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昔の話をしようか
#ドラハー
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夏休みは何かしていないととても暇だ。 というわけで、明日スコーピウスのおうちに遊びに行くのよとママに言ったら、 スコーピウスってあのマルフォイの? と、静かに、でもとてもびっくりした後、 少し黙ってから笑って、「わかったわ。いってらっしゃい、お行儀よくね」と言った。 私はそんなふうにびっくりしたママにびっくりして、「……頑張るわ」としか言えなかった。 スコーピウスのおうちは確かに純血の旧家だけれども、 そんなにおっかなびっくり訪ねるようなおうちなのかしらと思った。 だってスコーピウスはいつも言ってるわ。 スリザリンには未だに純血至上主義の古いやつらが大勢いてうんざりするよ、と。 彼はスリザリンを嫌っちゃいなかったし、グリフィンドールになりたいなんて 思ってもいないけれど、でもあまりスリザリンを好いてもいなかった。 そしてなんとなく、お父上のことも好いていないようだった。 はっきりと彼がそう言ったわけじゃないけれど、 純血至上主義のやつらと言いながら、それにはお父上も含まれているのかしらと思うだけだった。
彼は旧家特有の品の良さと優雅さを備えつつ、 旧家特有のプライドはあまり持ち合わせていないようだった。 彼は自分の家が特別視されるのを嫌っていたし、 それゆえの待遇をされるのも好まなかった。 私達と同じものを食べ、喜び、同じものを着て、遊んだ。 お父上は、そんなスコーピウスを大声で叱ることはなかったようだけど、 かといって奨励したわけでもないようだった。 スコーピウスは、父上はこの時代に耐えてらっしゃるんだと笑う。 父上には受け入れがたいんだ、と。 でも、逆らうことも出来ず、かなり努力して妥協して、 そして耐えてらっしゃるんだと思うよ。 そう言いながら、スコーピウスはちょっと悲しそうだった。
スコーピウスのおうちは、特別視するなという方が無理な、 まさに旧家! といった佇まいだった。 スプーンひとつをとっても、 私には想像も及ばない歴史があるかのような雰囲気を漂わせていた。 スコーピウスの部屋のソファも絨毯も、ベッドもカーテンも、 何もかもが私たちを包み込み、とてもあたたかで、守られている気持ちになる。 この部屋で家で育ったスコーピウスが、 優しい子になるのは当たり前のような気がした。 全てに慈愛を感じるような、そんな部屋だった。
「ここは昔、父上の部屋だったんだって」
「まあ! なんだか不思議な感じね」
「おじい様も子供の頃はここで過ごしたとおっしゃっていた」
「じゃあ、この部屋は代々、マルフォイ家の嫡男が育つ部屋なのね」
「部屋がないだけだよ」
「御冗談を! 大きなおうちじゃない。でも不思議と落ち着くのね。 わたし、あまりに広すぎてそわそわしてしまうんじゃないかと思っていたわ」
「玄関ではしっかりそわそわしてたよ」
「やっぱり!? なんだか恥ずかしいわね。でも慣れてないの、笑わないでね」
「笑ったりしないよ。あ、そうだ。庭に出てみる? うちではどの季節でも薔薇を咲かすんだ」
「そうなの? さすがねえ」
彼はわたしを庭まで案内すると、ティーセットを持ってくるねと一旦屋敷へ戻った。 しもべ妖精が、わたくしめにお任せを! お任せを! とわめいていたが、 じゃあ一緒に行こうか、と連れだっていった。 スコーピウスの話だと、今この家にいるしもべ妖精には、 すでにお父上がプレゼントを贈っていて、それでも残っているものばかりらしかった。 父上は慕われてもうんざりしたような顔をしているけどね、とも言っていた。
それにしても、見事な庭もとい薔薇だった。 葉は濃い緑をしていて降り注ぐ陽の光を跳ね返し、 棘は触れるのが躊躇われるほど鋭く尖って やわらかな花を奪おうをするものを拒み、守っていた。 植えられている薔薇がなんという品種かはわからなかったけれど、 その美しさと香りの良さはわかった。 区画ごとにいろいろな品種が植えられているらしく、 よく見ると、八重咲きになっていたり、花の形や大きさ、草丈なんかが違っていて、 隣と隣を見て歩くのが楽しかった。 そうやって、それらに惹かれてどんどん奥に進むと、こじんまりとした東屋があった。 その東屋の周りには白薔薇と青薔薇しかない。 特に青薔薇はたった今通り抜けてきた中には見つからなかった、 ここで初めて見た色だった。 石造りの東屋は、屋根がドーム型でかわいらしく、 白いツルバラが絡みついていた。 そしてその中には、 スコーピウスと同じプラチナ・ブロンドの男性がこちらを背中に向けて どこか遠くを見るようにしていた。
「こんにちは……」
東屋に近づき、恐る恐る声をかけると、 その方はゆっくりこちらを振り返り、私を視界に入れ、そして認識すると、 ほんの一瞬だけ、まるで見まいとしていたものを うっかり見てしまった時のような驚きと怒りの表情を浮かべた。そして、
「ここは、プライベートな庭なのだが……」
と眉をひそめておっしゃった。冷たい声だった。
「それは……申し訳ありませんでした。 わたし、今日、スコーピウスに招待されまして……。 素晴らしいお庭だったものですから、つい奥に入ってしまいました」
「ああ、スコーピウスの……。それは失礼した」
「いえ、こちらこそ不躾にお声をかけてしまいすみませんでした」
そう頭を下げると、その方はそのとき初めて、ほんの少しだけ声を和らげて、
「あなたは母上とは大違い。素直な方だ」
と、おっしゃった。 びっくりして顔を上げると、その方はわたしをまっすぐ見ていた。
「母をご存じなんですか?」
そう尋ねると、その方はわたしが声をかける前と同じように、 背中を向け、遠くを見つめながら
「グレンジャーか」
わたしは今まで、父や母と同じ年の男性が、 私たちと同じような、まるで子供みたいな声を出せるなんて知らなくて、 その場で固まってしまった。 遠くで私の名を呼ぶスコーピウスの声が聞こえたが、 私はずっとその場に立ちつくしていた。 スコーピウスの父上も、それ以上何も言わなかった。
おしまい
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2529字 No.117
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夏休みは何かしていないととても暇だ。 というわけで、明日スコーピウスのおうちに遊びに行くのよとママに言ったら、 スコーピウスってあのマルフォイの? と、静かに、でもとてもびっくりした後、 少し黙ってから笑って、「わかったわ。いってらっしゃい、お行儀よくね」と言った。 私はそんなふうにびっくりしたママにびっくりして、「……頑張るわ」としか言えなかった。 スコーピウスのおうちは確かに純血の旧家だけれども、 そんなにおっかなびっくり訪ねるようなおうちなのかしらと思った。 だってスコーピウスはいつも言ってるわ。 スリザリンには未だに純血至上主義の古いやつらが大勢いてうんざりするよ、と。 彼はスリザリンを嫌っちゃいなかったし、グリフィンドールになりたいなんて 思ってもいないけれど、でもあまりスリザリンを好いてもいなかった。 そしてなんとなく、お父上のことも好いていないようだった。 はっきりと彼がそう言ったわけじゃないけれど、 純血至上主義のやつらと言いながら、それにはお父上も含まれているのかしらと思うだけだった。
彼は旧家特有の品の良さと優雅さを備えつつ、 旧家特有のプライドはあまり持ち合わせていないようだった。 彼は自分の家が特別視されるのを嫌っていたし、 それゆえの待遇をされるのも好まなかった。 私達と同じものを食べ、喜び、同じものを着て、遊んだ。 お父上は、そんなスコーピウスを大声で叱ることはなかったようだけど、 かといって奨励したわけでもないようだった。 スコーピウスは、父上はこの時代に耐えてらっしゃるんだと笑う。 父上には受け入れがたいんだ、と。 でも、逆らうことも出来ず、かなり努力して妥協して、 そして耐えてらっしゃるんだと思うよ。 そう言いながら、スコーピウスはちょっと悲しそうだった。
スコーピウスのおうちは、特別視するなという方が無理な、 まさに旧家! といった佇まいだった。 スプーンひとつをとっても、 私には想像も及ばない歴史があるかのような雰囲気を漂わせていた。 スコーピウスの部屋のソファも絨毯も、ベッドもカーテンも、 何もかもが私たちを包み込み、とてもあたたかで、守られている気持ちになる。 この部屋で家で育ったスコーピウスが、 優しい子になるのは当たり前のような気がした。 全てに慈愛を感じるような、そんな部屋だった。
「ここは昔、父上の部屋だったんだって」
「まあ! なんだか不思議な感じね」
「おじい様も子供の頃はここで過ごしたとおっしゃっていた」
「じゃあ、この部屋は代々、マルフォイ家の嫡男が育つ部屋なのね」
「部屋がないだけだよ」
「御冗談を! 大きなおうちじゃない。でも不思議と落ち着くのね。 わたし、あまりに広すぎてそわそわしてしまうんじゃないかと思っていたわ」
「玄関ではしっかりそわそわしてたよ」
「やっぱり!? なんだか恥ずかしいわね。でも慣れてないの、笑わないでね」
「笑ったりしないよ。あ、そうだ。庭に出てみる? うちではどの季節でも薔薇を咲かすんだ」
「そうなの? さすがねえ」
彼はわたしを庭まで案内すると、ティーセットを持ってくるねと一旦屋敷へ戻った。 しもべ妖精が、わたくしめにお任せを! お任せを! とわめいていたが、 じゃあ一緒に行こうか、と連れだっていった。 スコーピウスの話だと、今この家にいるしもべ妖精には、 すでにお父上がプレゼントを贈っていて、それでも残っているものばかりらしかった。 父上は慕われてもうんざりしたような顔をしているけどね、とも言っていた。
それにしても、見事な庭もとい薔薇だった。 葉は濃い緑をしていて降り注ぐ陽の光を跳ね返し、 棘は触れるのが躊躇われるほど鋭く尖って やわらかな花を奪おうをするものを拒み、守っていた。 植えられている薔薇がなんという品種かはわからなかったけれど、 その美しさと香りの良さはわかった。 区画ごとにいろいろな品種が植えられているらしく、 よく見ると、八重咲きになっていたり、花の形や大きさ、草丈なんかが違っていて、 隣と隣を見て歩くのが楽しかった。 そうやって、それらに惹かれてどんどん奥に進むと、こじんまりとした東屋があった。 その東屋の周りには白薔薇と青薔薇しかない。 特に青薔薇はたった今通り抜けてきた中には見つからなかった、 ここで初めて見た色だった。 石造りの東屋は、屋根がドーム型でかわいらしく、 白いツルバラが絡みついていた。 そしてその中には、 スコーピウスと同じプラチナ・ブロンドの男性がこちらを背中に向けて どこか遠くを見るようにしていた。
「こんにちは……」
東屋に近づき、恐る恐る声をかけると、 その方はゆっくりこちらを振り返り、私を視界に入れ、そして認識すると、 ほんの一瞬だけ、まるで見まいとしていたものを うっかり見てしまった時のような驚きと怒りの表情を浮かべた。そして、
「ここは、プライベートな庭なのだが……」
と眉をひそめておっしゃった。冷たい声だった。
「それは……申し訳ありませんでした。 わたし、今日、スコーピウスに招待されまして……。 素晴らしいお庭だったものですから、つい奥に入ってしまいました」
「ああ、スコーピウスの……。それは失礼した」
「いえ、こちらこそ不躾にお声をかけてしまいすみませんでした」
そう頭を下げると、その方はそのとき初めて、ほんの少しだけ声を和らげて、
「あなたは母上とは大違い。素直な方だ」
と、おっしゃった。 びっくりして顔を上げると、その方はわたしをまっすぐ見ていた。
「母をご存じなんですか?」
そう尋ねると、その方はわたしが声をかける前と同じように、 背中を向け、遠くを見つめながら
「グレンジャーか」
わたしは今まで、父や母と同じ年の男性が、 私たちと同じような、まるで子供みたいな声を出せるなんて知らなくて、 その場で固まってしまった。 遠くで私の名を呼ぶスコーピウスの声が聞こえたが、 私はずっとその場に立ちつくしていた。 スコーピウスの父上も、それ以上何も言わなかった。
おしまい