも満たないものだったが、ビリビリと張りつめた空気は吸うだけで息苦しく、カクとフクロウは息を潜めた。
そんななか、根負けしたルッチは大きく大袈裟に息を吐くと「…………善処します」と思ってもいないことをとりあえず答える。
「よろしい。さあさあ、話はこれだけだ」
ウカは両手をパンと叩いて部屋を後にしようとしたが、ドアの前で、おっと忘れるところだったと踵を返して恐ろしい言葉を口にする。
「忠誠を誓うキスがまだだったね」
◆
カツカツと革靴の底を鳴らしながらウカが近づいてくる。殺意を噛み潰したようなルッチの歯軋りが聞こえ、カクがルッチが殴りかかりそうになったら全力で止めんと、そう覚悟を決めたそのとき、
「おれァ誓うぜ~!」
とジャブラがウカの手をすっと取った。片手はポケットに突っ込んだまま、ウカの手の甲に口づける。ウカは少し驚いたようだが目を輝かせた。
「ジャブラさん! 嬉しいです。仕事ぶりでも認めていただけるよう尽力しますので」
「ルッチにあれだけ言えれば、あのヘボ長官より役に立つぜ! まずぁ合格だ! おいお前ら! おれは完っ全にウカ派だかんな」
よろしく頼むぜ、とウカの肩を組むジャブラを見てカクは目眩を覚えた。ルッチは額に青筋をたてながらその光景を睨みつけている。
「忠誠を誓う?そんな行為に意味がありますか?」
「愚問だ」
ルッチの問いをウカがぴしゃりとはねつける。博識な君ならもちろん知っているだろうが、と前置きをしてウカは言葉を続けた。
「人間は自分が思っている以上に身体の動きに脳が騙される。”すること”が重要なんだよ」
乙女に恥をかかせないでほしいね、とルッチの口元へ手をさしのべながら、ウカは暗く冷たい声音で最後通告を突きつける。
「死にたくなかったら、死ぬまでおれの上官でいることですね」
「心配には及ばないよ」
ここは力がすべてじゃない。知っているだろう? とウカの高笑いが響く。
◆
「さあ」
自分より背の低い女のはずなのになぜか始終上から見下ろされているような気分で、ルッチはかなり苛ついていた。ジャブラがウカと一緒になってこちらをにやにやと眺めてくるのも癪に障る。
ルッチはウカが差し出した手を取ると、口づけの代わりに、人差し指に甘く噛みついた。だが、ウカは声をあげるどころか、微動だにもしない。
「……声を出さないのは立派ですね」
「獣に手を出すのだからね。噛まれるくらいは覚悟の上だよ」
「痛みにはなれているようで。大したものだ。では、これは?」
ルッチはウカを睨み付けながらさっきつけた人差し指の歯形を舌でゆっくり何度もなぞった。指の腹を舌先でくすぐり、舌の柔らかさと温かさを無理矢理押し付ける。そうして舌で指を嬲ったあとは、指を口に含むようにしてちゅう、と吸う。
そんなことをしてみても、呆れるほどに表情を変えず、うすら笑いを顔に貼りつけたままのウカをみて、ルッチは諦めたように唇を離した。
「体温あがってんぜ? ウカ」
ジャブラの声にルッチは耳を疑った。声出してもよかったのによ、と耳元で囁かれているウカには、少なくとも全くそんな気配はない。ジャブラさんがくっついてるからですよ、と媚びたような物言いは聞くに堪えなかったが、果たして真実は。
「それにしても驚いたよ。噛みついたあと傷をなめるなんてね。誰にしつけてもらったんだ?」
かわいい猫ちゃん?
ウカが言い終わるや否や、ルッチが獣の唸り声をあげながら豹の姿になっていくのをカクとフクロウが慌てて止め、ジャブラは腹を抱えて笑っている。副長官は、後は任せた、と颯爽と部屋をあとにした。
おしまい
→
「今日は何の日か知っとるか?」
ウカに呼び出され、多少胸をざわつかせながら開けた執務室のドアの先では、無表情の彼女から淡々と今後の任務の説明を受けた。やれ危険だの、困難極まるだの、正直肩透かしもいいところだ。ウカの、大声ではないけれど部屋にぴんと通るその声を右から左に聞き流し、ようやく発せられた問い──何か質問は?──に返した問いが冒頭のそれだ。
「八月七日が? さて、何の日だったか──」
肩肘をつきながら視線を明後日の方向に漂わせ発したその顔は明らかに見当がついている、といった表情で気に食わない。が、仕方ない。
「部下の誕生日くらい覚えてないわけないじゃろう? 副長官ともあろうお方が」
「ああ、そうかそうか。そうだった。で、誰かの誕生日が何か?」
「まさか『知っているだけ』で済ます気か?」
部下を労わろうっちゅう気はないんか、と重ねると、ウカは大きく息を吐きながら腕を組んでようやくこちらを見据え、すぐ顎に手をやり小首をかしげる。細い首がカラーの隙間からちらと覗いた。ふむ、とも、んん、とも聞こえる、言葉にならない声が薄く開いた唇から漏れ出てくるのがやたらと耳に障る。大した時間ではなかったはずだが、ウカからのはっきりした返答はなく、無意識のうちにつま先が上下に揺れていた。苛立ちを伝えるはずの音は足が沈み込むほどの重厚なカーペットに吸収され、部屋には一切の音が響かなかった。ただ、それを愉快そうに眺めてくる視線だけが鬱陶しい。
カクは負けた。
「祝いの言葉くらいくれても良かろう? 減るもんじゃなし」
「ふ、はは。言葉? そんなものでいいのか」
ウカは上体を反らしながら肩を揺らして笑い、目尻の涙を指でそっと拭いながら、てっきりまた身体でも要求されるのかと思ったよ、と事も無げに言った。瞬間、先日の行為が、温度が、質感が、声が。一気にカクの脳内でリフレインされ下半身にずくずくと熱が籠るのがわかった。逸らしそうになる顔を気合で真正面に保つ。ここで目を逸らしたら負けだ。
「わしは年嵩の上官への労わりは忘れん殊勝な部下じゃもんで。先日はちいとばかし荒々しい趣向じゃったからの。休む時間も必要じゃろう?」
「へえ? お優しい部下をもって私は幸せだ」
次は同意のうえで及んで欲しい行為だけどね。
ウカが呆れたように言い放ち、部屋にはまた静寂が訪れた。沈黙は短いようでいて妙に重たかった。先に動いた方が負けのような空気が漂う。
そう思ったのも束の間、動いたのはウカだった。人差し指をくいと曲げ、口の形だけで『おいで』と指図する。カクが無言でエグゼクティブデスクのぎりぎりまで詰め寄っても指示は変わらない。仕方なく腰を折り、ウカの顔まで頬を寄せると耳たぶを摘ままれびくりとするが鋼の意志で平静を装った。どうせ耳元で艶を纏わせながら、おめでとう、とでも宣うのだろう。聞いてやろうじゃないかと待ち構えていたカクの耳に飛び込んできたのは──。
「ッぅああ?!」
ずちゅ──という水音が脳内にいっぱいになった瞬間、慌てて身体を後ろに引く。耳を這ったのは、ぬるりとしたウカの柔らかな舌だった。全身が足元から総毛だつ。カクは睨みつけることすら忘れ、間抜けな顔でウカを見る。
「なん、ちゅう上官じゃ」
「おいおい、こちらは何を突っ込まれたと思ってるんだ。舌なんて可愛いもんじゃなかったぞ」
ウカがこれ見よがしに舌を出す。子供っぽい仕草は相当不釣り合いだった。
「最ッ悪の誕生日じゃ」
「残念。君は気に入ると思ったんだが。それなら──」
ウカがデスクの引き出しから何かを取り出し、それを机上に置く。パチ、と軽い音がした。ウカが手をどけ、まみえたそれはただの鍵に見えた。意味が分からず、視線だけでウカに意図を問うとウカは、私室の鍵だよ、と口角を上げた。明日には変えてしまうけど、とも。
「はあ!?」
「祝いの言葉はそこで聞かせてあげよう」
まただ。ウカが先ほどと同じ仕草を見せた。人差し指をくいと曲げ、口の形だけで。
『おいで』
カクは机の上の鍵を一瞥し、一度だけ天を仰ぐ。
「……『最ッ悪』の更新じゃ」
おしまい