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プレゼント・フォー・ユー
#カク
#はな誕
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カクはいつも部屋に鍵をかけない。うっかり忘れちゃうらしい。その度に危ないよって言うけど、盗まれて困るようなものはないって開き直る。もし、泥棒や海賊が入ってきたら返り討ちにしちゃる、って得意げだけどそういう問題じゃない。部屋に誰かが忍び込んでるかもしれないじゃないって心配すると、長くて目立つ鼻で軽く笑って「わしの部屋に隠れられるはずがない」となぜか自信満々だ。
まあ確かに、カクの部屋は家具もだけど物も少なくて、本当にここに住んでるのかなと疑いたくなるくらいだし、クローゼットもすかすかだから、カクの言う通りこの部屋に隠れられる場所はないかもしれないと思い直して、私は何も言えなくなる。
今日はそんなカクの誕生日だ。カクの部屋でご飯を一緒に食べよう、と約束だけしてある。
プレゼントは迷ったけれど、パウリーやルッチさん、ルルさん、タイルストンさんにもリサーチ済みだからこれで大丈夫なはず。本当はカリファさんにも聞きたかったけど、タイミングが合わなくて聞けなかった。仕方ない。
カクの待つ部屋に、準備した料理とケーキを抱えて遊びに行った。
鍵はかかっていないと知っているけど、私は一応呼び鈴を鳴らして、カクがドアを開けてくれるのを待つことにしている。今日は生憎両手が塞がっていて呼び鈴まで手が届かなかったので「カクー! 来たよー!」とドアの外から声をかけた。ガチャ、と開いたドアがまだすべて開かぬうちに「カク、お誕生日おめでとう!」と待ちきれずに祝う。
「おお! ありがとう。そうか、覚えとってくれたんじゃな」
「当たり前じゃん。準備万端です」
私の荷物を引き受けて部屋へ向かうカクの背中に、もう少ししたらピザも来るよと声をかけながら、カクに気づかれぬようそっと部屋を見回すと、相変わらずカクの部屋に物は増えていなくて、誕生日プレゼントとは言え、ここに物を増やすのは気が引ける。
さして大きくないダイニングテーブルは私の持ってきた料理ですぐいっぱいになった。パズルみたいに料理を並べているうちに、ピザも届いて、パズルはさらに困難を極めたがなんとか隙間なく配置することで事なきを得る。
「はい、これケーキ! 私、チョコ好きだからチョコバナナのにしちゃった」
「おお、しっかりしとるのう」
カクは唇の端でだけ笑った。テーブルに乗らないケーキの箱を、シンクに置くカクの背中に、私は一生懸命言い訳する。
「だって、ケーキってやっぱり特別じゃん。食べられる機会は逃さないようにしないと」
「ちょっと前にダイエット宣言を聞いた気がするんじゃが」
「なにそれ、覚えてないな。今日はお祝いだもん。カロリーなんか気にしないよ! 料理はオリーブオイルとチーズたっぷりじゃないと美味しくないでしょう。ピザも三種類頼んじゃったし。マルゲリータと、クアトロフォルマッジ、オルトラーナ」
カクがいよいよ堪えきれずに噴き出した。何事にも息抜きは必要じゃな、と。
「わしのために、ダイエットを捨て置いてくれるなんて嬉しいのう」
「もう、しつこいなあ」
「まさかプレゼントまであるなんて言わんじゃろう? もう十分じゃぞ」
「ふふふ……。プレゼントはなんと!」
「あるのか」
「わ・た・し、だよ!」
「え?」
「ほら、ちゃんとリボンも巻いてきた」
カクに見せつけるように頭と手首を振る。頭にはヘアアレンジに見えるようにリボンを、ついでに手首にもささやかながら巻いていたのだ。本当はド派手にラッピングしても良かったが、ぎりぎり外を歩けるラインはこれが限界だった。
カクの大笑いを待つ数秒が長い。というより、いつまでもおとずれない。沈黙がどかっと胡坐をかいて鎮座しているかのよう。
やばい。はずした? カクがわかりやすく見事に固まっている
もちろん、他にもちゃんと準備している。だからこれはおまけ、余興、ちょっとした冗談のつもりだったんだけど。
「わ・た・し、ってなんじゃ? どこまで?」
ようやく(といっても多分ほんの数秒だったのだけど)カクが口を開いた。余興でそこまで設定を作りこんだつもりはない。なに? ってなに? どこまで? ってどこ?
「え、ぜ、んぶ?」
「へえ」
カクはすっと立ち上がって、玄関に向かった。何をするかと思えば、がちゃりという音がだけが聞こえる。ずっと聞きたかった音。この部屋の鍵を閉める音だ。でも。
「なんで、鍵、しめたの?」
「開けておいた方がよかったか? 上級者じゃのう」
「え、待って待って。何の話?」
「待てるわけなかろ。料理もケーキも後じゃ、後」
「何の後⁉」
「リボンまで準備して。さすが。準備万端じゃな」
あっという間に抱きかかえられた私はなすすべもなく、冷めていく料理を横目に、寝室に連れていかれる。
おしまい
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2007字 No.13
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カクはいつも部屋に鍵をかけない。うっかり忘れちゃうらしい。その度に危ないよって言うけど、盗まれて困るようなものはないって開き直る。もし、泥棒や海賊が入ってきたら返り討ちにしちゃる、って得意げだけどそういう問題じゃない。部屋に誰かが忍び込んでるかもしれないじゃないって心配すると、長くて目立つ鼻で軽く笑って「わしの部屋に隠れられるはずがない」となぜか自信満々だ。
まあ確かに、カクの部屋は家具もだけど物も少なくて、本当にここに住んでるのかなと疑いたくなるくらいだし、クローゼットもすかすかだから、カクの言う通りこの部屋に隠れられる場所はないかもしれないと思い直して、私は何も言えなくなる。
今日はそんなカクの誕生日だ。カクの部屋でご飯を一緒に食べよう、と約束だけしてある。
プレゼントは迷ったけれど、パウリーやルッチさん、ルルさん、タイルストンさんにもリサーチ済みだからこれで大丈夫なはず。本当はカリファさんにも聞きたかったけど、タイミングが合わなくて聞けなかった。仕方ない。
カクの待つ部屋に、準備した料理とケーキを抱えて遊びに行った。
鍵はかかっていないと知っているけど、私は一応呼び鈴を鳴らして、カクがドアを開けてくれるのを待つことにしている。今日は生憎両手が塞がっていて呼び鈴まで手が届かなかったので「カクー! 来たよー!」とドアの外から声をかけた。ガチャ、と開いたドアがまだすべて開かぬうちに「カク、お誕生日おめでとう!」と待ちきれずに祝う。
「おお! ありがとう。そうか、覚えとってくれたんじゃな」
「当たり前じゃん。準備万端です」
私の荷物を引き受けて部屋へ向かうカクの背中に、もう少ししたらピザも来るよと声をかけながら、カクに気づかれぬようそっと部屋を見回すと、相変わらずカクの部屋に物は増えていなくて、誕生日プレゼントとは言え、ここに物を増やすのは気が引ける。
さして大きくないダイニングテーブルは私の持ってきた料理ですぐいっぱいになった。パズルみたいに料理を並べているうちに、ピザも届いて、パズルはさらに困難を極めたがなんとか隙間なく配置することで事なきを得る。
「はい、これケーキ! 私、チョコ好きだからチョコバナナのにしちゃった」
「おお、しっかりしとるのう」
カクは唇の端でだけ笑った。テーブルに乗らないケーキの箱を、シンクに置くカクの背中に、私は一生懸命言い訳する。
「だって、ケーキってやっぱり特別じゃん。食べられる機会は逃さないようにしないと」
「ちょっと前にダイエット宣言を聞いた気がするんじゃが」
「なにそれ、覚えてないな。今日はお祝いだもん。カロリーなんか気にしないよ! 料理はオリーブオイルとチーズたっぷりじゃないと美味しくないでしょう。ピザも三種類頼んじゃったし。マルゲリータと、クアトロフォルマッジ、オルトラーナ」
カクがいよいよ堪えきれずに噴き出した。何事にも息抜きは必要じゃな、と。
「わしのために、ダイエットを捨て置いてくれるなんて嬉しいのう」
「もう、しつこいなあ」
「まさかプレゼントまであるなんて言わんじゃろう? もう十分じゃぞ」
「ふふふ……。プレゼントはなんと!」
「あるのか」
「わ・た・し、だよ!」
「え?」
「ほら、ちゃんとリボンも巻いてきた」
カクに見せつけるように頭と手首を振る。頭にはヘアアレンジに見えるようにリボンを、ついでに手首にもささやかながら巻いていたのだ。本当はド派手にラッピングしても良かったが、ぎりぎり外を歩けるラインはこれが限界だった。
カクの大笑いを待つ数秒が長い。というより、いつまでもおとずれない。沈黙がどかっと胡坐をかいて鎮座しているかのよう。
やばい。はずした? カクがわかりやすく見事に固まっている
もちろん、他にもちゃんと準備している。だからこれはおまけ、余興、ちょっとした冗談のつもりだったんだけど。
「わ・た・し、ってなんじゃ? どこまで?」
ようやく(といっても多分ほんの数秒だったのだけど)カクが口を開いた。余興でそこまで設定を作りこんだつもりはない。なに? ってなに? どこまで? ってどこ?
「え、ぜ、んぶ?」
「へえ」
カクはすっと立ち上がって、玄関に向かった。何をするかと思えば、がちゃりという音がだけが聞こえる。ずっと聞きたかった音。この部屋の鍵を閉める音だ。でも。
「なんで、鍵、しめたの?」
「開けておいた方がよかったか? 上級者じゃのう」
「え、待って待って。何の話?」
「待てるわけなかろ。料理もケーキも後じゃ、後」
「何の後⁉」
「リボンまで準備して。さすが。準備万端じゃな」
あっという間に抱きかかえられた私はなすすべもなく、冷めていく料理を横目に、寝室に連れていかれる。おしまい