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望むらくはノンフィクション #カク

 フランキーに口説かれているウカを見るや否や、叫んでいた。慌てて駆け寄り、これ以上ウカに手を出される前に、彼女の手を取って足早に店を去る。ウカは無言でついてきた。
 ウカのヒールが石畳を鳴らす音だけが高らかに響く。

「……、さっきは、すまんかった」

 先に帰ってしまって。沈黙に耐え切れずカクが謝ると、ウカは足を止めた。ウカ? と振り向くと、ウカは観光客向けの安宿を見つめていた。

五年前・夏の夜

 裏町に佇む安宿の女主人はこちらを見ようともせず、部屋の鍵だけ投げるように寄こしてきた。ウカは鍵についている部屋番号のタグを確認するとカクの手を引いて大股でずんずんと進んでいく。
 なだれ込むように部屋に入ると、そのままベッドに倒れこんだ。カクは抵抗しなかったが、ウカは体の全部を使って、自分の身体の下にいるカクを、さらにベッドに押し付けるように体重をかけた。互いの鼓動がドッドッどっどっ、と絶え間なくリズムを刻む。どちらがどちらかは、もうわからない。
 もちろん、カクはいつだってウカを力で止めることができた。今だって、ウカを押し返すことができる。でもそれはしなかった。ウカがはじめて、自分の気持ちをむき出しにしている。彼女のこの衝動を、いま何かで遮ってしまったら、もう二度と彼女はこんなふうに自分を求めてこないんじゃないかと思った。
 ウカは体を起こすと、カクの服を脱がし始める。カクはされるがまま、ウカに身体を預けたが、ベルトに手をかけられたときはじめて、「自分だけ脱がないのはずるいじゃろ?」とウカの手を制した。
 ウカはカクのベルトからすっと手を離して、自分のブラウスのボタンを外し始める。脱ぎ終わったカクが手伝おうとすると、ウカは身体を振って拒み、カクに背を向けてしまった。仕方なく、露わになっていくウカの肌をただ見つめる。

「ごめんなさいっ!」

 ウカは振り向きざまそう言うと、またカクをベッドに押し倒して、唇を押し付けてきた。肌と肌、粘膜と粘膜が触れ合っているところだけ、妙に熱い。唇の柔らかさと、生き物のように蠢く舌にも驚いたが、とりわけ、生殖器の触れ合いはすさまじい刺激だった。
 ウカはわざとなのか、すでに潤っている秘所をカクに擦り付けるように腰をくねらせる。ウカの柔らかな肉襞と、ぬるっ、という感触を己の敏感な部位で知覚したカクは、頭の先からつま先までぶわ、と一気に鳥肌が立った。それは、ウカの「ごめんなさい」が何に対する謝罪なのか、考える余裕がなくなるほどだった。
 唇を離したウカは腰を浮かすと、ビンと跳ねるように持ち上がるカクのモノに優しく手を添えて、わ、わ、と焦るカクを尻目に、腰を落としてカクを吞み込んでしまう。カクが果ててしまわないよう、カクの様子を探るウカの視線は、カクを標本の蝶のようにベッドにピン止めした。

「ごめ、んねっ、ごめん、ねっ」

 本当はずっと、こうしたかったの。
 カクに馬乗りになったウカは、腰を前後に揺らしながら、途切れ途切れに謝罪の言葉を紡いだ。ウカは喘ぐたびにカクをきゅうと締め付けるものだから、カクはウカの腰に手を添えて、ウカに悟られぬようにそっとウカの動きを制御する。このままウカの自由にさせておいては危うかった。

「そ、れなら、さっさとしてくれればよかったものを。随分、焦らされたのう」

 本当なら行為に没頭したいのだが、今それをしてしまってはあっけなく果ててしまいそうで、カクは仕方なく、断腸の思いで、気の紛れる会話をすることを選んだ。

「ごめん、ごめんね」

 だが、ウカはそんなカクの努力も知らずに、好き、好き、大好き……、とカクがずっと聞きたかった言葉を、腰を振りながら惜しげもなく浴びせた。身体を起こしておけなくなったウカが倒れこむようになると、丸い胸がカクの固い胸板で潰れ、ウカの顔がカクの耳元におさまる。
 そうなってもウカはゆるゆると腰を動かした。好き、好きだったの、ごめんね、好き、あっ、好きっ、ん……、カクの耳元で甘い熱を孕んだウカの声が鼓膜を揺らす。たまらず、ウカの腰に添えていたカクの手に力が入る。それに気づいたウカが、ゆっくり動きを止めた。気だるげに身体を起こして、きょとんとする。

「これ以上は我慢できん」
「え、……」
「その……ビギナーには、優しく、手取り足取り、教えて欲しいんじゃけど」

 カクが恥を忍んで言うと、ウカは自身の乱れ振りと、カクの告白に、はっと口許を手で覆った。暗闇だったが、耳まで赤く染めているだろうことが想像できる。心なしか体温も上がり、先ほどからカクを捕らえて離さない蜜壺もじゅわ、と、とろみを増した。
 これだからこの人は。
 羞恥の炎に焼かれているウカのその表情、仕草は、カク自身をまたさらに固くさせる。彼女を貫いているモノがどくりと脈打つのがカクにもわかった。彼女がそれに丁寧に反応して、小さく喘いだのも。全部がカクを追い詰めてくる。
 カクが繋がったまま体を起こすと、当たる角度が変わったのかウカの嬌声が口と指の間から漏れてくる。そのまま腰を動かしても良かったが、先ほどから頑なに口許を覆っている両手を指先からはがしていく。唇が見えたところで、すかさず唇を重ねた。
 カクは、様々な角度で唇を重ね、ウカの唇を舌で割り、差し入れながら、さっきウカに教わったばかりの気持ちよさを反芻した。そのまま、ウカにやられたのをそっくりそのまま、やり返す。つまり、ウカをベッドに押し倒した。

「わしばっかり、気持ちよくなっとらんか?」

 この位置からウカを見下ろせるとはのう、とカクは内心静かに感動した。

「そんなこと、ないよ」
「そうかのう? どうしたら、もっと、いいんじゃ?」
「え?」
「初心者じゃから、教えてもらわんと」
「あ……」

 ウカの目が泳ぐ。どう答えたらいいかと考えあぐねているのが手に取るように分かった。もう一押し、とカクは「のう? どこが、いい?」と問いを重ねる。
 ウカは目をぎゅっと瞑ってカクの手を取ると、自分の胸の膨らみに誘導した。掌にコロン、と固く尖るものを感じる。膨らみに少しだけ五指を沈めると、ふ、とウカが息を漏らした。指の股に屹立したそれを挟んでくにくにと刺激すると、刹那、ウカが顎の裏を見せるようにして背中をしならせた。そのまま刺激し続けると、腰が切なげに揺れ、カクを呑み込んでいる肉壺がうねうねと収縮する。ウカは、いやいや、と顔を振ってみせるが、繋がっている部分はとてもそのようには思えない。
 ウカのいいところ、を弄びながら、喘ぎ声しか出さないウカの耳元で「これがいいんじゃな?」と囁くと、逡巡したのち、首を縦に振った。

「じゃあ、『気持ちいい』って教えてもらわんと」
「あっ、そん、なっ」
「言ってくれんと、わからんじゃろう?」

 なにもかも、と続けると、ウカはまた「ごめんっ、なさい」と喘ぎながら詫びた。

「『ごめん』はもう、いいんじゃ」
「あっ、うん、あ」

 カクが腰を進めウカをゆっくり貫くと、ウカはその動きに合わせて仰け反っていく。腰を進めながら、聞きたかったこと、答えを知りたかったこと、をひとつずつ尋ねていく。

「ちゃんと、気持ちいいか?」
「ん、うん、うん」

 反応を見ながら少しずつ角度や深さを調節する。そうして試していき、びくん、とウカの身体が跳ねるところを丁寧に、何度もこすった。

「ここがいいのか?」
「あァっ、うん、そうッ!」

 カクのまだ続けたい、という意志とは裏腹に少しずつ腰の動きが速くなる。

「もっといろいろ、教えてくれるかのう?」
「あっ、うんっ──あッ!」
「これからも?」
「ああっ、うん、んっ」
「……わしのこと、好きじゃろう?」
「あぁッ!」
「いい加減、諦めて、認めてくれ」
「ああっ、ん、だいす、き──ッ」

 悲鳴にも似た今日一番の『すき』にあわせて、ウカのつま先がぴん、と伸びる。そのすぐ後、びくびくと痙攣して果てた。カクも堪えきれず、吐精する。ウカは、ぴくぴくと小さく震えている。

「わしもじゃ」

 届かなくてもいい、とカクは思った。ウカにはもう何度も伝えているから。それでも言わずにはいられない。だからウカ、あなたも。
おしまい


 

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