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サーカスナイト水の都で過ごした#カク #パウリー #ルッチ #フランキー

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賑やかな夜のこと。
ブルーノの店の前は、今日も人通りが絶えない。

太陽からの支配を逃れた水の都は休む間もなく月の光と瞬く星に覆われる。だが産業都市として、そして世界一の船大工を擁する島として名を馳せるウォーターセブンの夜はさらに眩い。この島は朝も早いが夜も遅い。煌びやかな店々の灯りは、仕事を終えた者たちの頬をつややかに照らし、夜風は酔いのまわった人々の身体をそっと冷やしながら次の店へを誘っていく。あちこちの店から今日の自分を称え、ねぎらう乾杯の音が聞こえてくる。そんないつもと変わらぬ夜のこと。
ブルーノの店の前で、金髪の男と女の子二人組がぶつかり、双方尻もちをついた。

「「どこ見てんだわいな!?」」
「どこ見てんだてめぇ!」
「「「あ」」」

互いにそれはまったく予期せぬことで。

「ああっ! ケーキが!」
「弁償! 弁償だわいな!」
「あァ!? 被害者はこっちだ! 葉巻が全部パーになったぞ!」
「そんな安物……」
「高かったんだよこれは!」

地べたに座り込んだままいい年をした大人たちの子供みたいなやりとりに、一緒にいたルッチとカクは、彼彼女らを見下ろしながら頭を抱えたが、すぐに背を向け他人の振りをした。しかしながら、通り過ぎていく町の人々はそんな『職長三人』を微笑ましく思いながら思い思いに声をかける。
「はは、パウリーのやつまた何かやらかしてるぞ」
「珍しい。相手は女の子だ」
「職長も女の子には頭が上がらないか」
町の人らの適当、いや、的確な物言いにカクはキャップを目深に被り、ルッチはシルクハットを正した。ハットリは何を思ってか、クルッポーと鳴く。

今日は賑やかな夜だった。月は穏やかに微笑み、星はからからと笑い声をあげている。
「キウイちゃんもモズちゃんも、相変わらずセクシーだねえ」
喧噪のどこからか聞こえてきた声に二人は、ありがとうだわいな! と素直にお礼を言った。野次でようやく二人のファッションに気が向いたパウリーが、なんちゅう格好だ!と今さら嚙みついた。肌を出し過ぎだと顔を真っ赤にして怒鳴り散らすパウリーをからかうように、二人は綺麗な長い足を、くびれた腰を、なだらかな肩のラインを、形のいい胸を見せつけながらすっと立ち上がる。いつの間にか集まった野次馬から歓声が上がり、パウリーは地面に尻をつけたままさらに声を荒げた。

「ちょっと待つんだわな、モズ」

女の子の一方が金髪の顔をじっと見つめてはたと何かに気づいたように、もうひとりの女の子に声をかけた。モズと呼ばれた彼女は不思議そうに、自分によく似た女の子の顔を覗き込む。視線がかち合ったのを合図に、ずれた眼鏡を直しながらどうしたんだわいな? と問う。

「この男、よく借金取りに追われてる」
「ああ、ガレーラの破廉恥一文無し」
「おかしな通り名で呼ぶな!」

言いながら立ち上がり二人に歩み寄るパウリーだが、彼女たちは全く怯まない。

「こんな永遠の一文無しから弁償されるなんて、フランキー一家の恥だわいな」
「確かに……危ないところだったわいな」
「人の話を聞け!」

女の子二人にいいように翻弄されているパウリーに呆れ果てていたカクとルッチも、そろそろいいだろうとパウリーを宥めにかかる。

「まあまあパウリー、こんな若い嬢ちゃんたちにそんなに食って掛かるな」
『どっちが年上なんだか』
「あ、山ザル!」
「あ、ハト男!」

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「だれがじいさんじゃ! わしは二十三じゃ!」
「説得力はまるで皆無なんだわいな」
「ねえ、キウイ。これ、ハトがいなくなったら喋れなくなるんだわいな?」
『や、やめろ!』
「図星なんだわいな! やっちまうんだわいな!」

今日は賑やかな夜だった。溶けた喧騒が漂い、周囲に霧散した。カーニバル、サーカス、ダンスパーティー。世界中の楽しいものがここに集っていたかのような夜だった。笑い声が零れ、笑顔があふれる。

「ちくしょう! あいつら何やってんだ……」

開いたブルーノの店のドア。聞き馴染んだ声に振り向いたのはモズとキウイの二人だった。

「「アニキ!」」

店の賑わいを背負って出てきた男にキウイとモズが駆け寄る。

「なんだお前ら、ここまで来ておいて……店の目の前で何やってんだ」
「実はあのガレーラの破廉恥と」
「一文無しと」
「店の前でぶつかってしまったんだわいな」
「なんだと!? 怪我はねぇのか?」
「あたしらは大丈夫だけど」
「ケーキが」

アニキと呼ばれた男はサングラスを額までくい、とあげ、キウイが持っていた箱の中のケーキを見やる。ケーキは些か無残な姿ではあった。

「なあに、お前らが悪くねえのは百も千も万も承知! 甘くてうまそうじゃねえか! さあ、さっさと入りな」
「さすが」
「アニキなんだわいな!」

女の子たちはもう、職長たちのことはそっちのけだ。拳をつくり、わなわなと震えているパウリーに男はこうも言った。

「うちのが世話かけたな。一文無しなんだろ? 奢ってやるからお前らも入りな」

拳が解けた。パウリーはさっきまでの勢いをにわかに失い、そこまで言うなら、と店に入っていこうとする。カクとルッチは、プライドはないのかと肩に手をかけそれを止めたがパウリーが振り向いてこう言う。

「飲むんなら人数が多い方が楽しいに決まってるだろう!?」

それを聞いた二人は顔を見合わせ、ふっと笑った。
仕方がないと三人で入店する。

賑やかな夜のことだった。

おしまい

二次創作,長編・連作,ONEPIECE,水の都で過ごした 2323字 No.115 

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