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赤を足していく #カク #パウリー

「お前、これ意味あるか?」
「意味?」
 休日、暇を持て余してカクの部屋を訪れたおれは、物の少なさに驚きつつも、これでこそこいつの部屋だ、と納得した。自分の部屋と間取りはそう変わらないはずなのに、がらん、という音すら聞こえそうなほど広く見える。物が少ないせいか、ちょっとした音がやけに反響してデカく聞こえるような気さえする。
 そんな部屋の壁にかかっているカレンダーはかなり目立ち、かつ意外だった。
「納期しか書いてねェ」
「納期は忘れたら困るじゃろ」
 カレンダーはあるくせに、東側の窓には薄いカーテンすらない。朝日は眩しくないのか、と訊けば、別に明るくても寝ていられる、と些か不思議そうだ。カクにはたまにこういうことがある。浮世離れ、とでも言うのか、単に少々変わり者というだけか。
 休日だというのに仕事でもしていたのか、テーブルの上には今手掛けている船の図面が広げられていた。所々、赤鉛筆で書き込みがしてある。
「カレンダーにはこういうのを書いとくんだよ」
 テーブルに転がっていた赤鉛筆で今日の日付に赤く丸をつけた。赤鉛筆が、シュッ、とカレンダーに走る音が気持ちいい。そのまま『PM20:00 ブルーノの店』と書き入れていくと、訳が分からないという顔で黙って見ていた部屋の主が、それは忘れとらんし忘れても困らんじゃろ、と不服そうだ。
 忘れてねェんだな、とは言わなかった。前半にはただ笑って、後半にだけ、おれが困るんだよ、と返事をする。カクもそうか、と笑った。静かな部屋に響く笑い声は、そう悪いものでもないだろう。約束の二十時までこのまま居座ってくだらない話をしてやろうと決め、おれの椅子はどこだ? とカクに尋ねる。

おしまい

二次創作,長編・連作,ONEPIECE,水の都で過ごした 734字 No.107 

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