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夢小説,官能小説,短編,ONEPIECE,adlut night 1688字 No.124
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カクは、攫っちゃえば? とカリファが事も無げに言ったことを思い出していた。騒ぎ立てる家族もいなんだし、と。
静かに寝息をたてる彼女のやわらかい髪を、起こさぬようそっと掬いながら、犬猫じゃあるまいし、とカクは思う。窓から差し込む月明りが彼女の肌を青白く見せていて、規則正しく膨らむ胸の動きがなければ、精巧な人形のようにも見えた。夜の闇は月明り程度でも眩しく見せる。よりによって今日は満月で、カクは彼女が月明りでよく見える反面、自らも照らされるような気持ちにもなり忌々しくも思った。
仮に攫ったとて。カリファの言葉をまた反芻する。どこかに囲っておけるわけでも、かいがいしく世話をしてやれるわけでもない。任務に帯同させるなんてもってのほかだ。それなのにカリファの言葉に囚われている自分もいる。
もし。もし、何も障害がなければ、自分は彼女をどうしたいのだろう。同じ目的を共有し、共に仕事をしたいのか。はたまた、帰る家を同じくしてただ暮らしたいのか。それとも、どこにでも連れていきたいのか。考えてすぐに、自分は彼女を閉じ込めておきたいのだなと気づいた。
誰にも見せず、所有していることも隠して、傷がつかないよう、綺麗な箱にしまっておきたい。その箱を毎日開けて、たっぷりと愛でたい。箱を開けられるのは自分だけ。開けて、愛でて、しまう。その繰り返し。
「すばらしい」
彼女がはっきりとそう口にするので、どくん、と心臓が跳ねる。それでも微動だにせず、静寂を守り切ったのは訓練の賜物だろう。彼女のそれは寝言だった。額にうっすらと汗がにじんでいる。彼女を覆っているタオルケットをそっとはぐと、フリルがあしらわれドレープがたっぷりとしたネグリジェに身を包んだ彼女の肢体が露わになった。籠っていた湿り気のある熱がカクの肌を撫でて霧散した。
彼女が纏っていたのは、普段の彼女の装いからは想像できない女性らしいデザインで、しかもかなり薄手だった。色々な部位が透け、また、浮き出ている。思いもよらぬ刺激にカクはごくりと唾を飲む。当の彼女は、寝苦しさが和らいだのか、ふう、と大きく息を吐き、また規則正しい寝息に戻った。
やめておけ、という声が頭に響いているのに、カクは上下する彼女の胸元へそっと指を伸ばす。指一本。それだけ。と己に言い聞かせ、胸の頂きを彩る部分をくるりとなぞった。最初はふわふわと柔らかかったそこの中心は、すぐに摘まめるほど固くなり、カクを喜ばせた。薄布越しに、かりかりとひっかくようにすると、ふあ、だの、あう、だの声にならない声をあげる。指一本だけ、と思ったはずなのにすぐに撤回して、親指と人差し指で摘まんで弄ぶと声はさらに大きくなった。
「んああ……、ぁ、ああ……」
開いた口からさらにだらしない声が漏れる。彼女は身を捩ったり手で胸を覆うなどの抵抗らしい動きを見せずカクにされるがままだ。自分の指を受け入れているように見える彼女。勘違いだろうがカクにはそれでよかった。もう、やめよう。もう充分だ。彼女はこのままここに──。
「しゃ、ちょぉ」
それは指を離した瞬間だった。
微かに、だが確かに、カクの鼓膜は震えた。彼女に恋人はない。それは間違いない。が、この言葉の、いや言葉未満の二音が何を意味するのかは彼女にしかわからない。カクは暗い天井を仰ぐ。先ほど積み上げ終わったはずの理性が、ガタガタと崩れ落ちていくのが分かった。
カクは、先ほどよりずっと汗ばんでいる額にはりついた彼女の髪にそっと触れた。さきほどよりもずっと慎重に。そして、触れたか触れないかわからないくらいの儚い口づけをした。もちろん彼女は気づかない。喘ぎもしない。彼女にとっては、これまで何事もなく超えた幾度の夜と同じ夜だった。
「箱を、用意せんとな」
彼女のためにあつらえる。綺麗で、あたたかくて、頑丈な、秘密の箱。
彼女に伸びるカクの両の手が月明りで照らされても、カクはもう怯まなかった。
title by icca
おしまい