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カテゴリ「官能小説」に属する投稿[38件](2ページ目)
諦めて、覚悟して? #カク
※身体が入れ替わりました
「気が付いた?」
目が覚めると自分が自分を覗き込んでいて、驚いて飛び起きると、笑顔の自分がいた。
「え?」
自分の口から洩れる声は紛れもなくウカちゃんの声だったし、パジャマのハーフパンツからすらりと伸びている足先の爪には可愛い色が塗ってある。こちらも紛れもなくウカちゃんの足だった。手も小さくて、ふにふにと柔らかく、整えられた手の爪にも、足の爪とは違う色が塗られている。
そこで思わず、ハーフパンツの中身をぐいと見てみると、あるはずのものがなかった。代わりに、目に入るのはウカちゃんの形のいい胸の膨らみと、薄いキャミソールをつん、と持ち上げている勃ちあがった乳首だ。
「見ちゃうよね~」
面白がる自分の声が聞こえ、ようやく、目の前の自分であるはずの男をまじまじと見つめる。橙色の髪に、丸い目、何より人より四角く長い鼻。我ながら、そうお目にかかれないビジュアルだ。
「ウカちゃんは、わし……なのか?」
「そう」
「わしは、ウカちゃん?」
「そう」
「なんで?」
「わかんない」
カク(inウカ)は、はああああ、と大きなため息をついた。ウカちゃんから、水でも飲みなよと水の入ったコップを手渡され、あおるようにして一気に飲んだ。寝て起きたらこうだったんだから、また寝て起きたら戻るんじゃない? とウカちゃん(inカク)は呑気だ。というより、先ほどからそわそわと落ち着かない。表情も声音も不安からは程遠いが、どうしたのだろうと、そのまま問う。
「カクくんはすごいね」
「は?」
「私ね、カクくんのこの体で目が覚めたら、私が隣で寝てるでしょう? わけわかんなかったけど、それ以上に、その……、寝てる私を見てたら、カクくんの……これがムクムクしてきて、もう大変だったの。これ、触ると気持ちがいいし、でも、あんまり勝手に弄るのも申し訳ないし、だから、その」
言い終わる前に荒々しく唇を塞がれた。むしゃぶりつかれた、という方が正しい。カクは自分の舌が自分に入ってくるようでぎょっとしたが、上顎を舌でなぞられたウカの体が、カクの思考とは裏腹にそれを「気持ちいい」と感じてしまい、たまらず短い声が漏れる。ウカちゃんの、あの声だ、とカクはウカにぼうっとさせられた頭で、それだけ考えた。
ウカの体は舌と舌が絡んだだけで、何やら下腹部のあたりがうずうずともどかしく、カクはたまらず太もも同士を擦りあわせる。自分の唇を、舌を、頬を覆っている手を、こうして感じるのは奇妙なのだが、それよりも圧倒的に快感の方がすさまじく、カクは思考が追いつかない。ぷは、と唇を離すと、目をギラギラさせた自分、もといウカが言った。
「カクくんは、すごい。こんなに力が強いのに、いつも私に優しくしてくれてたんだね」
言いながら、ウカはカクの両手をとってベッドに押し倒した。ウカの体ではもちろん、カクの腕力には敵わず、カクは簡単に組み敷かれてしまう。
「ごめんね。でももう限界なの。カクくんのこれが、ずっと、したい、したいって言ってて、もうおかしくなりそうなの。カクくん、助けて……」
カクは、もはや涙目になっているウカの頭を優しく撫でる。自分が下半身に翻弄されている姿を直視するのは辛いものがあったが、それよりそんなものに振り回されているウカが気の毒だった。
「わしの身体がすまんの。その……最近忙しくて、ご無沙汰じゃったろ? わしも限界だったんじゃ、許してくれ」
「うぅ……」
「ほれ、ひとまずわしが抜いちゃろう。一回イケば冷静に……」
「やっ! 駄目だよ! カクくんも気持ちよくなろう?」
「ん?」
「まかせて!」
ウカちゃんの表情は逆光でよくわからないが、笑っていることだけは確かだ。
◆
「んぅ……ぁあ……、あ……ん……ッ……」
「ね~? 気持ちいいでしょう? たまんないよねえ」
ウカはカクを背後から抱きしめるようにしてベッドに乗りそのまま壁にもたれると、キャミソールの上からカクの柔らかな膨らみを鷲掴みにして、上を向いたままの両乳首の先端を人差し指ですりすりと擦り始めた。他のどこにも触れないよう、慎重な動きでそこだけを左右に往復させる。
薄い布越しのむず痒い感覚に、また腰がもぞもぞしてきて、カクは先ほどと同じように太ももをぎゅっと閉じようとする。だが、すかさずウカに
「閉じたらだめだよ? ちゃんと向こうから見えるようにしておこうね」
「うぁあッ! ウカちゃ、ん……ッ!」
太ももの内側を指でなぞられ、のけぞってしまった。一緒に乳首も根元から摘ままれ、ぐりぐりと、押しつぶされるように愛撫される。弱い刺激を与えられ続け、敏感になっていた突起には強すぎる刺激だった。
「今度はどっちもぐりぐりするよ~。ほら、ぐりぐりぐりぐり……」
「~~~~ッ!! ん゛ん゛ぅ……ッ!」
「カクくんは、声出すの恥ずかしいの? 我慢しなくていいんだよ?」
たとえ女性の身体だろうと、恋人の前で女性のように喘ぐのは避けたかった。それなのに、ウカは固くしこったそれを親指と人差し指で根元から摘まむようにして、ゆっくり、ぐりぐりと弄ってくる。小さな二つの突起から快感が腹のあたりにぎゅーっと蓄積していく。
ウカは丁寧に丁寧に、それを続けた。我慢できず腰が動いてもウカは気にも留めない。足だけ閉じないように、と何度も言われ、カクはとにかくそれだけに集中した。足に力を入れ、閉じないように、閉じないように。
少しだけ刺激にも慣れてきたころ、ウカが耳元でくすりと笑った。
「私の身体だから、何が気持ちいいか、私が一番わかっちゃうんだなあ」
「ぁあッ、ぅぁあッ! あぁんッ、~~~~ッ!」
「根元摘ままれたまま、かりかりされたら気持ちいいよねえ。布越しだと痛くないし、ずーっと、かりかりできちゃうね」
「ウカちゃんッ! ちょ、ぁあッ! ま、ッで、これっ! ウカ、ちゃあッ!」
「ん~? あ、ダメダメ、また足閉じようとしてる」
「ぁ、あぁああ……ッ!」
ウカはさっきからずっと胸の飾りを摘まんで、カクを丁寧に捕まえて離さなかった。いくら体を捩っても、それは思いもよらなかった刺激が生まれるだけでなんの意味もなく、じわじわと追い詰められていくようでカクは戸惑う。股の間がひくついて、中から温かいものが溢れてくるのが分かった。
「カクくんが私の身体をこうしたんだよ? 毎晩毎晩、たくさん弄って、舐めて、吸って、揉んで、摘まんで……散々、ね」
「そう、じゃっ、たな、あぁッ、~~ッ!」
「仕上がりは、……どう?」
「~~~~~~ッ!!」
「ね? たまんないでしょう?」
ウカちゃんの言うとおりだった。
自分が、毎夜たっぷり時間を使って苛んだウカちゃんの身体は、与えられる全部の刺激を余すことなく快楽として享受していた。すべてが気持ちよくて、びりびりと頭の先から痺れるような快感は、ジャムをぐつぐつと煮詰めていくように、熱く濃厚になっていく。
「ウカ、ちゃ…、……わ、わしは……もう……」
「そうだね! 次は、抱っこしてあげる!」
こっち向いて? ウカちゃんが囁く自分の声に甘い響きが混じっているのがわかり、これ以上は耐えられない、とそう思うのに、早く早く、と言いながら、また胸の突起を摘まみはじめるウカちゃんに逆らえない。
「もっと気持ちいいからね」
尾てい骨のあたりから全身に鳥肌が広がって、恐る恐る、ウカちゃんの方に身体を向けると見慣れた自分の笑顔があった。ウカちゃんの、今は自分の、下腹部がきゅ、と締まる。
おしまい
※身体が入れ替わりました
「気が付いた?」
目が覚めると自分が自分を覗き込んでいて、驚いて飛び起きると、笑顔の自分がいた。
「え?」
自分の口から洩れる声は紛れもなくウカちゃんの声だったし、パジャマのハーフパンツからすらりと伸びている足先の爪には可愛い色が塗ってある。こちらも紛れもなくウカちゃんの足だった。手も小さくて、ふにふにと柔らかく、整えられた手の爪にも、足の爪とは違う色が塗られている。
そこで思わず、ハーフパンツの中身をぐいと見てみると、あるはずのものがなかった。代わりに、目に入るのはウカちゃんの形のいい胸の膨らみと、薄いキャミソールをつん、と持ち上げている勃ちあがった乳首だ。
「見ちゃうよね~」
面白がる自分の声が聞こえ、ようやく、目の前の自分であるはずの男をまじまじと見つめる。橙色の髪に、丸い目、何より人より四角く長い鼻。我ながら、そうお目にかかれないビジュアルだ。
「ウカちゃんは、わし……なのか?」
「そう」
「わしは、ウカちゃん?」
「そう」
「なんで?」
「わかんない」
カク(inウカ)は、はああああ、と大きなため息をついた。ウカちゃんから、水でも飲みなよと水の入ったコップを手渡され、あおるようにして一気に飲んだ。寝て起きたらこうだったんだから、また寝て起きたら戻るんじゃない? とウカちゃん(inカク)は呑気だ。というより、先ほどからそわそわと落ち着かない。表情も声音も不安からは程遠いが、どうしたのだろうと、そのまま問う。
「カクくんはすごいね」
「は?」
「私ね、カクくんのこの体で目が覚めたら、私が隣で寝てるでしょう? わけわかんなかったけど、それ以上に、その……、寝てる私を見てたら、カクくんの……これがムクムクしてきて、もう大変だったの。これ、触ると気持ちがいいし、でも、あんまり勝手に弄るのも申し訳ないし、だから、その」
言い終わる前に荒々しく唇を塞がれた。むしゃぶりつかれた、という方が正しい。カクは自分の舌が自分に入ってくるようでぎょっとしたが、上顎を舌でなぞられたウカの体が、カクの思考とは裏腹にそれを「気持ちいい」と感じてしまい、たまらず短い声が漏れる。ウカちゃんの、あの声だ、とカクはウカにぼうっとさせられた頭で、それだけ考えた。
ウカの体は舌と舌が絡んだだけで、何やら下腹部のあたりがうずうずともどかしく、カクはたまらず太もも同士を擦りあわせる。自分の唇を、舌を、頬を覆っている手を、こうして感じるのは奇妙なのだが、それよりも圧倒的に快感の方がすさまじく、カクは思考が追いつかない。ぷは、と唇を離すと、目をギラギラさせた自分、もといウカが言った。
「カクくんは、すごい。こんなに力が強いのに、いつも私に優しくしてくれてたんだね」
言いながら、ウカはカクの両手をとってベッドに押し倒した。ウカの体ではもちろん、カクの腕力には敵わず、カクは簡単に組み敷かれてしまう。
「ごめんね。でももう限界なの。カクくんのこれが、ずっと、したい、したいって言ってて、もうおかしくなりそうなの。カクくん、助けて……」
カクは、もはや涙目になっているウカの頭を優しく撫でる。自分が下半身に翻弄されている姿を直視するのは辛いものがあったが、それよりそんなものに振り回されているウカが気の毒だった。
「わしの身体がすまんの。その……最近忙しくて、ご無沙汰じゃったろ? わしも限界だったんじゃ、許してくれ」
「うぅ……」
「ほれ、ひとまずわしが抜いちゃろう。一回イケば冷静に……」
「やっ! 駄目だよ! カクくんも気持ちよくなろう?」
「ん?」
「まかせて!」
ウカちゃんの表情は逆光でよくわからないが、笑っていることだけは確かだ。
◆
「んぅ……ぁあ……、あ……ん……ッ……」
「ね~? 気持ちいいでしょう? たまんないよねえ」
ウカはカクを背後から抱きしめるようにしてベッドに乗りそのまま壁にもたれると、キャミソールの上からカクの柔らかな膨らみを鷲掴みにして、上を向いたままの両乳首の先端を人差し指ですりすりと擦り始めた。他のどこにも触れないよう、慎重な動きでそこだけを左右に往復させる。
薄い布越しのむず痒い感覚に、また腰がもぞもぞしてきて、カクは先ほどと同じように太ももをぎゅっと閉じようとする。だが、すかさずウカに
「閉じたらだめだよ? ちゃんと向こうから見えるようにしておこうね」
「うぁあッ! ウカちゃ、ん……ッ!」
太ももの内側を指でなぞられ、のけぞってしまった。一緒に乳首も根元から摘ままれ、ぐりぐりと、押しつぶされるように愛撫される。弱い刺激を与えられ続け、敏感になっていた突起には強すぎる刺激だった。
「今度はどっちもぐりぐりするよ~。ほら、ぐりぐりぐりぐり……」
「~~~~ッ!! ん゛ん゛ぅ……ッ!」
「カクくんは、声出すの恥ずかしいの? 我慢しなくていいんだよ?」
たとえ女性の身体だろうと、恋人の前で女性のように喘ぐのは避けたかった。それなのに、ウカは固くしこったそれを親指と人差し指で根元から摘まむようにして、ゆっくり、ぐりぐりと弄ってくる。小さな二つの突起から快感が腹のあたりにぎゅーっと蓄積していく。
ウカは丁寧に丁寧に、それを続けた。我慢できず腰が動いてもウカは気にも留めない。足だけ閉じないように、と何度も言われ、カクはとにかくそれだけに集中した。足に力を入れ、閉じないように、閉じないように。
少しだけ刺激にも慣れてきたころ、ウカが耳元でくすりと笑った。
「私の身体だから、何が気持ちいいか、私が一番わかっちゃうんだなあ」
「ぁあッ、ぅぁあッ! あぁんッ、~~~~ッ!」
「根元摘ままれたまま、かりかりされたら気持ちいいよねえ。布越しだと痛くないし、ずーっと、かりかりできちゃうね」
「ウカちゃんッ! ちょ、ぁあッ! ま、ッで、これっ! ウカ、ちゃあッ!」
「ん~? あ、ダメダメ、また足閉じようとしてる」
「ぁ、あぁああ……ッ!」
ウカはさっきからずっと胸の飾りを摘まんで、カクを丁寧に捕まえて離さなかった。いくら体を捩っても、それは思いもよらなかった刺激が生まれるだけでなんの意味もなく、じわじわと追い詰められていくようでカクは戸惑う。股の間がひくついて、中から温かいものが溢れてくるのが分かった。
「カクくんが私の身体をこうしたんだよ? 毎晩毎晩、たくさん弄って、舐めて、吸って、揉んで、摘まんで……散々、ね」
「そう、じゃっ、たな、あぁッ、~~ッ!」
「仕上がりは、……どう?」
「~~~~~~ッ!!」
「ね? たまんないでしょう?」
ウカちゃんの言うとおりだった。
自分が、毎夜たっぷり時間を使って苛んだウカちゃんの身体は、与えられる全部の刺激を余すことなく快楽として享受していた。すべてが気持ちよくて、びりびりと頭の先から痺れるような快感は、ジャムをぐつぐつと煮詰めていくように、熱く濃厚になっていく。
「ウカ、ちゃ…、……わ、わしは……もう……」
「そうだね! 次は、抱っこしてあげる!」
こっち向いて? ウカちゃんが囁く自分の声に甘い響きが混じっているのがわかり、これ以上は耐えられない、とそう思うのに、早く早く、と言いながら、また胸の突起を摘まみはじめるウカちゃんに逆らえない。
「もっと気持ちいいからね」
尾てい骨のあたりから全身に鳥肌が広がって、恐る恐る、ウカちゃんの方に身体を向けると見慣れた自分の笑顔があった。ウカちゃんの、今は自分の、下腹部がきゅ、と締まる。
おしまい
時の狭間で・あちら側 #カク
カクはドアを開けて、閉めた。それだけでこの部屋にいて、全くわけがわからない。ドアはもう開かなかったし、物理的には壊せないこともわかった。すぐに諦めて部屋全体を見渡そうとしたが、見渡す前に目に飛び込んできたのは、目の前の壁から突き出しているとしか言えないベッドに、一糸纏わぬ姿で横たわっている女性だった。慌てて駆け寄ると、どういう構造なのか腹から下は壁の向こうのようだ。ひとまずジャケットを脱ぎ、身体を覆うようにかけて肩を掴んで揺さぶる。
「ウカッ!」
「……んん……」
ウカがいる以上、破壊を試みるなどの荒っぽいことは出来ないと諦めるしかなく、しかも、あちら側はあるのか、どうなっているのかもよくわからず、身動きが取りづらい。ウカの半身は自由なのか、それともすべて壁に埋まっているのか、そもそも、これはなんなのだ。
ウカが目を覚ましたところで絶対に謎は解けないだろう。自分が何とかするしかないのだということは、カクにも十分わかっているのだが、この状況を作り出したものの意図もわからなければ、これが攻撃なのかもすらわからず、とにかく途方に暮れるしかない。
「……カク? ……え!? え、なに!?」
「ウカッ! よかった!」
「なっ!? なに!? なにこれっ!?」
ウカはカクのジャケットを身体に巻きつけると、自由が許されている範囲で目一杯身体を縮めてガタガタと震えだした。カクは慌ててベッドに乗り、ウカを抱き寄せる。無理もない、目を覚ましたら謎の部屋だというだけでも恐ろしいのに、衣服を奪われ、裸で身体の自由までも奪われているのだ。強く抱き締めながら根拠もない「大丈夫」を繰り返す。
【怖いのはわかるが落ち着いてくれ、ウカ】
壁の向こうから聞こえてきたのは、紛れもない自分の、つまり、カクの声だった。
◆
【何が起きてるかワシにもさっぱりじゃが、ひとまずな。この状況から脱するには、そっちのワシとウカの協力が不可欠なんじゃ。辛いと思うが……耐えてくれ】
「な、なんでワシの声が……」
「カク? カクだよね? なんなの?」
二人で同じくらい、いや、もう一人の自分がいるカクの方が余計に混乱していると、あちら側からやけに落ち着いた声がまた聞こえてくる。あちら側のカクは、自分はそちら側の自分の半年先の未来の自分であること、つまり半年前にこの部屋のそちら側をウカと一緒に経験していること、その経験上この部屋から出るにはある条件を満たす必要があること、その条件はこちら側でしか知ることができずそちらに教えられないこと、そちらの音は全く聞こえないことなどを淡々と淀みなく説明するので、二人とも黙って耳を傾ける他なかった。だが、大人しく聞いているととんでもないことを言い出した。
【条件を満たすにはその……、肌を、重ねる……まあその、セックス、する必要があっての】
「はあああああああああああ!??!」
「ウカッ、気持ちはわかるが! 落ち着くんじゃ!」
【おうおう、そうじゃの。怖いのう。おい、そっちのワシはちゃんとそばにいて抱いてやっとろうな? ウカが怯えてかわいそうじゃろ】
「言われなくてもぎゅっとしてもらってますー! あほー!」
「いや、あれも一応ワシなんじゃろ?」
「そうだけど! なんか! 落ち着いてて腹立つ!」
「すまんの……」
さっきまで冷たい身体でガタガタと震えていたウカだが、あちら側にいるのが、よくわからないが「カク」だとわかったら、少し落ち着いたようだ。
【その……本当に不思議なんじゃが、こっち側にあるウカの身体は、半年後のウカの身体なんじゃ。だから、まあその……少し触るぞ】
「えっ! あ……」
「大丈夫か!?」
「あ、う、うん。びっくりしただけ……」
【誓って傷つけることはないし、その、今日のは半年後の出来事ってことで、ノーカンでどうじゃろ?】
「ノーカン!!!!」
ウカはさっきよりさらにじたばたと腕をベッドに叩きつけた。こちらからは見えないが、この分だと足も同じようにばたつかせていることだろう。ウカが好きに動けているということは、あちらの「カクだ」と主張する恐らく男もこれをただ眺めているのか。ウカの気持ちが済むまで待っているのだろう。
こればっかりは「そう感じる」としか言えないのだが、確かにあちらの自分は、自分だ。自分だから、自分だとわかるとしか言えない。自分の「手」を疑い無く自分のものだと思えるのに近い。あちらにいるのは、ワシじゃ。となれば。
「これが初体験、じゃないんだよね?」
「少なくともあちら側のウカは半年先らしいからの」
「これは練習、ってことで……」
「ああ、本番はここを出てからじゃ」
楽しみにしておれ、となるべく明るく付け足した。
◆
【じゃあの、ちょっと準備するから。触るぞ。こっちはなるべく声をかけるようにするからの】
「ウカ、出来ればあちらで何をされてるのか、教えてもらえるか?」
「え? わ、わかった。えっと、今は足をベルトで……浮かせて、固定? されてる……」
おいおいおいおいおい! なんちゅう羨ましい設備じゃ、とカクは口許に広がる笑みを手で覆って隠した。ウカは出るためなら仕方ない、と諦めたのか、今度ばかりはあまり騒がなかった。いや、もしかしたら、単に自分が壁の向こうでどんな格好で固定されているのか、想像ができていないのかもしれない。そして、それがこれからどう自分を追い詰めていくものなのかも。
辛くないか、という向こうの声に「なんて返事したら伝わるかな?」などと呑気なことを言っているのがその証拠だ。この異常事態で鳴りを潜めていたカクの嗜虐心が、むくむくと頭をもたげてくる。
【よし、はじめるか。ワシにはウカの声が聞こえんから、ウカの身体の反応が頼りじゃ。よく見ておくようにするからの】
「えっ!?」
「ウカがちゃんと教えるんじゃぞ?」
「あ、え、っと……」
今さら恥じらってももう遅い。カクにはウカが足をもぞもぞさせ、そして、足が閉じられない、と今気づいただろうことが容易に想像できた。あちら側にはウカの下半身しかなく、こちらの声も聞こえないのだ。そんなとき、どこを見るというのか。
【いきなりこちらを触られるのは嫌じゃろ?しばらくはそっちのワシと楽しんでくれ】
「さすが、ワシ。優しいのう」
「……、それ、言ってて恥ずかしくな、ん……」
ベッドは頭側に大分スペースが確保されていた。とはいえ、ウカの腹から下は壁の向こうで、普通に添い寝するのは難しい。ウカも大分リラックスしたようなので、胡座をかいて座ると、そこに枕とウカの頭をのせた。そのまま身体を折り曲げて軽くキスをする。少々窮屈だが仕方ない。とりあえず、両耳を指で優しく撫でながら、ちゅ、ちゅ、と唇だけでなく、鼻先や、頬、瞼なんかにも唇を落としていく。
「ふふ、くすぐったい」
【こんなこと言うのは本当に心苦しいんじゃが……】
「ぁんッ!」
ウカが思わず出た己の嬌声に、慌てて口を手で覆った。だが、あちらの自分は容赦しない。
【ウカは乳首を弄られるのが好きみたいじゃぞ】
「……へえ?」
「なっ、うそ! ちがうッ!」
【すまんのう、じゃがここから出るためじゃし……】
はじめから女の正解を教えられるのはかなり腹が立つが、相手は自分だ。ここは素直にかけたジャケットを払い除け、露になったウカの胸へと手を伸ばす。寒さからか、期待からか、ウカのそれはぴんと上を向いて尖り、ふるふると微かに震えていた。人差し指の腹でそっと、微かに触れるくらいに、ゆっくり前後させる。
「ん……ッふ……」
「ほう、感度がいいのう。それなら……」
「ゃっ、だぁ……、い、あっん……っ!」
今度は少し強めの刺激、前後に何度も弾くように指を往復させる。案の定、ウカはちゃんとここで快感を得られるようだ。機械のように正確に、同じ速さ、同じ強さで指を動かしていく。先端は弾かれるほどに固さを増していき、ぴんぴんと指に跳ね返ってくる。
「ね……えっ、……や、ぃやぁっ! ぁ、ふっ……んっ!」
「嫌そうには見えんがのう」
【そろそろこちらもいいかのう】
あちらの声に一応手を止める。ウカも見えはしない壁の向こうを見つめていた。
【ほらあ。やっぱり乳首はよかったじゃろ?】
「やっ! ど、どこ見てんの!?」
【おっと! そんなに動くと顔にぶつかる!】
「ウカ、あっち側で見る場所なんぞ、ひとつしかないじゃろう?」
ウカの顔が真っ赤に染まり、せめてもの抵抗なのか目をぎゅっと瞑って顔を背けた。途端「ぁ……」と小さい声を漏らして身体を捩る。
「ほら、あっちのワシが何したんじゃ?」
「っ……、あ、足の間に……」
「足の間? もっと正確に説明できんのか?」
「ぅ……く、クリト、リスに……息を、かけられて……」
「へえ、それくらいでも、こんなに鳥肌立てとるのか」
「~~ッ!」
【せっかく手が四本、口は二つあるんじゃから、そっちのワシも休まず楽しんでくれ】
「あっちは半年先輩じゃしのう、こっちも早く追い付かんと」
言い終わるのを合図に、また両乳首を優しくつねるように摘まむと、親指と人差し指でくりくりと擦った。そうすると、ウカが甘く喘ぎながら口を開けるので、容赦なく舌を差し入れる。逃げる舌を舌で、乳首を指で、逃がすまいと追いかけて追い詰めていく。
舌を唇で捕らえて吸うと、背中がぐっとしなり、カクの指に乳首を押し付けてくるような格好になるのがたまらない。もちろん、それに応えるように指をひたすら動かす。親指と中指で両乳首の根本をぐっとつまみ、ぐりぐりとしながら、人差し指で先端をすりすりと擦るのがウカはお気に入りのようだ。深いキスをしながらそれをすると、くぐもった喘ぎ声をひたすら垂れ流した。だが、両手は身体の脇でシーツを掴むばかりで抵抗してこない。
「ふ、ここが気持ちいいなんて、どこで覚えたんじゃ?」
「~~~~ッ! い、言わ、ないで……!」
【聞いとる余裕はないかもしれんが、ワシも触るぞ】
「ぁああああああ゛あ゛ッ!!!」
「ああもう、あっちのターンか」
恐らく、一番敏感な突起をとうとう弄られ始めたのだろう。ウカはさきほどよりもずっと身体をしならせ、背中は弧を描いている。ウカが握りしめるシーツのひだが大きく、長くなった。ひとまず手も休めて、上からウカをじっくり眺める。
「ウカー、なにされとるんじゃー?」一応聞いてみる。
「ああっ! やっ! クリっ、を! あああっ、そん、なああっ!」
【びっくりするじゃろ? 忘れとるかもしれんが、こっち側のウカの身体は半年後の身体でなあ。その……半年間、弄りまくったんじゃ。ここも、中も。あ、もちろん乳首もな】
「おうおう、半年でどんなに成長したことか」
【じゃから、まあ……。そっちのウカにしたら、開発済みの身体を急にくっつけられとるようなもんかの? その……、感想は?】
「嘘、うそッ! ああ゛ぁ────ッ!!」
「見事なイきっぷりじゃのう……」
恋人が初夜もどきでここまで乱れるとは。不思議な部屋のドアはまだ開く気配はない。
◆
【ほらほら、休まず手と口を動かさんか。一生この部屋でいいのか?】
「すまんのう、まだドアも開かんようじゃし……」
「やあっ! ま、ってよお! ま、だっ! からだ、が、あああッ!」
絶頂を迎えてもあちらのワシは手を休めていないようで、ウカが身体をしならせてビクビクと痙攣して果ててもなお、突起への愛撫は続いていたようだ。不規則な痙攣に身体を任せるしかないウカはかわいそうで愛らしい。
胸の愛撫を再開すると、イったことでより敏感になっているのか、先程よりさらに喘ぎ声が大きくなった。顎の裏が見えるほどにのけぞっている。固くはりつめた乳首の固さは手遊びにちょうどよく、反応も見ずに好きにこねくりまわした。
「やああっ! も、無理ッッ! ゆるっ、してよおっ! あ、あ、あああっ!」
「ほら、今あっち側はどうなっとるんじゃ?」
「ゆびっ! ぁあっ! ゆびで! すり、すりっ、されっ、て、ぅああ゛!」
【じゃあそろそろウカの好きなやつ、はじめるかの】
「え……」
ウカが驚きで一瞬動かなくなったのも束の間、すぐにまた悲痛にも聞こえる声をあげ始めた。一生懸命身体を捩って、快楽を逃がそうとしているように見えるが、あちらは阻むものがない。むしろ、身体に教え込むように執拗に責められているだろう。自分なら絶対そうする。
「今度はどうしたんじゃ?」
「あああっ! した! したでぇっ…やぁあああっ!」
「へえ、舐め回されて吸い付かれてしゃぶられとるのか。そりゃいいのう」
「やぁああぁああ……あぁああああ……ぐり、ぐりしな、いでぇっ!」
【は、舐めやすくて最高じゃの】
「足は閉じられないんじゃもんなあ」
「あぁっ! ~~~~~~~~っ!!! カ、クうっ! たす、けてぇ!」
【ああこら、逃げたら終わらんじゃろ。それにしてもここまでいやらしく育つとは……。そっちのワシもこれから半年、ちゃんと励めよ】
「そんなによがられると、ちいっとばかし癪に障るのう」
ウカの絶叫を塞ぐように、開いた口に舌を突っ込む。荒々しい動きでも、ウカは拙くとも必死についてくるようになった。この数十分で。舌を吸いながら、今度は指先でひっかくように乳首をカリカリと弄んだ。跳ねる身体に翻弄されながらも、絶え間なく刺激を与え続けていく。
【ん? もしかしてイっとるのか? もう痙攣しすぎてよくわからんから、とりあえず続けるぞ】
「イったああああっ! またっ、あああっ! あ、あ、あ、イクイクイクっ!」
【ふ、腰が動いて……物足りんようじゃの。あ、乳首はちゃんと弄っとるじゃろうな? さぼるなよ。ウカは乳首を弄られながら、が一番大好きなんじゃ。そうじゃろ?】
「ウカ、そうなのか?」
「あ゛あッ! ちがッ、うぅああ゛! も、……ッゆ゛るじ、でっ」
【あ、せっかくだから舐めてやったらどうじゃ? ココを舐められながら乳首も舐められるなんて、今しかできんぞ】
「確かにのう」
「ああぁああっぁあ゛ぁッ! ぁ、な、なめるのッ! ゃ、だめッ! ィあっ!」
【ウカはのう、いやいやと首を振りながら、ワシの口にココを押し付けてくるのがまた、かわいいんじゃ。あ、ほら。よしよし、まだ止めんから安心せい】
片方は舌で、片方は指で、痙攣する身体を押さえつけながら、しつこくしつこく、快感にあえぎ浮かせているだろう壁の向こう側の腰を責めるかのように嬲る。乳輪は乳首の固さとは正反対にふわふわと捉えどころがなく、何度も舌が滑った。その度に舌先が乳首を掠め、ウカが甘い叫びで喉を震わせる。
ぶるぶると震え、跳ね回る突起と孔しかないあちら側にいる自分は今、何を考えているだろう。舐めれば、つつけば、吸ってしゃぶって弾けば、素直に反応する、抵抗もしない突起はさぞ虐めるのが楽しかろう。白い壁を見つめながら、こちらの突起も指と舌で思いつくまま弄くり倒す。
「んあああ゛ッ! ちく、びもぉ! あ、そこッも! とけぢゃう゛!」
「まだ蕩けとらんから安心せい」
固さを失わない乳首の存在を分からせるように舌先でぐりぐりと押し込むように舐めた。こちらのBGMは耳に心地よい。
◆
【水は飲ませてるか? さすがに少し疲れた】
「おっと、それもそうじゃの。すまんかったな」
「──ッ! ……ぁ、ッ! …………んッ……」
余韻が残っているのか、ウカは何もされていないのに小さく喘ぎながらぴくぴくと脈打っていた。からだ全体が大きな心臓のようだ。
部屋を見回すとドアのすぐ横に小さなチェストがあり、その上に水差しとコップが鎮座している。ぐったりとして身体を起こすのも儘ならないようなので、背中に腕を回し口移しで水を飲ませた。粘膜同士の触れあいにまた身体が疼くようで耐えるように、閉じていた瞼をぎゅっと瞑る。飲ませ終わると、ウカは大きく息を吸って、ゆっくり長く吐いた。
【もうそろそろの辛抱じゃ。指、入れるぞ】
「弄られながら、じゃったよな?いいもん見つけたぞ」
カクは先程、水差しが置いてあったチェストの引き出しから見つけた小瓶の栓を抜くと、その中身をウカの胸元に垂らした。
「つっ、めた……ぁッ……!」
「すまんすまん、いま馴染ませるからの」
手のひらで、満遍なくゆるゆると塗り広げると、適度な粘性を持った液体がウカの肌を覆っていった。手のひらを動かす度に、屹立したこりこりとした乳首の感触がまた心地よく、何度も往復させてしまう。
「ぁあっ! ぁ、あ、……ッ、~~ッ!!」
【お、ちゃんと乳首も虐めとるな。感心感心】
「ぃゃぁあああぁぁああッ! それだめッ!!!! っあ! またイクっ!」
「ウカ? 何されとるんじゃ?」
【おお、やっぱり外と中から同時に刺激されるとたまらんか。今日は乳首までセットじゃからのう】
「へえ、道理で。気持ち良さそうじゃもんなあ」
「──ッ! んぅ……ッ! あッ! ~~~~~ッ!!」
最早ろくに声も出せず、細い首をさらけだしながら絶え間なく痙攣しているウカの滑らかな肌に指を滑らせながら、カクはのんびりと言った。指を広げ、ぷりゅぷりゅと逃げていく胸の小さな尖りを五本の指で順に撫でていく。そんな単調な刺激にもウカは律儀に喘いだ。飽きてきたらぬるぬるした指でそれを捕まえてみようとするが、滑ってうまくいかず、何度も何度もしごくようになってしまう。
あちらはあちらで、両手を使って外と中からクリトリスを苛めぬいているのだろう。あちらの突起は一つだが、こちらは二つだ。両方を、平等に、丹念に、公平に、愛撫する。
「ゃああっ! む゛ねはっ、ちく、びっ、や゛めでっ! も、むりっ!」
【すまんのう、条件が曖昧でな。どこまでやれば十分なのかわからんのじゃ。だから手を休めるなよ】
「じゃと。すまんのう、聞こえたか?」
「い゛ッでる、のにぃ゛! あ゛っ、あ、ぁっ、またっ!」
【ウカ、どんなに乱れても大丈夫じゃからな。その日からのワシはもう、すごいぞ。安心して、気持ちいいことだけ考えとれ】
「そうじゃそうじゃ。明日から楽しみじゃのう」
「へ、へん、じゃなッ、い?」
「かわいいのう」
ウカの身体がまた総毛立って、顎ががくっと上を向いた。玩んでいた乳首がまたぴんと張りつめて主張を増す。
【総仕上げといくか】
◆
「ウカ、実況。できるか?」
もう快楽を与えたいといった意思がなくとも、ウカの身体はただ触るだけで、勝手に快感を得るようになっていたので、カクも柔らかな双丘を好き勝手揉みしだくことにした。たまに意図せず乳首が刺激されるようで、ウカが身体を捩る。あちら側の腰はさぞ艶かしく揺れているだろうな、と想像して、少しだけ嫉妬のようなイラつきを覚えた。
「ぅ、あ……、あ、はい、って、あぁ……ゃ……」
「痛くはないか?」
「ぅ、ん。だ、いじょぶ……あ、んッ、あ、ゆっく、り……でた、り、はい、って……」
あちらは半年後、ということだったが、心配は心配だった。仮に、痛いと泣き叫ばれても、こちらの自分にはあちらの自分を止める術がない。ウカは慣れない異物の圧迫感に戸惑ってはいるようだが、苦しくはないようだ。様子を伝える言葉の端々に甘い疼きが混じる。
「~~~~ッ! た、ぶん、はい……った……?
【ずっとな、もどかしかったんじゃ】
「っああぁああ! ゃ、いじ、っちゃぁあっ!」
「あっちは容赦ないのう」
カクもまた、意思をもった戯れを再開する。やっていなかったことはなかったかと、ひとつひとつ確認するように、丁寧に弄る。
【ウカの好きなこと、いっぺんにやるにはどうしても手が足りんくてのう】
【今日、ようやく叶うぞ】
「ほら、どうしたんじゃ?」
「あっ、はいっ、た、ままぁっ、いじられ、てっ……~~~~ッ!」
「それで?」
「ッんぅ! な、かが、ぎゅ、ってする、と、あ、カクの、が」
【あぁ……。そっちのワシには悪いが、とんでもなくいいぞ】
「羨ましいのう。そんなに締め付けとるのか」
「だ、ってぇ! ずっ、と弄るからッ!」
【いつまでもこうしていたいが、それも無理じゃし仕方ない】
「~~ッ! ぅあ゛ッ! ああ゛ッ! ぁあ゛あっ!」
あちらはピストンし始めたようだ。規則正しいリズムでウカから声が漏れ出て、身体が揺れる。自分にできるのは、あちらの自分の言う通り、手を休めないことだけだ。ここまで来て条件を満たせなかったとなっては元も子もない。開きっぱなしのウカの口に、また舌を伸ばす。つい数十分前まで、啄むようなキスしか知らなかったウカに。
ウカは胸に伸びているカクの腕をぎゅっと掴んできた。抵抗ではなく、何か触れていたかったのだろう。身体が跳ねるのに合わせて、手に力が入る。
【ウカもいいんじゃな、わかるぞ】
唇と舌を離して、ウカの顔をじっとみる。
「はあ、たまらん顔じゃなあ」
気持ちよくて気持ちよくて仕方ない、といった顔だ。
「せっかくじゃから、よく見ておこうかの」
突かれている最中のウカの顔なんぞ、こんなにゆっくり見れんじゃろう? と言うと、ウカはぼうっとしているだろう頭でもなんとか羞恥を覚え、顔を背ける。今更だと苦笑しながら、寂しいのう、と言ってみるだけで、ウカはゆっくりと、だが、すぐにカクをまっすぐ見つめた。
「半年でこんなにいやらしくなるんじゃな? 明日からしっかり励まんと」
「それにしてもウカのここは全然萎えんの、ずっとカチカチじゃ」
「ほれ? 自分でもわかるじゃろ? 弄りやすくていいのう」
「弄って弄って、もっと大きくしようなあ」
「ワシしか見んのだからいいじゃろ」
「あっち側も楽しみじゃなあ。まずは明日早速励むからの」
突かれている喘ぎまくっているウカと見つめあいながら、乳首を捏ねながら、言葉でも責め立てていく。ウカは言葉を理解する度に、恥ずかしそうに視線を背け、またこちらに戻す、というのを繰り返した。たまに顎が見えるほど背中をしならせるのでそのときも視線は外れた。
「ぁああああっ! んんんんんッぁあああっ!」
【ああもう! 残念じゃなあ!】
どれくらいそうしていたかわからないが、ウカの叫びのような嬌声のすぐあと、あちらから自分の切羽詰まった声が聞こえてきた。恐らく双方果てたのだろう。自分の吐精時の声なんぞわざわざ聞きたくもないが仕方ない。ウカははあはあと肩で息をしているようだが、その他異常はなさそうだった。 部屋の様子が変わらないことに不安を覚えながら、取り急ぎ、シーツの乾いた部分でウカの身体を拭いてやっていると向こうから声が聞こえた。
【納得いかんが、言うても仕方ない】
ドアの開く音と訝しむ自分の声。
【満足しなかったのはワシか?】
一転、暗転。
◆
カクは意識を取り戻した、と知覚してすぐさま飛び起きた。素早く回りを見渡して、ここがウカの部屋で、ウカのベッドの上とわかる。
「あ、カク。どしたの? なんか怖い夢でも見た?」
「ウカ!?」
「はいっ! なに?!」
ベッドから飛び起きるとキッチンに立つウカに駆け寄る。ウカは見た限りなんともなさそうだ。カレンダーと時計を見て、そうだ、初めてウカの部屋に遊びに来て、そしたらあの部屋にいたんだ、ということを思い出した。
「ウカは、なんともないのか?」
「え? ああ、私も疲れてたのかな? さっきまでベッドでカクと寝てたんだけど……」
「それだけか? 身体は……」
「ぁんッ……!」
言いながら、ウカの頬に手を添えるとウカが小さく喘いで、慌てて手で口を覆っている。び、びっくりしただけ! と顔を背けるので、指先で耳の後ろを、つ、となぞるとまた身体をびくつかせた。
「ゃ、ちょ、っと、起きて、から、変ッ、なの」
「変? なにが……」
「ん……、その、おなか、が、あついっていうか」
もじもじと足を擦り合わせるウカを抱き寄せて、まだしたことのないはずの深い口づけをしてみる。するとウカは先ほどあの部屋で覚えたばかりの舌使いでカクの舌を追いかけてきた。ちゅ、と水音をたてて、顔を離すと、物足りない、というのが自分でも不思議そうな複雑な顔をしたウカがいた。
「か、カクッ! な、なんで……」
記憶はなくとも、身体が覚えている。
「まずは、半年か」
カクは抱き寄せるだけで「んんッ!」と喘ぐ恋人の頭を撫で、まずは戸惑いつつも身体を震わせている恋人をベッドに連れていくことにする。
おしまい
カクはドアを開けて、閉めた。それだけでこの部屋にいて、全くわけがわからない。ドアはもう開かなかったし、物理的には壊せないこともわかった。すぐに諦めて部屋全体を見渡そうとしたが、見渡す前に目に飛び込んできたのは、目の前の壁から突き出しているとしか言えないベッドに、一糸纏わぬ姿で横たわっている女性だった。慌てて駆け寄ると、どういう構造なのか腹から下は壁の向こうのようだ。ひとまずジャケットを脱ぎ、身体を覆うようにかけて肩を掴んで揺さぶる。
「ウカッ!」
「……んん……」
ウカがいる以上、破壊を試みるなどの荒っぽいことは出来ないと諦めるしかなく、しかも、あちら側はあるのか、どうなっているのかもよくわからず、身動きが取りづらい。ウカの半身は自由なのか、それともすべて壁に埋まっているのか、そもそも、これはなんなのだ。
ウカが目を覚ましたところで絶対に謎は解けないだろう。自分が何とかするしかないのだということは、カクにも十分わかっているのだが、この状況を作り出したものの意図もわからなければ、これが攻撃なのかもすらわからず、とにかく途方に暮れるしかない。
「……カク? ……え!? え、なに!?」
「ウカッ! よかった!」
「なっ!? なに!? なにこれっ!?」
ウカはカクのジャケットを身体に巻きつけると、自由が許されている範囲で目一杯身体を縮めてガタガタと震えだした。カクは慌ててベッドに乗り、ウカを抱き寄せる。無理もない、目を覚ましたら謎の部屋だというだけでも恐ろしいのに、衣服を奪われ、裸で身体の自由までも奪われているのだ。強く抱き締めながら根拠もない「大丈夫」を繰り返す。
【怖いのはわかるが落ち着いてくれ、ウカ】
壁の向こうから聞こえてきたのは、紛れもない自分の、つまり、カクの声だった。
◆
【何が起きてるかワシにもさっぱりじゃが、ひとまずな。この状況から脱するには、そっちのワシとウカの協力が不可欠なんじゃ。辛いと思うが……耐えてくれ】
「な、なんでワシの声が……」
「カク? カクだよね? なんなの?」
二人で同じくらい、いや、もう一人の自分がいるカクの方が余計に混乱していると、あちら側からやけに落ち着いた声がまた聞こえてくる。あちら側のカクは、自分はそちら側の自分の半年先の未来の自分であること、つまり半年前にこの部屋のそちら側をウカと一緒に経験していること、その経験上この部屋から出るにはある条件を満たす必要があること、その条件はこちら側でしか知ることができずそちらに教えられないこと、そちらの音は全く聞こえないことなどを淡々と淀みなく説明するので、二人とも黙って耳を傾ける他なかった。だが、大人しく聞いているととんでもないことを言い出した。
【条件を満たすにはその……、肌を、重ねる……まあその、セックス、する必要があっての】
「はあああああああああああ!??!」
「ウカッ、気持ちはわかるが! 落ち着くんじゃ!」
【おうおう、そうじゃの。怖いのう。おい、そっちのワシはちゃんとそばにいて抱いてやっとろうな? ウカが怯えてかわいそうじゃろ】
「言われなくてもぎゅっとしてもらってますー! あほー!」
「いや、あれも一応ワシなんじゃろ?」
「そうだけど! なんか! 落ち着いてて腹立つ!」
「すまんの……」
さっきまで冷たい身体でガタガタと震えていたウカだが、あちら側にいるのが、よくわからないが「カク」だとわかったら、少し落ち着いたようだ。
【その……本当に不思議なんじゃが、こっち側にあるウカの身体は、半年後のウカの身体なんじゃ。だから、まあその……少し触るぞ】
「えっ! あ……」
「大丈夫か!?」
「あ、う、うん。びっくりしただけ……」
【誓って傷つけることはないし、その、今日のは半年後の出来事ってことで、ノーカンでどうじゃろ?】
「ノーカン!!!!」
ウカはさっきよりさらにじたばたと腕をベッドに叩きつけた。こちらからは見えないが、この分だと足も同じようにばたつかせていることだろう。ウカが好きに動けているということは、あちらの「カクだ」と主張する恐らく男もこれをただ眺めているのか。ウカの気持ちが済むまで待っているのだろう。
こればっかりは「そう感じる」としか言えないのだが、確かにあちらの自分は、自分だ。自分だから、自分だとわかるとしか言えない。自分の「手」を疑い無く自分のものだと思えるのに近い。あちらにいるのは、ワシじゃ。となれば。
「これが初体験、じゃないんだよね?」
「少なくともあちら側のウカは半年先らしいからの」
「これは練習、ってことで……」
「ああ、本番はここを出てからじゃ」
楽しみにしておれ、となるべく明るく付け足した。
◆
【じゃあの、ちょっと準備するから。触るぞ。こっちはなるべく声をかけるようにするからの】
「ウカ、出来ればあちらで何をされてるのか、教えてもらえるか?」
「え? わ、わかった。えっと、今は足をベルトで……浮かせて、固定? されてる……」
おいおいおいおいおい! なんちゅう羨ましい設備じゃ、とカクは口許に広がる笑みを手で覆って隠した。ウカは出るためなら仕方ない、と諦めたのか、今度ばかりはあまり騒がなかった。いや、もしかしたら、単に自分が壁の向こうでどんな格好で固定されているのか、想像ができていないのかもしれない。そして、それがこれからどう自分を追い詰めていくものなのかも。
辛くないか、という向こうの声に「なんて返事したら伝わるかな?」などと呑気なことを言っているのがその証拠だ。この異常事態で鳴りを潜めていたカクの嗜虐心が、むくむくと頭をもたげてくる。
【よし、はじめるか。ワシにはウカの声が聞こえんから、ウカの身体の反応が頼りじゃ。よく見ておくようにするからの】
「えっ!?」
「ウカがちゃんと教えるんじゃぞ?」
「あ、え、っと……」
今さら恥じらってももう遅い。カクにはウカが足をもぞもぞさせ、そして、足が閉じられない、と今気づいただろうことが容易に想像できた。あちら側にはウカの下半身しかなく、こちらの声も聞こえないのだ。そんなとき、どこを見るというのか。
【いきなりこちらを触られるのは嫌じゃろ?しばらくはそっちのワシと楽しんでくれ】
「さすが、ワシ。優しいのう」
「……、それ、言ってて恥ずかしくな、ん……」
ベッドは頭側に大分スペースが確保されていた。とはいえ、ウカの腹から下は壁の向こうで、普通に添い寝するのは難しい。ウカも大分リラックスしたようなので、胡座をかいて座ると、そこに枕とウカの頭をのせた。そのまま身体を折り曲げて軽くキスをする。少々窮屈だが仕方ない。とりあえず、両耳を指で優しく撫でながら、ちゅ、ちゅ、と唇だけでなく、鼻先や、頬、瞼なんかにも唇を落としていく。
「ふふ、くすぐったい」
【こんなこと言うのは本当に心苦しいんじゃが……】
「ぁんッ!」
ウカが思わず出た己の嬌声に、慌てて口を手で覆った。だが、あちらの自分は容赦しない。
【ウカは乳首を弄られるのが好きみたいじゃぞ】
「……へえ?」
「なっ、うそ! ちがうッ!」
【すまんのう、じゃがここから出るためじゃし……】
はじめから女の正解を教えられるのはかなり腹が立つが、相手は自分だ。ここは素直にかけたジャケットを払い除け、露になったウカの胸へと手を伸ばす。寒さからか、期待からか、ウカのそれはぴんと上を向いて尖り、ふるふると微かに震えていた。人差し指の腹でそっと、微かに触れるくらいに、ゆっくり前後させる。
「ん……ッふ……」
「ほう、感度がいいのう。それなら……」
「ゃっ、だぁ……、い、あっん……っ!」
今度は少し強めの刺激、前後に何度も弾くように指を往復させる。案の定、ウカはちゃんとここで快感を得られるようだ。機械のように正確に、同じ速さ、同じ強さで指を動かしていく。先端は弾かれるほどに固さを増していき、ぴんぴんと指に跳ね返ってくる。
「ね……えっ、……や、ぃやぁっ! ぁ、ふっ……んっ!」
「嫌そうには見えんがのう」
【そろそろこちらもいいかのう】
あちらの声に一応手を止める。ウカも見えはしない壁の向こうを見つめていた。
【ほらあ。やっぱり乳首はよかったじゃろ?】
「やっ! ど、どこ見てんの!?」
【おっと! そんなに動くと顔にぶつかる!】
「ウカ、あっち側で見る場所なんぞ、ひとつしかないじゃろう?」
ウカの顔が真っ赤に染まり、せめてもの抵抗なのか目をぎゅっと瞑って顔を背けた。途端「ぁ……」と小さい声を漏らして身体を捩る。
「ほら、あっちのワシが何したんじゃ?」
「っ……、あ、足の間に……」
「足の間? もっと正確に説明できんのか?」
「ぅ……く、クリト、リスに……息を、かけられて……」
「へえ、それくらいでも、こんなに鳥肌立てとるのか」
「~~ッ!」
【せっかく手が四本、口は二つあるんじゃから、そっちのワシも休まず楽しんでくれ】
「あっちは半年先輩じゃしのう、こっちも早く追い付かんと」
言い終わるのを合図に、また両乳首を優しくつねるように摘まむと、親指と人差し指でくりくりと擦った。そうすると、ウカが甘く喘ぎながら口を開けるので、容赦なく舌を差し入れる。逃げる舌を舌で、乳首を指で、逃がすまいと追いかけて追い詰めていく。
舌を唇で捕らえて吸うと、背中がぐっとしなり、カクの指に乳首を押し付けてくるような格好になるのがたまらない。もちろん、それに応えるように指をひたすら動かす。親指と中指で両乳首の根本をぐっとつまみ、ぐりぐりとしながら、人差し指で先端をすりすりと擦るのがウカはお気に入りのようだ。深いキスをしながらそれをすると、くぐもった喘ぎ声をひたすら垂れ流した。だが、両手は身体の脇でシーツを掴むばかりで抵抗してこない。
「ふ、ここが気持ちいいなんて、どこで覚えたんじゃ?」
「~~~~ッ! い、言わ、ないで……!」
【聞いとる余裕はないかもしれんが、ワシも触るぞ】
「ぁああああああ゛あ゛ッ!!!」
「ああもう、あっちのターンか」
恐らく、一番敏感な突起をとうとう弄られ始めたのだろう。ウカはさきほどよりもずっと身体をしならせ、背中は弧を描いている。ウカが握りしめるシーツのひだが大きく、長くなった。ひとまず手も休めて、上からウカをじっくり眺める。
「ウカー、なにされとるんじゃー?」一応聞いてみる。
「ああっ! やっ! クリっ、を! あああっ、そん、なああっ!」
【びっくりするじゃろ? 忘れとるかもしれんが、こっち側のウカの身体は半年後の身体でなあ。その……半年間、弄りまくったんじゃ。ここも、中も。あ、もちろん乳首もな】
「おうおう、半年でどんなに成長したことか」
【じゃから、まあ……。そっちのウカにしたら、開発済みの身体を急にくっつけられとるようなもんかの? その……、感想は?】
「嘘、うそッ! ああ゛ぁ────ッ!!」
「見事なイきっぷりじゃのう……」
恋人が初夜もどきでここまで乱れるとは。不思議な部屋のドアはまだ開く気配はない。
◆
【ほらほら、休まず手と口を動かさんか。一生この部屋でいいのか?】
「すまんのう、まだドアも開かんようじゃし……」
「やあっ! ま、ってよお! ま、だっ! からだ、が、あああッ!」
絶頂を迎えてもあちらのワシは手を休めていないようで、ウカが身体をしならせてビクビクと痙攣して果ててもなお、突起への愛撫は続いていたようだ。不規則な痙攣に身体を任せるしかないウカはかわいそうで愛らしい。
胸の愛撫を再開すると、イったことでより敏感になっているのか、先程よりさらに喘ぎ声が大きくなった。顎の裏が見えるほどにのけぞっている。固くはりつめた乳首の固さは手遊びにちょうどよく、反応も見ずに好きにこねくりまわした。
「やああっ! も、無理ッッ! ゆるっ、してよおっ! あ、あ、あああっ!」
「ほら、今あっち側はどうなっとるんじゃ?」
「ゆびっ! ぁあっ! ゆびで! すり、すりっ、されっ、て、ぅああ゛!」
【じゃあそろそろウカの好きなやつ、はじめるかの】
「え……」
ウカが驚きで一瞬動かなくなったのも束の間、すぐにまた悲痛にも聞こえる声をあげ始めた。一生懸命身体を捩って、快楽を逃がそうとしているように見えるが、あちらは阻むものがない。むしろ、身体に教え込むように執拗に責められているだろう。自分なら絶対そうする。
「今度はどうしたんじゃ?」
「あああっ! した! したでぇっ…やぁあああっ!」
「へえ、舐め回されて吸い付かれてしゃぶられとるのか。そりゃいいのう」
「やぁああぁああ……あぁああああ……ぐり、ぐりしな、いでぇっ!」
【は、舐めやすくて最高じゃの】
「足は閉じられないんじゃもんなあ」
「あぁっ! ~~~~~~~~っ!!! カ、クうっ! たす、けてぇ!」
【ああこら、逃げたら終わらんじゃろ。それにしてもここまでいやらしく育つとは……。そっちのワシもこれから半年、ちゃんと励めよ】
「そんなによがられると、ちいっとばかし癪に障るのう」
ウカの絶叫を塞ぐように、開いた口に舌を突っ込む。荒々しい動きでも、ウカは拙くとも必死についてくるようになった。この数十分で。舌を吸いながら、今度は指先でひっかくように乳首をカリカリと弄んだ。跳ねる身体に翻弄されながらも、絶え間なく刺激を与え続けていく。
【ん? もしかしてイっとるのか? もう痙攣しすぎてよくわからんから、とりあえず続けるぞ】
「イったああああっ! またっ、あああっ! あ、あ、あ、イクイクイクっ!」
【ふ、腰が動いて……物足りんようじゃの。あ、乳首はちゃんと弄っとるじゃろうな? さぼるなよ。ウカは乳首を弄られながら、が一番大好きなんじゃ。そうじゃろ?】
「ウカ、そうなのか?」
「あ゛あッ! ちがッ、うぅああ゛! も、……ッゆ゛るじ、でっ」
【あ、せっかくだから舐めてやったらどうじゃ? ココを舐められながら乳首も舐められるなんて、今しかできんぞ】
「確かにのう」
「ああぁああっぁあ゛ぁッ! ぁ、な、なめるのッ! ゃ、だめッ! ィあっ!」
【ウカはのう、いやいやと首を振りながら、ワシの口にココを押し付けてくるのがまた、かわいいんじゃ。あ、ほら。よしよし、まだ止めんから安心せい】
片方は舌で、片方は指で、痙攣する身体を押さえつけながら、しつこくしつこく、快感にあえぎ浮かせているだろう壁の向こう側の腰を責めるかのように嬲る。乳輪は乳首の固さとは正反対にふわふわと捉えどころがなく、何度も舌が滑った。その度に舌先が乳首を掠め、ウカが甘い叫びで喉を震わせる。
ぶるぶると震え、跳ね回る突起と孔しかないあちら側にいる自分は今、何を考えているだろう。舐めれば、つつけば、吸ってしゃぶって弾けば、素直に反応する、抵抗もしない突起はさぞ虐めるのが楽しかろう。白い壁を見つめながら、こちらの突起も指と舌で思いつくまま弄くり倒す。
「んあああ゛ッ! ちく、びもぉ! あ、そこッも! とけぢゃう゛!」
「まだ蕩けとらんから安心せい」
固さを失わない乳首の存在を分からせるように舌先でぐりぐりと押し込むように舐めた。こちらのBGMは耳に心地よい。
◆
【水は飲ませてるか? さすがに少し疲れた】
「おっと、それもそうじゃの。すまんかったな」
「──ッ! ……ぁ、ッ! …………んッ……」
余韻が残っているのか、ウカは何もされていないのに小さく喘ぎながらぴくぴくと脈打っていた。からだ全体が大きな心臓のようだ。
部屋を見回すとドアのすぐ横に小さなチェストがあり、その上に水差しとコップが鎮座している。ぐったりとして身体を起こすのも儘ならないようなので、背中に腕を回し口移しで水を飲ませた。粘膜同士の触れあいにまた身体が疼くようで耐えるように、閉じていた瞼をぎゅっと瞑る。飲ませ終わると、ウカは大きく息を吸って、ゆっくり長く吐いた。
【もうそろそろの辛抱じゃ。指、入れるぞ】
「弄られながら、じゃったよな?いいもん見つけたぞ」
カクは先程、水差しが置いてあったチェストの引き出しから見つけた小瓶の栓を抜くと、その中身をウカの胸元に垂らした。
「つっ、めた……ぁッ……!」
「すまんすまん、いま馴染ませるからの」
手のひらで、満遍なくゆるゆると塗り広げると、適度な粘性を持った液体がウカの肌を覆っていった。手のひらを動かす度に、屹立したこりこりとした乳首の感触がまた心地よく、何度も往復させてしまう。
「ぁあっ! ぁ、あ、……ッ、~~ッ!!」
【お、ちゃんと乳首も虐めとるな。感心感心】
「ぃゃぁあああぁぁああッ! それだめッ!!!! っあ! またイクっ!」
「ウカ? 何されとるんじゃ?」
【おお、やっぱり外と中から同時に刺激されるとたまらんか。今日は乳首までセットじゃからのう】
「へえ、道理で。気持ち良さそうじゃもんなあ」
「──ッ! んぅ……ッ! あッ! ~~~~~ッ!!」
最早ろくに声も出せず、細い首をさらけだしながら絶え間なく痙攣しているウカの滑らかな肌に指を滑らせながら、カクはのんびりと言った。指を広げ、ぷりゅぷりゅと逃げていく胸の小さな尖りを五本の指で順に撫でていく。そんな単調な刺激にもウカは律儀に喘いだ。飽きてきたらぬるぬるした指でそれを捕まえてみようとするが、滑ってうまくいかず、何度も何度もしごくようになってしまう。
あちらはあちらで、両手を使って外と中からクリトリスを苛めぬいているのだろう。あちらの突起は一つだが、こちらは二つだ。両方を、平等に、丹念に、公平に、愛撫する。
「ゃああっ! む゛ねはっ、ちく、びっ、や゛めでっ! も、むりっ!」
【すまんのう、条件が曖昧でな。どこまでやれば十分なのかわからんのじゃ。だから手を休めるなよ】
「じゃと。すまんのう、聞こえたか?」
「い゛ッでる、のにぃ゛! あ゛っ、あ、ぁっ、またっ!」
【ウカ、どんなに乱れても大丈夫じゃからな。その日からのワシはもう、すごいぞ。安心して、気持ちいいことだけ考えとれ】
「そうじゃそうじゃ。明日から楽しみじゃのう」
「へ、へん、じゃなッ、い?」
「かわいいのう」
ウカの身体がまた総毛立って、顎ががくっと上を向いた。玩んでいた乳首がまたぴんと張りつめて主張を増す。
【総仕上げといくか】
◆
「ウカ、実況。できるか?」
もう快楽を与えたいといった意思がなくとも、ウカの身体はただ触るだけで、勝手に快感を得るようになっていたので、カクも柔らかな双丘を好き勝手揉みしだくことにした。たまに意図せず乳首が刺激されるようで、ウカが身体を捩る。あちら側の腰はさぞ艶かしく揺れているだろうな、と想像して、少しだけ嫉妬のようなイラつきを覚えた。
「ぅ、あ……、あ、はい、って、あぁ……ゃ……」
「痛くはないか?」
「ぅ、ん。だ、いじょぶ……あ、んッ、あ、ゆっく、り……でた、り、はい、って……」
あちらは半年後、ということだったが、心配は心配だった。仮に、痛いと泣き叫ばれても、こちらの自分にはあちらの自分を止める術がない。ウカは慣れない異物の圧迫感に戸惑ってはいるようだが、苦しくはないようだ。様子を伝える言葉の端々に甘い疼きが混じる。
「~~~~ッ! た、ぶん、はい……った……?
【ずっとな、もどかしかったんじゃ】
「っああぁああ! ゃ、いじ、っちゃぁあっ!」
「あっちは容赦ないのう」
カクもまた、意思をもった戯れを再開する。やっていなかったことはなかったかと、ひとつひとつ確認するように、丁寧に弄る。
【ウカの好きなこと、いっぺんにやるにはどうしても手が足りんくてのう】
【今日、ようやく叶うぞ】
「ほら、どうしたんじゃ?」
「あっ、はいっ、た、ままぁっ、いじられ、てっ……~~~~ッ!」
「それで?」
「ッんぅ! な、かが、ぎゅ、ってする、と、あ、カクの、が」
【あぁ……。そっちのワシには悪いが、とんでもなくいいぞ】
「羨ましいのう。そんなに締め付けとるのか」
「だ、ってぇ! ずっ、と弄るからッ!」
【いつまでもこうしていたいが、それも無理じゃし仕方ない】
「~~ッ! ぅあ゛ッ! ああ゛ッ! ぁあ゛あっ!」
あちらはピストンし始めたようだ。規則正しいリズムでウカから声が漏れ出て、身体が揺れる。自分にできるのは、あちらの自分の言う通り、手を休めないことだけだ。ここまで来て条件を満たせなかったとなっては元も子もない。開きっぱなしのウカの口に、また舌を伸ばす。つい数十分前まで、啄むようなキスしか知らなかったウカに。
ウカは胸に伸びているカクの腕をぎゅっと掴んできた。抵抗ではなく、何か触れていたかったのだろう。身体が跳ねるのに合わせて、手に力が入る。
【ウカもいいんじゃな、わかるぞ】
唇と舌を離して、ウカの顔をじっとみる。
「はあ、たまらん顔じゃなあ」
気持ちよくて気持ちよくて仕方ない、といった顔だ。
「せっかくじゃから、よく見ておこうかの」
突かれている最中のウカの顔なんぞ、こんなにゆっくり見れんじゃろう? と言うと、ウカはぼうっとしているだろう頭でもなんとか羞恥を覚え、顔を背ける。今更だと苦笑しながら、寂しいのう、と言ってみるだけで、ウカはゆっくりと、だが、すぐにカクをまっすぐ見つめた。
「半年でこんなにいやらしくなるんじゃな? 明日からしっかり励まんと」
「それにしてもウカのここは全然萎えんの、ずっとカチカチじゃ」
「ほれ? 自分でもわかるじゃろ? 弄りやすくていいのう」
「弄って弄って、もっと大きくしようなあ」
「ワシしか見んのだからいいじゃろ」
「あっち側も楽しみじゃなあ。まずは明日早速励むからの」
突かれている喘ぎまくっているウカと見つめあいながら、乳首を捏ねながら、言葉でも責め立てていく。ウカは言葉を理解する度に、恥ずかしそうに視線を背け、またこちらに戻す、というのを繰り返した。たまに顎が見えるほど背中をしならせるのでそのときも視線は外れた。
「ぁああああっ! んんんんんッぁあああっ!」
【ああもう! 残念じゃなあ!】
どれくらいそうしていたかわからないが、ウカの叫びのような嬌声のすぐあと、あちらから自分の切羽詰まった声が聞こえてきた。恐らく双方果てたのだろう。自分の吐精時の声なんぞわざわざ聞きたくもないが仕方ない。ウカははあはあと肩で息をしているようだが、その他異常はなさそうだった。 部屋の様子が変わらないことに不安を覚えながら、取り急ぎ、シーツの乾いた部分でウカの身体を拭いてやっていると向こうから声が聞こえた。
【納得いかんが、言うても仕方ない】
ドアの開く音と訝しむ自分の声。
【満足しなかったのはワシか?】
一転、暗転。
◆
カクは意識を取り戻した、と知覚してすぐさま飛び起きた。素早く回りを見渡して、ここがウカの部屋で、ウカのベッドの上とわかる。
「あ、カク。どしたの? なんか怖い夢でも見た?」
「ウカ!?」
「はいっ! なに?!」
ベッドから飛び起きるとキッチンに立つウカに駆け寄る。ウカは見た限りなんともなさそうだ。カレンダーと時計を見て、そうだ、初めてウカの部屋に遊びに来て、そしたらあの部屋にいたんだ、ということを思い出した。
「ウカは、なんともないのか?」
「え? ああ、私も疲れてたのかな? さっきまでベッドでカクと寝てたんだけど……」
「それだけか? 身体は……」
「ぁんッ……!」
言いながら、ウカの頬に手を添えるとウカが小さく喘いで、慌てて手で口を覆っている。び、びっくりしただけ! と顔を背けるので、指先で耳の後ろを、つ、となぞるとまた身体をびくつかせた。
「ゃ、ちょ、っと、起きて、から、変ッ、なの」
「変? なにが……」
「ん……、その、おなか、が、あついっていうか」
もじもじと足を擦り合わせるウカを抱き寄せて、まだしたことのないはずの深い口づけをしてみる。するとウカは先ほどあの部屋で覚えたばかりの舌使いでカクの舌を追いかけてきた。ちゅ、と水音をたてて、顔を離すと、物足りない、というのが自分でも不思議そうな複雑な顔をしたウカがいた。
「か、カクッ! な、なんで……」
記憶はなくとも、身体が覚えている。
「まずは、半年か」
カクは抱き寄せるだけで「んんッ!」と喘ぐ恋人の頭を撫で、まずは戸惑いつつも身体を震わせている恋人をベッドに連れていくことにする。
おしまい
時の狭間で #カク
カクはドアを開けて、閉めた。それだけで、またこの部屋にいた。半年程前にも閉じ込められたこの部屋に。異なるのは、今度は『こちら側』だ、ということ。カクは、ただ白い壁と目の前の非日常を認識してすぐに、半年前、自分の身に起きた信じられない出来事を思い出して、背筋がうっすらとした歓喜で震えた。そう、今度はこちら側なのだ。
長方形の、というより、正方形の部屋を真ん中で区切ったような、窓のない、ただただ白く無機質な壁ばかりの部屋だった。ドアは自分の後ろにあるが、もちろん開かない。これは半年前と同じだ。違うのは、目の前の壁から突き出しているとしか言えないベッドには、一糸纏わぬ女性の腹から下が横たわっている。今日が、本当にあの『半年前の今日』なら、彼女はもう少しで目を覚ます。
あちら側にいるもう一人の男が、こちら側から見えない壁の向こうの彼女の半身を揺さぶることを、カクは知っていた。なぜなら、半年前の自分がこの部屋で、あちら側の彼女にそうしたから。
こちら側は、あちら側の半年先の未来。あちら側は、こちら側の半年前の過去。この部屋は、違う時間軸が壁で隔てられつつ、同じ時が流れている。なぜとか、どうしてとか、そんなものは、起こってしまっている以上どうしようもない。ここですべきことはただひとつ。
この状況を楽しみぬいて、この部屋を出る。それだけだ。
◆
あちらで立てる音や声はこちらには聞こえない。だが、こちらで立てる音や、自分の声はあちらに聞こえるはずだ。半年前はそうだった。音を立てないようにベッドに近づいて、静かに腰かけた。ゆっくり腰かけるとスプリングが音もなく沈む。気休めだが、ジャケットを脱いで横たわるウカの下腹部にかけてやる。
少し待っていると、ぴくりと足が動いて、間もなくすごい勢いで足が折り畳まれると、がたがたと震えだした。膝がごつごつと壁に当たってしまっている。無理もない、いきなりこんな部屋で目が覚めて、身動きがとれない、逃げられない状況で、半身が壁の向こうとあっては、大の男でも恐ろしいだろう。
体を少し捻るくらいは出来るようだが、それで体が壁から抜けるなんてことはないし、捻ったところで隙間が出来て、向こうが覗けるなんてこともない。うつ伏せになる、といったこともやっぱり無理なようだ。半年前と何一つ変わらないことを確かめて、カクは壁の向こうに話しかける。
「怖いのはわかるが落ち着いてくれ、ウカ」
がたっ、とまた膝が壁に当たって、震えが止まった。やはりあちらの声はさっぱり聞こえないが、こちらの声は聞こえているようだ。
「何が起きてるかワシにもさっぱりじゃが、ひとまずな。この状況から脱するには、そっちのワシとウカの協力が不可欠なんじゃ。辛いと思うが……耐えてくれ」
足は壁際に折り畳まれたままだが、自分が知っていることを簡単に説明する。
自分はそちら側の自分の半年先の未来の自分であること、つまり半年前にこの部屋のそちら側をウカと一緒に経験していること、その経験上この部屋から出るにはある条件を満たす必要があること、その条件はこちら側でしか知ることができずそちらに教えられないこと、そちらの音は全く聞こえないこと、そして、
「条件を満たすにはその……、肌を、重ねる……まあその、セックス、する必要があっての」
途端、静かだったウカの足がばたついた。無理もない。半年前のウカとはまだ付き合いはじめたばかりで、そうした行為もまさにこれから、といったところだったのだ。だがカクは知っていた。半年前、この部屋で乱れに乱れたウカを。そしてその理由を。
「おうおう、そうじゃの。怖いのう。おい、そっちのワシはちゃんとそばにいて抱いてやっとろうな? ウカが怯えてかわいそうじゃろ」
半年前の自分はもちろん側にいたはずだが一応声をかける。ウカの足は動かなくなった。さっきまで短い感覚で上下していた腹も少しずつ落ち着いてきている。あちらの反応がわからないまま壁に向かって話し続けるのは骨が折れるが仕方ない。半年前、あちら側で聞いている台詞のはずだが、さすがに細部までは覚えていなかった。正直、目の前のウカに気を取られてばかりだったのだ。
「その……本当に不思議なんじゃが、こっち側にあるウカの身体は、半年後のウカの身体なんじゃ。だから、まあその」
そこで言葉を切って、「少し触るぞ」と声をかけなら、折り畳まれたままのウカの足をそっとなぜる。びく、と震えるが暴れる様子はない。
「誓って傷つけることはないし、その、今日のは半年後の出来事ってことで、ノーカンでどうじゃろ?」
ウカが今度は思いっきり足をばたつかせたが、怯えは大分なくなったように思う。どちらかというと、駄々をこねるというか、どうしようもない怒りを発散させるような動きで、激しい動きがかえって安心した。芯から怯えているようなら、自分の言葉は聞こえないと言う見えない相手に、急所を晒して逃げられない、という状態では抵抗すら恐ろしいだろう。あちらの自分もうまくやったらしい。無駄と悟ったのか、疲れたのか、満足したのか、とにかく足の動きが止まる。先ほどは折り畳まれていたが、今は伸ばしたままだらりとベッドになげうっている。ジャケットは吹っ飛ばされてしまった。
ここからが本番だ。
◆
「じゃあの、ちょっと準備するから。触るぞ。こっちはなるべく声をかけるようにするからの」
カクはそう言ってウカの膝を立て、そのまま上半身側に倒すように持ち上げた。もちろん、ウカの秘所が簡単に露になるが、ウカは意外にも抵抗しなかった。触れたときだけ、急に触られて驚いた、くらいの反応を見せただけだ。それなら、とカクもてきぱきとウカの膝裏に壁から伸びている拘束具のようなベルトを通して固定する。辛くないか、と声をかけると、ぱた、ぱたと爪先が動いた。暴れるような動きではないから、大丈夫ということなのだろう。
「よし、はじめるか。ワシにはウカの声が聞こえんから、ウカの身体の反応が頼りじゃ。よく見ておくようにするからの」
辱しめようとして言ったわけではないのだが、ウカの腰がぴくりと跳ねる。「よく見る」と言ったのが羞恥を煽ったのか、今さらもぞもぞと足を閉じようとしているが、先ほどベルトで両足を抱えるような格好で固定してしまったからベルトを支える壁側の金具がカチャカチャと虚しく鳴るばかりだ。
ここにきてようやく、整った、とカクは唇をなめた。幸いウカはなんとかこの状況を受け入れてくれた。この部屋を出るにはウカが怯えたままなのが一番まずい。時間が経てば経つほど焦り、リラックスからはほど遠くなり、結果出ることが叶わないといった事態だけは避けたかった。半年前の自分は出られたが、未来は変わる。過去出られたからといって、今回もそうとは限らないのではないだろうか。そのあたりのことはよくわからない。
ただ、今回もきっと整った。あとはこの状況を楽しむだけ。
ひとまずカクは「いきなりこちらを触られるのは嫌じゃろ?しばらくはそっちのワシと楽しんでくれ」と声をかけてみた。すると、すぐ体がぴくりと動いた。カクはひとまず、ウカの足の間に体をいれ胡座で座ると、ウカの上下する腹を眺める。時おり、痙攣するように波打つのはキスでもされているのか。腰がこちらを誘うように揺れる。ただ、この動きからすると、おそらくまだ唇を啄むようなフレンチ・キス程度なのだろう。焦るわけではないが、このペースは心もとない。
「こんなこと言うのは本当に心苦しいんじゃが……」
言いながら、ウカの太もも裏を指ですーっとなぞった。声をかけなかったせいが、大きく足が跳ねてまた金具がガチャッと鳴った。
「ウカは乳首を弄られるのが好きみたいじゃぞ」
瞬間、抗議のように足がばたつく。すまんのう、じゃがここから出るためじゃし、と尤もらしいことをとりあえず言っておく。
あちらでどんなやりとりがあったか覚えてはいないが、ばたついていた足がまたびくん、と跳ねるようになった。腰もさっきより激しく揺れる。時おり、何かに耐えるように背中が弓なりにぴんとしなって、少しすると脱力する、というのを何度も繰り返している。腹の動きもさっきより複雑だ。
「そろそろこちらもいいかのう」
聞いたところであちらに自分を止める術はないが、信頼を失っても困るので律儀に声をかける。跳ねていた体が、途端しん、と静まったので肯定と受け取った。ウカの股の間に顔がくるように寝そべると当たり前だが、潤いを帯びはじめている割れ目がよく見えた。
「ほらあ。やっぱり乳首はよかったじゃろ?」
あくまで報告ですというような口調で、だいぶ濡れてるのうと続けると、足がまたばたつくので、
「おっと! そんなに動くと顔にぶつかる!」
と言って、自分の顔がいまウカの身体のどこにあるのか、意識させた。素直なウカはすぐに静かになるが足が羞恥でふるふると震えているのがよくわかる。ふう、と息をかけると腰がもぞもぞと動いた。
「せっかく手が四本、口は二つあるんじゃから、そっちのワシも休まず楽しんでくれ」
と声をかけると、恐らくまた指で両乳首を弄りはじめたのだろう。この腹の動きとヒクつきだと深い口づけも合わせてしているかもしれない。もうウカの大好きな弄られ方を探り当てたのか、と自分のくせに少し感心した。それを背後からやるのがもっといいはずなんじゃが、とも思ったが、いまのウカの体制では難しいのだろう。 あちらの自分とウカはなかなか楽しんでいるようだ。こちらはさきほど指で太ももをなぞったくらいだが、目の前のまだ触れていない割れ目はぴったりと閉じていて、それなのに隙間からとろとろとしたものが堪えきれず溢れている。視線を少し上に向ければ、まだ何もしていないというのに、膨らんだ蕾が勃ち上がっているのが見えた。腹は相変わらず激しく上下しており、呼吸も荒く、それでもなお、快楽を貪っているのだろう。
「聞いとる余裕はないかもしれんが、ワシも触るぞ」
言い終わらないうちに、こちら側で一番敏感であろう突起をつぷ、と人差し指で押した。瞬間、ウカの身体が今日一番のしなりをみせる。こちらは足を空に固定しているから、尻まで浮いてしまっているが、人差し指は離さない。強くなりすぎないよう、すりすりとゆっくり上下に擦るように動かすと尻が浮きっぱなしになる。とめどなく溢れてくる蜜を掬って擦り付けるようにするといつまでもぬるぬると止まらない。爪先がぴんとまっすぐになっていて、電流のような快感が爪先まで走り抜けているようだ。
「びっくりするじゃろ? 忘れとるかもしれんが、こっち側のの身体は半年後の身体でなあ。その……半年間、弄りまくったんじゃ。ここも、中も」
あ、もちろん乳首もな、と付け足す。
「じゃから、まあ……。そっちのウカにしたら、開発済みの身体を急にくっつけられとるようなもんかの? その……、感想は?」
聞くまでもない。
人差し指を少しだけ強く押し付けたら、びくん!と一際大きく身体が跳ね上がって、あっけなく痙攣しはじめた。半年前は、どんな声で鳴いていたっけ。あちら側で乱れていたウカを思い出して補完する。
『嘘、うそッ! ああ゛ぁ────ッ!!』
やっぱりこの仕様はくそじゃの。なんであっちの声は聞こえないんじゃ。
◆
「ほらほら、休まず手と口を動かさんか。一生この部屋でいいのか?」
あちら側で、このまま続けていいものか逡巡している自分に半ば脅迫のような言葉を発してあげる。この部屋から出られる条件を知らない以上、こちら側のワシに従うしかないのは知っている。大義名分を得たとばかりに、すまんのう、なんて言いながら、楽しむ自分も半年前のことだ、知っている。
あちら側ではまた乳首への愛撫が再開されたようだ。陰核からの刺激と相まって、先ほどから尻が浮きっぱなしだ。拘束具の金具も五月蝿いほどにガチャガチャと音を立てている。
「じゃあそろそろウカの好きなやつ、はじめるかの」
一瞬、驚きで動かなくなった腰を両手でとらえ、膨らむばかりの花芯を、あむ、と唇に含む。そして舌先で何度も弾いた。快感を逃がそうとする腰をしっかりと押さえつけ、舌先でぐりぐりと押し付けるようにしながら何度も往復させる。ぷりゅぷりゅと逃げる突起を唇で押さえ、ひたすら虐め抜いていく。両手で阻まれない、足で抵抗されない。出来ることは腰を揺らすくらい。その腰も今両手で拘束している。
「は、舐めやすくて最高じゃの」
楽しくて、合間にひたすら実況を挟んだ。
「ああこら、逃げたら終わらんじゃろ」
「それにしてもここまでいやらしく育つとは……。そっちのワシもこれから半年、ちゃんと励めよ」
「ん? もしかしてイっとるのか? もう痙攣しすぎてよくわからんから、とりあえず続けるぞ」
「ふ、腰が動いて……物足りんようじゃの」
「乳首はちゃんと弄っとるじゃろうな? さぼるなよ。ウカは乳首を弄られながら、が一番大好きなんじゃ。そうじゃろ?」
「あ、せっかくだから舐めてやったらどうじゃ? ココを舐められながら乳首も舐められるなんて、今しかできんぞ」
「ウカはのう、いやいやと首を振りながら、ワシの口にココを押し付けてくるのがまた、かわいいんじゃ。あ、ほら。よしよし、まだ止めんから安心せい」
『あ゛あッ! ちがッ、うぅああ゛!』
あちら側で、意味をなさない否定の言葉を、叫びのような喘ぎ声と共に必死で吐きながら、汗と涙と唾液でどろどろになっているウカを思い出して、また舌が止まらなくなる。もっと、もっと。
『んあああ゛ッ! ちく、びもぉ! あ、そこッも! とけぢゃう゛!』
幸い、こちらに叫びは聞こえない。目の前の突起と孔とを見ていればいいだけだ。
◆
「水は飲ませてるか?」
さすがに少し疲れた、と口を離す。口を離してもウカの身体はびくん、びくん、と跳ね続けていて、少しだけ胸が痛む。だが、後ろのドアはまだ開かないままだ。
ウカの方を見やると、少しだけ腹がゆっくり上下していた。水でも飲んでいるのだろう。飲み終わり落ち着くまで待つことにする。ただ、あまり間を空けるとせっかく高めた性感が無に帰してしまう。わざと、ギシと音を立ててウカの足の間で胡座をかく。ウカの爪先がぴく、と揺れ動いた。
「もうそろそろの辛抱じゃ。指、入れるぞ」
ぴっちりと閉じていた割れ目を右手の人差し指と中指でぐっと割り開くと紅いクレバスがのぞいた。肉壁がうねうねと蠢いているのがわかる。そのまま左手の中指を差し入れると、待っていましたとばかりに吸い付いてきて、思わず笑ってしまう。
中指を根本まで沈めると、動かしてもいないのに、きゅ、きゅ、と収縮した。
「お、ちゃんと乳首も虐めとるな。感心感心」
それなら、と右手の親指をさっきまで舌でこねくりまわしていた突起に添える。勃ちあがったその小さな肉芽を下から上にゆっくりなぞりあげると、足がまたびんっ、と飛び上がり、中はぐにゅぐにゅと蠢き、指がどんどん奥へを誘われていく。この状態の蜜壺に、これから己の肉棒を突き立てるのだ。想像するだけで射精してしまいそうだった。
なんとか堪えて、入れたままの中指を少し折り曲げる。そうして、クリトリスの裏側あたりを擦るようにすると、ウカの身体がまた反り返ってそのままになった。足先までぴんと力が入っているようだ。
「おお、やっぱり外と中から同時に刺激されるとたまらんか。今日は乳首までセットじゃからのう」
あちら側のウカが見えないと、どうしても呑気な感想になってしまうが、中に入れている指は中指だけだと負けそうで、人差し指も追加した。ウカの身体の痙攣につられないよう、あくまで機械のように、一定のリズムと強さで刺激を与えていく。達してるかどうかはもう本当にわからない。
『い゛ッでる、のにぃ゛!』
記憶の中のウカがそんなことを言っていた気もするが、最早どのタイミングだったかなぞ、覚えていない。
「すまんのう、条件が曖昧でな。どこまでやれば十分なのかわからんのじゃ」
だから手を休めるなよ、と向こうの自分を牽制する。
「ウカ、どんなに乱れても大丈夫じゃからな。安心して、気持ちいいことだけ考えとれ」
言うとまた、陸にあがった魚のようにびくんびくんと腰が跳ねた。快楽に抗うことを諦めたのか、今日はじめて、ウカの身体が弛緩している気がする。指ももうふやけてしまった。自分もそろそろ限界だ。
「総仕上げといくか」
カクはベルトに手をかける。
◆
ウカの花弁はむっちりとしていて、先端をぴと、とつけるだけで、しっとりと気持ちが良かった。今すぐ最奥まで突き立てたい気持ちを微かに残った理性で御する。カリ首を入り口にひっかけるようにして何度も前後させるとたまらない。それだけでぬらぬらと愛液がまぶされて、どんどん滑りがよくなっていく。
「ずっとな、もどかしかったんじゃ」
腰をゆっくり進めて、また少し戻す、というのを繰り返しながら、割れ目の上でまだ主張を続ける突起を摘まんだ。親指と人差し指でくりくりと弄ると、熱い肉がどんどんぐずぐず溶けるようで、でも、決して離すまい、としがみついてくる。
「ウカの好きなこと、いっぺんにやるにはどうしても手が足りんくてのう」
「今日、ようやく叶うぞ」
最奥にたどりついた。まだ動かない。まずは、熱い己を突き立てられながら、乳首とクリトリスを弄られ、こねられ、摘ままれ、弾かれ、嬲られるウカの収縮をゆっくり楽しむ。 ウカの膣は動いていないのにきゅ、きゅ、と献身的にカク自身を揉みしだき、時おり、ぎゅううと締め付けるかと思うと、びくびくっと痙攣する。痙攣しながらまたきゅきゅ、と収縮しはじめる。果てた膣の動きの複雑さに感動した。
濡れて柔らかく、でも隙間なく己を包む肉と、そこにぴったりと収まる、つるっとしたモノ。おさまりが完璧だった。
「あぁ……。そっちのワシには悪いが、とんでもなくいいぞ」
どうしても言っておきたかった感想に反応してまたきゅっ、と締まる。
『だ、ってぇ! ずっ、と弄るからッ!』
「いつまでもこうしていたいが、それも無理じゃし仕方ない」
カクは腰をゆっくり前後に動かしはじめる。もう複雑な動きは出来ないと、クリトリスには手のひらを添えておくだけにした。これで動く度に勝手に刺激が伝わるだろう。
これまではウカの表情や声で、いいのか、よくないのか、を確かめていたが、今はその術がない。繋がっているここだけが頼りだ。だが、情報の少ない今の方がぐっとわかりやすくなった気がする。
「ウカもいいんじゃな、わかるぞ」
自分が黙ると、ぐちゅ、ぐちゅ、とした水音と、パンパン、と腰を打ち付ける音だけが響く。いつもはウカにかき消される自分の呼吸も、はあはあと荒くなっているのがわかった。自分の汗が、うにゅうにゅと波打つウカの腹に落ちる。
滑りが良すぎて、どこにもひっかからずに、腰がパンと音を立てたところで止まる。それを繰り返しながら、半年前、自分には見えない壁の向こうでピストンされ、開きっぱなしの口で喘ぐウカの表情と、そのウカの固く尖りきった乳首をひたすら指でこね、カリカリとひかっきながら、開いた口に舌を差し入れた自分を思い出した。今もひたすらに、止まることなく弄られているのだろう。早く終わらせてあげたい、でも、目の前のウカをひたすら貪りたい。相反する気持ちでわけもわからないまま、とにかく胸の飾りをこね回した。いくら弄んでも、むしろ、弄くり倒すほど、固さを増していった気がする。 あちら側も、よかった。快楽でぐちゃぐちゃになったウカの表情を思い出すと、ぞくりとして、急に快感がせり上がってきた。まだ終わりにしたくない、と腰を止めたくても、もううまくいかない。
「ああもう! 残念じゃなあ!」
言うと、自身が一層膨らんで、弾けた。たまりにたまった欲情をどくん、どくん、と放出する。それを抑え込むかのようにウカの膣がぎゅうううっと締まるが、ふっと弛緩したかと思うと、またびくびくと収縮をはじめる。萎み始めた己がやわやわと弄ばれるようだった。
少しの間、萎えきった自身を抜くこともせずに放心していると、後ろからカチャリと音がして、ギィと軋む音が続く。
「納得いかんが、言うても仕方ない」
ウカの股から、縮みきった自分をずるりと抜いて、シーツの乾いた部分で乱暴に拭った。名残惜しく思って、ウカの太ももを撫でるが、反応はなかった。半年前、ウカが気を失ってしまったことを思い出す。しょうがなく、脱いだ服を着直し、服の乱れを整える。飛んでいったジャケットは、ウカの身体にかけていくことにした。
ドアノブに手をかけて、ベッドの上に掲示されていた条件を見る。
【双方が性的に満足すること】
「満足しなかったのはワシか?」
おしまい
時の狭間で・あちら側
カクはドアを開けて、閉めた。それだけで、またこの部屋にいた。半年程前にも閉じ込められたこの部屋に。異なるのは、今度は『こちら側』だ、ということ。カクは、ただ白い壁と目の前の非日常を認識してすぐに、半年前、自分の身に起きた信じられない出来事を思い出して、背筋がうっすらとした歓喜で震えた。そう、今度はこちら側なのだ。
長方形の、というより、正方形の部屋を真ん中で区切ったような、窓のない、ただただ白く無機質な壁ばかりの部屋だった。ドアは自分の後ろにあるが、もちろん開かない。これは半年前と同じだ。違うのは、目の前の壁から突き出しているとしか言えないベッドには、一糸纏わぬ女性の腹から下が横たわっている。今日が、本当にあの『半年前の今日』なら、彼女はもう少しで目を覚ます。
あちら側にいるもう一人の男が、こちら側から見えない壁の向こうの彼女の半身を揺さぶることを、カクは知っていた。なぜなら、半年前の自分がこの部屋で、あちら側の彼女にそうしたから。
こちら側は、あちら側の半年先の未来。あちら側は、こちら側の半年前の過去。この部屋は、違う時間軸が壁で隔てられつつ、同じ時が流れている。なぜとか、どうしてとか、そんなものは、起こってしまっている以上どうしようもない。ここですべきことはただひとつ。
この状況を楽しみぬいて、この部屋を出る。それだけだ。
◆
あちらで立てる音や声はこちらには聞こえない。だが、こちらで立てる音や、自分の声はあちらに聞こえるはずだ。半年前はそうだった。音を立てないようにベッドに近づいて、静かに腰かけた。ゆっくり腰かけるとスプリングが音もなく沈む。気休めだが、ジャケットを脱いで横たわるウカの下腹部にかけてやる。
少し待っていると、ぴくりと足が動いて、間もなくすごい勢いで足が折り畳まれると、がたがたと震えだした。膝がごつごつと壁に当たってしまっている。無理もない、いきなりこんな部屋で目が覚めて、身動きがとれない、逃げられない状況で、半身が壁の向こうとあっては、大の男でも恐ろしいだろう。
体を少し捻るくらいは出来るようだが、それで体が壁から抜けるなんてことはないし、捻ったところで隙間が出来て、向こうが覗けるなんてこともない。うつ伏せになる、といったこともやっぱり無理なようだ。半年前と何一つ変わらないことを確かめて、カクは壁の向こうに話しかける。
「怖いのはわかるが落ち着いてくれ、ウカ」
がたっ、とまた膝が壁に当たって、震えが止まった。やはりあちらの声はさっぱり聞こえないが、こちらの声は聞こえているようだ。
「何が起きてるかワシにもさっぱりじゃが、ひとまずな。この状況から脱するには、そっちのワシとウカの協力が不可欠なんじゃ。辛いと思うが……耐えてくれ」
足は壁際に折り畳まれたままだが、自分が知っていることを簡単に説明する。
自分はそちら側の自分の半年先の未来の自分であること、つまり半年前にこの部屋のそちら側をウカと一緒に経験していること、その経験上この部屋から出るにはある条件を満たす必要があること、その条件はこちら側でしか知ることができずそちらに教えられないこと、そちらの音は全く聞こえないこと、そして、
「条件を満たすにはその……、肌を、重ねる……まあその、セックス、する必要があっての」
途端、静かだったウカの足がばたついた。無理もない。半年前のウカとはまだ付き合いはじめたばかりで、そうした行為もまさにこれから、といったところだったのだ。だがカクは知っていた。半年前、この部屋で乱れに乱れたウカを。そしてその理由を。
「おうおう、そうじゃの。怖いのう。おい、そっちのワシはちゃんとそばにいて抱いてやっとろうな? ウカが怯えてかわいそうじゃろ」
半年前の自分はもちろん側にいたはずだが一応声をかける。ウカの足は動かなくなった。さっきまで短い感覚で上下していた腹も少しずつ落ち着いてきている。あちらの反応がわからないまま壁に向かって話し続けるのは骨が折れるが仕方ない。半年前、あちら側で聞いている台詞のはずだが、さすがに細部までは覚えていなかった。正直、目の前のウカに気を取られてばかりだったのだ。
「その……本当に不思議なんじゃが、こっち側にあるウカの身体は、半年後のウカの身体なんじゃ。だから、まあその」
そこで言葉を切って、「少し触るぞ」と声をかけなら、折り畳まれたままのウカの足をそっとなぜる。びく、と震えるが暴れる様子はない。
「誓って傷つけることはないし、その、今日のは半年後の出来事ってことで、ノーカンでどうじゃろ?」
ウカが今度は思いっきり足をばたつかせたが、怯えは大分なくなったように思う。どちらかというと、駄々をこねるというか、どうしようもない怒りを発散させるような動きで、激しい動きがかえって安心した。芯から怯えているようなら、自分の言葉は聞こえないと言う見えない相手に、急所を晒して逃げられない、という状態では抵抗すら恐ろしいだろう。あちらの自分もうまくやったらしい。無駄と悟ったのか、疲れたのか、満足したのか、とにかく足の動きが止まる。先ほどは折り畳まれていたが、今は伸ばしたままだらりとベッドになげうっている。ジャケットは吹っ飛ばされてしまった。
ここからが本番だ。
◆
「じゃあの、ちょっと準備するから。触るぞ。こっちはなるべく声をかけるようにするからの」
カクはそう言ってウカの膝を立て、そのまま上半身側に倒すように持ち上げた。もちろん、ウカの秘所が簡単に露になるが、ウカは意外にも抵抗しなかった。触れたときだけ、急に触られて驚いた、くらいの反応を見せただけだ。それなら、とカクもてきぱきとウカの膝裏に壁から伸びている拘束具のようなベルトを通して固定する。辛くないか、と声をかけると、ぱた、ぱたと爪先が動いた。暴れるような動きではないから、大丈夫ということなのだろう。
「よし、はじめるか。ワシにはウカの声が聞こえんから、ウカの身体の反応が頼りじゃ。よく見ておくようにするからの」
辱しめようとして言ったわけではないのだが、ウカの腰がぴくりと跳ねる。「よく見る」と言ったのが羞恥を煽ったのか、今さらもぞもぞと足を閉じようとしているが、先ほどベルトで両足を抱えるような格好で固定してしまったからベルトを支える壁側の金具がカチャカチャと虚しく鳴るばかりだ。
ここにきてようやく、整った、とカクは唇をなめた。幸いウカはなんとかこの状況を受け入れてくれた。この部屋を出るにはウカが怯えたままなのが一番まずい。時間が経てば経つほど焦り、リラックスからはほど遠くなり、結果出ることが叶わないといった事態だけは避けたかった。半年前の自分は出られたが、未来は変わる。過去出られたからといって、今回もそうとは限らないのではないだろうか。そのあたりのことはよくわからない。
ただ、今回もきっと整った。あとはこの状況を楽しむだけ。
ひとまずカクは「いきなりこちらを触られるのは嫌じゃろ?しばらくはそっちのワシと楽しんでくれ」と声をかけてみた。すると、すぐ体がぴくりと動いた。カクはひとまず、ウカの足の間に体をいれ胡座で座ると、ウカの上下する腹を眺める。時おり、痙攣するように波打つのはキスでもされているのか。腰がこちらを誘うように揺れる。ただ、この動きからすると、おそらくまだ唇を啄むようなフレンチ・キス程度なのだろう。焦るわけではないが、このペースは心もとない。
「こんなこと言うのは本当に心苦しいんじゃが……」
言いながら、ウカの太もも裏を指ですーっとなぞった。声をかけなかったせいが、大きく足が跳ねてまた金具がガチャッと鳴った。
「ウカは乳首を弄られるのが好きみたいじゃぞ」
瞬間、抗議のように足がばたつく。すまんのう、じゃがここから出るためじゃし、と尤もらしいことをとりあえず言っておく。
あちらでどんなやりとりがあったか覚えてはいないが、ばたついていた足がまたびくん、と跳ねるようになった。腰もさっきより激しく揺れる。時おり、何かに耐えるように背中が弓なりにぴんとしなって、少しすると脱力する、というのを何度も繰り返している。腹の動きもさっきより複雑だ。
「そろそろこちらもいいかのう」
聞いたところであちらに自分を止める術はないが、信頼を失っても困るので律儀に声をかける。跳ねていた体が、途端しん、と静まったので肯定と受け取った。ウカの股の間に顔がくるように寝そべると当たり前だが、潤いを帯びはじめている割れ目がよく見えた。
「ほらあ。やっぱり乳首はよかったじゃろ?」
あくまで報告ですというような口調で、だいぶ濡れてるのうと続けると、足がまたばたつくので、
「おっと! そんなに動くと顔にぶつかる!」
と言って、自分の顔がいまウカの身体のどこにあるのか、意識させた。素直なウカはすぐに静かになるが足が羞恥でふるふると震えているのがよくわかる。ふう、と息をかけると腰がもぞもぞと動いた。
「せっかく手が四本、口は二つあるんじゃから、そっちのワシも休まず楽しんでくれ」
と声をかけると、恐らくまた指で両乳首を弄りはじめたのだろう。この腹の動きとヒクつきだと深い口づけも合わせてしているかもしれない。もうウカの大好きな弄られ方を探り当てたのか、と自分のくせに少し感心した。それを背後からやるのがもっといいはずなんじゃが、とも思ったが、いまのウカの体制では難しいのだろう。 あちらの自分とウカはなかなか楽しんでいるようだ。こちらはさきほど指で太ももをなぞったくらいだが、目の前のまだ触れていない割れ目はぴったりと閉じていて、それなのに隙間からとろとろとしたものが堪えきれず溢れている。視線を少し上に向ければ、まだ何もしていないというのに、膨らんだ蕾が勃ち上がっているのが見えた。腹は相変わらず激しく上下しており、呼吸も荒く、それでもなお、快楽を貪っているのだろう。
「聞いとる余裕はないかもしれんが、ワシも触るぞ」
言い終わらないうちに、こちら側で一番敏感であろう突起をつぷ、と人差し指で押した。瞬間、ウカの身体が今日一番のしなりをみせる。こちらは足を空に固定しているから、尻まで浮いてしまっているが、人差し指は離さない。強くなりすぎないよう、すりすりとゆっくり上下に擦るように動かすと尻が浮きっぱなしになる。とめどなく溢れてくる蜜を掬って擦り付けるようにするといつまでもぬるぬると止まらない。爪先がぴんとまっすぐになっていて、電流のような快感が爪先まで走り抜けているようだ。
「びっくりするじゃろ? 忘れとるかもしれんが、こっち側のの身体は半年後の身体でなあ。その……半年間、弄りまくったんじゃ。ここも、中も」
あ、もちろん乳首もな、と付け足す。
「じゃから、まあ……。そっちのウカにしたら、開発済みの身体を急にくっつけられとるようなもんかの? その……、感想は?」
聞くまでもない。
人差し指を少しだけ強く押し付けたら、びくん!と一際大きく身体が跳ね上がって、あっけなく痙攣しはじめた。半年前は、どんな声で鳴いていたっけ。あちら側で乱れていたウカを思い出して補完する。
『嘘、うそッ! ああ゛ぁ────ッ!!』
やっぱりこの仕様はくそじゃの。なんであっちの声は聞こえないんじゃ。
◆
「ほらほら、休まず手と口を動かさんか。一生この部屋でいいのか?」
あちら側で、このまま続けていいものか逡巡している自分に半ば脅迫のような言葉を発してあげる。この部屋から出られる条件を知らない以上、こちら側のワシに従うしかないのは知っている。大義名分を得たとばかりに、すまんのう、なんて言いながら、楽しむ自分も半年前のことだ、知っている。
あちら側ではまた乳首への愛撫が再開されたようだ。陰核からの刺激と相まって、先ほどから尻が浮きっぱなしだ。拘束具の金具も五月蝿いほどにガチャガチャと音を立てている。
「じゃあそろそろウカの好きなやつ、はじめるかの」
一瞬、驚きで動かなくなった腰を両手でとらえ、膨らむばかりの花芯を、あむ、と唇に含む。そして舌先で何度も弾いた。快感を逃がそうとする腰をしっかりと押さえつけ、舌先でぐりぐりと押し付けるようにしながら何度も往復させる。ぷりゅぷりゅと逃げる突起を唇で押さえ、ひたすら虐め抜いていく。両手で阻まれない、足で抵抗されない。出来ることは腰を揺らすくらい。その腰も今両手で拘束している。
「は、舐めやすくて最高じゃの」
楽しくて、合間にひたすら実況を挟んだ。
「ああこら、逃げたら終わらんじゃろ」
「それにしてもここまでいやらしく育つとは……。そっちのワシもこれから半年、ちゃんと励めよ」
「ん? もしかしてイっとるのか? もう痙攣しすぎてよくわからんから、とりあえず続けるぞ」
「ふ、腰が動いて……物足りんようじゃの」
「乳首はちゃんと弄っとるじゃろうな? さぼるなよ。ウカは乳首を弄られながら、が一番大好きなんじゃ。そうじゃろ?」
「あ、せっかくだから舐めてやったらどうじゃ? ココを舐められながら乳首も舐められるなんて、今しかできんぞ」
「ウカはのう、いやいやと首を振りながら、ワシの口にココを押し付けてくるのがまた、かわいいんじゃ。あ、ほら。よしよし、まだ止めんから安心せい」
『あ゛あッ! ちがッ、うぅああ゛!』
あちら側で、意味をなさない否定の言葉を、叫びのような喘ぎ声と共に必死で吐きながら、汗と涙と唾液でどろどろになっているウカを思い出して、また舌が止まらなくなる。もっと、もっと。
『んあああ゛ッ! ちく、びもぉ! あ、そこッも! とけぢゃう゛!』
幸い、こちらに叫びは聞こえない。目の前の突起と孔とを見ていればいいだけだ。
◆
「水は飲ませてるか?」
さすがに少し疲れた、と口を離す。口を離してもウカの身体はびくん、びくん、と跳ね続けていて、少しだけ胸が痛む。だが、後ろのドアはまだ開かないままだ。
ウカの方を見やると、少しだけ腹がゆっくり上下していた。水でも飲んでいるのだろう。飲み終わり落ち着くまで待つことにする。ただ、あまり間を空けるとせっかく高めた性感が無に帰してしまう。わざと、ギシと音を立ててウカの足の間で胡座をかく。ウカの爪先がぴく、と揺れ動いた。
「もうそろそろの辛抱じゃ。指、入れるぞ」
ぴっちりと閉じていた割れ目を右手の人差し指と中指でぐっと割り開くと紅いクレバスがのぞいた。肉壁がうねうねと蠢いているのがわかる。そのまま左手の中指を差し入れると、待っていましたとばかりに吸い付いてきて、思わず笑ってしまう。
中指を根本まで沈めると、動かしてもいないのに、きゅ、きゅ、と収縮した。
「お、ちゃんと乳首も虐めとるな。感心感心」
それなら、と右手の親指をさっきまで舌でこねくりまわしていた突起に添える。勃ちあがったその小さな肉芽を下から上にゆっくりなぞりあげると、足がまたびんっ、と飛び上がり、中はぐにゅぐにゅと蠢き、指がどんどん奥へを誘われていく。この状態の蜜壺に、これから己の肉棒を突き立てるのだ。想像するだけで射精してしまいそうだった。
なんとか堪えて、入れたままの中指を少し折り曲げる。そうして、クリトリスの裏側あたりを擦るようにすると、ウカの身体がまた反り返ってそのままになった。足先までぴんと力が入っているようだ。
「おお、やっぱり外と中から同時に刺激されるとたまらんか。今日は乳首までセットじゃからのう」
あちら側のウカが見えないと、どうしても呑気な感想になってしまうが、中に入れている指は中指だけだと負けそうで、人差し指も追加した。ウカの身体の痙攣につられないよう、あくまで機械のように、一定のリズムと強さで刺激を与えていく。達してるかどうかはもう本当にわからない。
『い゛ッでる、のにぃ゛!』
記憶の中のウカがそんなことを言っていた気もするが、最早どのタイミングだったかなぞ、覚えていない。
「すまんのう、条件が曖昧でな。どこまでやれば十分なのかわからんのじゃ」
だから手を休めるなよ、と向こうの自分を牽制する。
「ウカ、どんなに乱れても大丈夫じゃからな。安心して、気持ちいいことだけ考えとれ」
言うとまた、陸にあがった魚のようにびくんびくんと腰が跳ねた。快楽に抗うことを諦めたのか、今日はじめて、ウカの身体が弛緩している気がする。指ももうふやけてしまった。自分もそろそろ限界だ。
「総仕上げといくか」
カクはベルトに手をかける。
◆
ウカの花弁はむっちりとしていて、先端をぴと、とつけるだけで、しっとりと気持ちが良かった。今すぐ最奥まで突き立てたい気持ちを微かに残った理性で御する。カリ首を入り口にひっかけるようにして何度も前後させるとたまらない。それだけでぬらぬらと愛液がまぶされて、どんどん滑りがよくなっていく。
「ずっとな、もどかしかったんじゃ」
腰をゆっくり進めて、また少し戻す、というのを繰り返しながら、割れ目の上でまだ主張を続ける突起を摘まんだ。親指と人差し指でくりくりと弄ると、熱い肉がどんどんぐずぐず溶けるようで、でも、決して離すまい、としがみついてくる。
「ウカの好きなこと、いっぺんにやるにはどうしても手が足りんくてのう」
「今日、ようやく叶うぞ」
最奥にたどりついた。まだ動かない。まずは、熱い己を突き立てられながら、乳首とクリトリスを弄られ、こねられ、摘ままれ、弾かれ、嬲られるウカの収縮をゆっくり楽しむ。 ウカの膣は動いていないのにきゅ、きゅ、と献身的にカク自身を揉みしだき、時おり、ぎゅううと締め付けるかと思うと、びくびくっと痙攣する。痙攣しながらまたきゅきゅ、と収縮しはじめる。果てた膣の動きの複雑さに感動した。
濡れて柔らかく、でも隙間なく己を包む肉と、そこにぴったりと収まる、つるっとしたモノ。おさまりが完璧だった。
「あぁ……。そっちのワシには悪いが、とんでもなくいいぞ」
どうしても言っておきたかった感想に反応してまたきゅっ、と締まる。
『だ、ってぇ! ずっ、と弄るからッ!』
「いつまでもこうしていたいが、それも無理じゃし仕方ない」
カクは腰をゆっくり前後に動かしはじめる。もう複雑な動きは出来ないと、クリトリスには手のひらを添えておくだけにした。これで動く度に勝手に刺激が伝わるだろう。
これまではウカの表情や声で、いいのか、よくないのか、を確かめていたが、今はその術がない。繋がっているここだけが頼りだ。だが、情報の少ない今の方がぐっとわかりやすくなった気がする。
「ウカもいいんじゃな、わかるぞ」
自分が黙ると、ぐちゅ、ぐちゅ、とした水音と、パンパン、と腰を打ち付ける音だけが響く。いつもはウカにかき消される自分の呼吸も、はあはあと荒くなっているのがわかった。自分の汗が、うにゅうにゅと波打つウカの腹に落ちる。
滑りが良すぎて、どこにもひっかからずに、腰がパンと音を立てたところで止まる。それを繰り返しながら、半年前、自分には見えない壁の向こうでピストンされ、開きっぱなしの口で喘ぐウカの表情と、そのウカの固く尖りきった乳首をひたすら指でこね、カリカリとひかっきながら、開いた口に舌を差し入れた自分を思い出した。今もひたすらに、止まることなく弄られているのだろう。早く終わらせてあげたい、でも、目の前のウカをひたすら貪りたい。相反する気持ちでわけもわからないまま、とにかく胸の飾りをこね回した。いくら弄んでも、むしろ、弄くり倒すほど、固さを増していった気がする。 あちら側も、よかった。快楽でぐちゃぐちゃになったウカの表情を思い出すと、ぞくりとして、急に快感がせり上がってきた。まだ終わりにしたくない、と腰を止めたくても、もううまくいかない。
「ああもう! 残念じゃなあ!」
言うと、自身が一層膨らんで、弾けた。たまりにたまった欲情をどくん、どくん、と放出する。それを抑え込むかのようにウカの膣がぎゅうううっと締まるが、ふっと弛緩したかと思うと、またびくびくと収縮をはじめる。萎み始めた己がやわやわと弄ばれるようだった。
少しの間、萎えきった自身を抜くこともせずに放心していると、後ろからカチャリと音がして、ギィと軋む音が続く。
「納得いかんが、言うても仕方ない」
ウカの股から、縮みきった自分をずるりと抜いて、シーツの乾いた部分で乱暴に拭った。名残惜しく思って、ウカの太ももを撫でるが、反応はなかった。半年前、ウカが気を失ってしまったことを思い出す。しょうがなく、脱いだ服を着直し、服の乱れを整える。飛んでいったジャケットは、ウカの身体にかけていくことにした。
ドアノブに手をかけて、ベッドの上に掲示されていた条件を見る。
【双方が性的に満足すること】
「満足しなかったのはワシか?」
おしまい
時の狭間で・あちら側
仰せのままに #カク
「もし、身体が疼いて仕方ないのなら、荷物をまとめて入り口で待っとってくれ」
なんてひどい言い方だろう。これじゃあ、仮に会いたくて待っていても「身体が疼いてるのか」と思われるじゃないか。
頭を振って、深く息を吐くと、さっきまでのじくじくとした身体から何かが抜けて、すっきりする気がした。一度カクの手が離れると、さっきまで自分達がしていたこと、もとい、自分がされていたことはなんだったのだろうと、もう一人の冷めた自分が問いかけてくる。
どうしよう、待っていようか。久しぶりに会えたのは嬉しかったし、触られたのも、嫌ではなかった。でも「続きがしたい」と思われるのは恥ずかしい。例え、それが事実でも。
「ウカ!?」
言われた通り、格納庫の入り口で待っていた私を見たカクのびっくりした声で、ああ自分は間違ったかもしれない、と思った。カクは口元に手を当てて、こみ上げる笑いを隠そうとしているので余計に悲しくなる。ほら、やっぱり。「したいから、待っていた」って、きっとそう思われている。泣くほど傷ついたわけじゃないのに、なんだか恥ずかしさと悔しさ、情けなさなんかで、喉がうっとつまって、涙が滲んできた。カクが慌てて私の手を引いて、格納庫に引っ張りこむ。
「すまん! どうした!?」
私が泣くととりあえず抱きしめるのはカクのやり方だ。カクの胸で大して高くもない鼻が潰れて、鼻をすすると、ずび、とかわいくない音がした。惨めでさらに泣きたくなる。
「っう……ひっ……わ、笑う……から……」
「あああ! 違う、違うんじゃ! 待っててくれると思っとらんかったから! 嬉しくて!」
「……なん、で? 待つよ……」
「じゃって……さっきは半ば無理矢理じゃったし……。その、自分勝手じゃったな、と。目も合わせてくれんから、てっきり怒らせたかと……」
「……怒ってない。あと、その、……よかった」
「ん……わはは、そうか!」
大きな手で背中をばしばし叩かれる。今のは嬉しくて笑ったんだって、わかった。さっきのだって「笑われた」わけじゃないことくらいわかってたけど、自分で思うほど、器用に感情は制御できない。だから、涙を流したら、それはそれで、自分が思っていた以上にすっきりした。
「カクさん、おっきく、なってますけど」
「……言うてくれるな」
泣いてても可愛いんじゃ、ウカは。と小さな声で呟いたのが聞こえた。
「ここ、……鍵かかるの?」
私も小さな声で呟いたら、カクが少しだけ目をぱちりとさせて、あのいたずら好きの子供のような笑顔を浮かべた。
「中からもかかるし、外から開ける鍵はワシが持っとるから……。もう誰も開けられんのう」
私はカクに気づかれないよう、唾を飲む。ガチャリ、という音がなんだか無慈悲に聞こえた。
◆
せっかくじゃからさっきの続きをしようか、とカクは言って、私を壁際に立たせた。フレアスカートの中にそっと手を差し入れ、内腿をさする。
「今から……、そうじゃのう。まずは指で確かめるとするか。さっきので、どれだけここが蕩けてるか、確認せんとなあ。下着の上から、割れてるところをゆっくりなぞってみるかのう。声は……出してもいいが、ここは響くぞ?」
カクが上から私の顔を覗きこむようにしつつ、ゆっくり指を動かす。動かしながら、「ああ、これは……。もう脱いだ方が良さそうじゃの」と笑うので、顔がどんどん熱くなる。さっきは、暗かったし、後ろにいたから、表情までは気にしなくてよかったのに。たまらず顔を背けると、左手であごを捕まれ、固定された。
「こらこら、ちゃんとこっちを見んか。反応がわからんと、ウカのいいところもわからんじゃろ?」
「……ッ!ぜ、全部、も……知ってる、ッ!くせに……」
「いやいや、買い被りすぎじゃ。例えば、ここをずーっとカリカリひっかいとったら、どうなるんじゃろな?」
「いあっ! ぁ……、や、や、ぁ……ッ! ああ!? ちょっ!」
両手でカクの右手をつかむが、カクは動じない。それどころか顎をつかんでいたはずの左手がいつの間にか胸に添えられていて、そちらも同じようにカリカリと引っ掻くように弄られる。さっきまでずっと弄られ続けていたせいで、普段よりじんじんと痺れるそれは、すぐまた固くなって、弄りやすいのうとカクを喜ばせた。
「おっと、また忘れとった。左手でまた乳首を弄るぞ。中指でカリカリするからの。クリトリスと一緒に弄るから……声は、……我慢できんじゃろ? じゃ、続けるぞ」
「ぅあッ────ぅあ、あ、あっ、あっ、あっ──ッッ!!」
「お? 今日はいつも以上に堪え性がないのう。ひょっとして、こうして言葉にされるのがいいのか?」
カクが何か言っているが、私はそれどころではない。大して大きくない声も、反響して、自分に届くと、自分が二倍も三倍も喘いでいるような気になる。カクは喋りながらも手を疎かにすることはない。一定のリズムで途切れることなく与えられる乳首と淫核への刺激は、私の足をがくがくと震えさせるのに十分すぎた。
あ、あと少し──と思ったところで、ぴたりと刺激が止まる。
「あっ……な、なん……」
「すまんのう。どうせなら、舌でイかせたくての。こっちのが好きじゃろう?」
カクはそう言うと下着に手をかけ、ずるりと下ろして、跪いた。濡れた股に風があたってすうすうと冷えるので、思いがけずぞくりと震えたのも束の間、さっきまで指で弄られていたところに、あたたかい舌と唇が、くちゅ、と添えられる。引けた腰を逃さないよう、両手でお尻を捕まれた。 スカートの中にカクがいる。滑稽な姿だと思うのに、上からそれを見下ろして、妙に興奮してしまう。
「じゃあ今度は……ウカがイクまで舐める。イっても舐める。以上」
「ぁっ!? え? なにそれ!」
「以上!」
「ぁ……ぁあ……ん……ふ、あぁ……」
宣言の勢いとは裏腹に柔らかく舌が添えられて、もう少し強くてもいいのに、と思うくらいの優しさで、ちろちろと舌先でくすぐられる。舌先は柔らかく密着して絡みついてきたり、かと思えば、固く尖らせてツンツンとつついたり弾くようにされたりと、色々だったが、とにかく休む間もなく舐められ続けた。
そのうち、足先に力が入っていき、カクの頭に添えていた指先に力が入る。カクは当たり前だけどスカートのなかで、こちらが見えていないはずなのに、こういう私の変化を溢さず受け止めて、私は確実に追い詰められていく。
「ぁあっ! あっ! あ、あ、ああっあ、い、いく、いく、いっ! いっ──ッ!」
足がまた震え、今度は完全に達して脱力してしまいたいのに、カクはまだちろちろと舌を動かすのをやめない。壁に私を押し付けるようにして、私が膝を折るのも許してくれなかった。
「ねぇっ! 無理、無理っ! 無理ぃ! あ、あ、あ、あ、あああっ!!」
◆
「わはは、すまん。やりすぎた」
笑い事じゃないんだけど……と怒る体力もない。もうこうなっては、フレアスカートが汚れるのも気にせず、壁にもたれながらずるずると膝を折ってへたりこみたいところだが、足の間に入れられたカクの足がそれを許してくれない。
「最後の仕上げじゃなァ。さ、壁に手をついて……、あ、そこの木材がちょうど良さそうじゃの。そうそう、乗って、よし……」
「は……ふ、……ぅ、これで、いい……?」
もはや自分で何かを考えられる余力がないため、カクの言う通り、保管してあった木材に乗って身長差を調節し、壁に手をついて、後ろを振り返った。
お尻をつき出すような姿勢で、従順にカクを待ちわびる私を見下ろすカクは、お手伝いが上手にできた子供を褒めるような優しい笑顔で「完璧じゃの」と私をあやしながら、どろどろになった私の恥部に、そそりたった自身を押し付けた。そして顔を耳元へ寄せると、低い、なめらかな声で、私を追い込んでいく。
「はあ、もどかしいが仕方ない。説明せんと。ウカ、もうわかるじゃろ?今から、これを、入れたり、出したり、するからの。いいところは全部これで擦るぞ。クリトリスの裏も、奥も、全部。この体勢ならそうじゃな……入れながら、指で乳首もクリトリスも弄るか。ナカがすごいことになりそうじゃな。ん? 聞いとるか? 身体をいくら捩っても無駄じゃぞ。ちゃんと捕まえとるからの」
まず耳から犯されていく。これから何をされるか、しっかり言い聞かされて、まだ動いていないカクの指を、腰を、嫌でも想像してしまう。揺れた腰は逃げようとした訳じゃない、早くとせがんでいるだけだ。
「じゃ、あとは身体で確かめてもらうかの」
カクが腰をゆっくり寄せてくる。つぷ、と、私の内側に硬くてぬるっとしたモノが入ってくる。襞がじんわりと押し広げられていき、その緩慢な動きにあわせるように、指がそれぞれの突起を捉えて、歯痒いほどのもったいぶった動きでいじめてくる。
ずるり、と抜かれたかと思えば、また、つぷぷ、と入ってくる。ゆっくり、ゆっくり、それの繰り返しだ。滑りがさらによくなって、馴染んだと思ったら、腰をぴったりと密着させてきて、ひたすらにじわじわと奥ばかりを優しくノックされる。
「んあぁッ──! あ、ああ゛ッ! ぅああ゛ぁ────ッ!!」
「焦らしたせいか、いい聞かせがよかったのか……今日は一層いい声で鳴くのう」
「ふっ──! んん゛ぅ……ッ! ん゛ああッ!」
「ああ、すまんすまん。恥ずかしかったか? ちゃんと聞かせてくれ」
そう言って、指の動きをほんの少しだけ、強く、速くされる。もういっぱいいっぱいの身体にさらに刺激が上乗せされていく。
「あああっ! も、や、やめッ! お゛っ、お、かしく──な──っ!」
「あぁ! もう、最っ高じゃの。こんなにひくつかせて……動かすのももったいないわい」
そうは言うくせに、全然何もやめてはくれない。もう自分では何もわからないけど、きっと、もう何度も何度も甘く達しているに違いない。あがったきり、いつ、さがったのかわからないのだ。今辛うじて出来ているのは、とにかくただ立つことだけ。
「ねぇッ!! ほ、んぁあッ! と、にっ! 無理ィッ!!」
「おお、よしよし。良く頑張ったの。名残惜しいが仕方ない」
カクがまたほんの少し、腰と指の動きを強めた。カクが達するために私にさらに与えた刺激は、そんなに激しいものではなかったのに、今のわたしには十分すぎるものだった。自分でもどこにそんな筋肉があったのか、と驚くほど、ぐねぐねとカクを締め付けているのがわかる。
「い、いっ──ちゃ……!」
「わしもじゃ」
カクが短く言い捨てると、腰の動きも止まった。自分のナカに入っていたモノがどく、どく、と脈打っているのがわかる。
早く、座りたい。ベッドに身体を預けたい。シャワーでぐちょぐちょになったすべてを洗い流したい。身体はまだびくつき、跳ねて、カクを喜ばせようとしているのに、頭ではそんなことを思った。でもこれはきっと後ろの恋人が今日全部叶えてくれるはずだ。
私は勝手に安心し、後のことは彼に任せることにして、最後まで身体をひくつかせた。
おしまい
「もし、身体が疼いて仕方ないのなら、荷物をまとめて入り口で待っとってくれ」
なんてひどい言い方だろう。これじゃあ、仮に会いたくて待っていても「身体が疼いてるのか」と思われるじゃないか。
頭を振って、深く息を吐くと、さっきまでのじくじくとした身体から何かが抜けて、すっきりする気がした。一度カクの手が離れると、さっきまで自分達がしていたこと、もとい、自分がされていたことはなんだったのだろうと、もう一人の冷めた自分が問いかけてくる。
どうしよう、待っていようか。久しぶりに会えたのは嬉しかったし、触られたのも、嫌ではなかった。でも「続きがしたい」と思われるのは恥ずかしい。例え、それが事実でも。
「ウカ!?」
言われた通り、格納庫の入り口で待っていた私を見たカクのびっくりした声で、ああ自分は間違ったかもしれない、と思った。カクは口元に手を当てて、こみ上げる笑いを隠そうとしているので余計に悲しくなる。ほら、やっぱり。「したいから、待っていた」って、きっとそう思われている。泣くほど傷ついたわけじゃないのに、なんだか恥ずかしさと悔しさ、情けなさなんかで、喉がうっとつまって、涙が滲んできた。カクが慌てて私の手を引いて、格納庫に引っ張りこむ。
「すまん! どうした!?」
私が泣くととりあえず抱きしめるのはカクのやり方だ。カクの胸で大して高くもない鼻が潰れて、鼻をすすると、ずび、とかわいくない音がした。惨めでさらに泣きたくなる。
「っう……ひっ……わ、笑う……から……」
「あああ! 違う、違うんじゃ! 待っててくれると思っとらんかったから! 嬉しくて!」
「……なん、で? 待つよ……」
「じゃって……さっきは半ば無理矢理じゃったし……。その、自分勝手じゃったな、と。目も合わせてくれんから、てっきり怒らせたかと……」
「……怒ってない。あと、その、……よかった」
「ん……わはは、そうか!」
大きな手で背中をばしばし叩かれる。今のは嬉しくて笑ったんだって、わかった。さっきのだって「笑われた」わけじゃないことくらいわかってたけど、自分で思うほど、器用に感情は制御できない。だから、涙を流したら、それはそれで、自分が思っていた以上にすっきりした。
「カクさん、おっきく、なってますけど」
「……言うてくれるな」
泣いてても可愛いんじゃ、ウカは。と小さな声で呟いたのが聞こえた。
「ここ、……鍵かかるの?」
私も小さな声で呟いたら、カクが少しだけ目をぱちりとさせて、あのいたずら好きの子供のような笑顔を浮かべた。
「中からもかかるし、外から開ける鍵はワシが持っとるから……。もう誰も開けられんのう」
私はカクに気づかれないよう、唾を飲む。ガチャリ、という音がなんだか無慈悲に聞こえた。
◆
せっかくじゃからさっきの続きをしようか、とカクは言って、私を壁際に立たせた。フレアスカートの中にそっと手を差し入れ、内腿をさする。
「今から……、そうじゃのう。まずは指で確かめるとするか。さっきので、どれだけここが蕩けてるか、確認せんとなあ。下着の上から、割れてるところをゆっくりなぞってみるかのう。声は……出してもいいが、ここは響くぞ?」
カクが上から私の顔を覗きこむようにしつつ、ゆっくり指を動かす。動かしながら、「ああ、これは……。もう脱いだ方が良さそうじゃの」と笑うので、顔がどんどん熱くなる。さっきは、暗かったし、後ろにいたから、表情までは気にしなくてよかったのに。たまらず顔を背けると、左手であごを捕まれ、固定された。
「こらこら、ちゃんとこっちを見んか。反応がわからんと、ウカのいいところもわからんじゃろ?」
「……ッ!ぜ、全部、も……知ってる、ッ!くせに……」
「いやいや、買い被りすぎじゃ。例えば、ここをずーっとカリカリひっかいとったら、どうなるんじゃろな?」
「いあっ! ぁ……、や、や、ぁ……ッ! ああ!? ちょっ!」
両手でカクの右手をつかむが、カクは動じない。それどころか顎をつかんでいたはずの左手がいつの間にか胸に添えられていて、そちらも同じようにカリカリと引っ掻くように弄られる。さっきまでずっと弄られ続けていたせいで、普段よりじんじんと痺れるそれは、すぐまた固くなって、弄りやすいのうとカクを喜ばせた。
「おっと、また忘れとった。左手でまた乳首を弄るぞ。中指でカリカリするからの。クリトリスと一緒に弄るから……声は、……我慢できんじゃろ? じゃ、続けるぞ」
「ぅあッ────ぅあ、あ、あっ、あっ、あっ──ッッ!!」
「お? 今日はいつも以上に堪え性がないのう。ひょっとして、こうして言葉にされるのがいいのか?」
カクが何か言っているが、私はそれどころではない。大して大きくない声も、反響して、自分に届くと、自分が二倍も三倍も喘いでいるような気になる。カクは喋りながらも手を疎かにすることはない。一定のリズムで途切れることなく与えられる乳首と淫核への刺激は、私の足をがくがくと震えさせるのに十分すぎた。
あ、あと少し──と思ったところで、ぴたりと刺激が止まる。
「あっ……な、なん……」
「すまんのう。どうせなら、舌でイかせたくての。こっちのが好きじゃろう?」
カクはそう言うと下着に手をかけ、ずるりと下ろして、跪いた。濡れた股に風があたってすうすうと冷えるので、思いがけずぞくりと震えたのも束の間、さっきまで指で弄られていたところに、あたたかい舌と唇が、くちゅ、と添えられる。引けた腰を逃さないよう、両手でお尻を捕まれた。 スカートの中にカクがいる。滑稽な姿だと思うのに、上からそれを見下ろして、妙に興奮してしまう。
「じゃあ今度は……ウカがイクまで舐める。イっても舐める。以上」
「ぁっ!? え? なにそれ!」
「以上!」
「ぁ……ぁあ……ん……ふ、あぁ……」
宣言の勢いとは裏腹に柔らかく舌が添えられて、もう少し強くてもいいのに、と思うくらいの優しさで、ちろちろと舌先でくすぐられる。舌先は柔らかく密着して絡みついてきたり、かと思えば、固く尖らせてツンツンとつついたり弾くようにされたりと、色々だったが、とにかく休む間もなく舐められ続けた。
そのうち、足先に力が入っていき、カクの頭に添えていた指先に力が入る。カクは当たり前だけどスカートのなかで、こちらが見えていないはずなのに、こういう私の変化を溢さず受け止めて、私は確実に追い詰められていく。
「ぁあっ! あっ! あ、あ、ああっあ、い、いく、いく、いっ! いっ──ッ!」
足がまた震え、今度は完全に達して脱力してしまいたいのに、カクはまだちろちろと舌を動かすのをやめない。壁に私を押し付けるようにして、私が膝を折るのも許してくれなかった。
「ねぇっ! 無理、無理っ! 無理ぃ! あ、あ、あ、あ、あああっ!!」
◆
「わはは、すまん。やりすぎた」
笑い事じゃないんだけど……と怒る体力もない。もうこうなっては、フレアスカートが汚れるのも気にせず、壁にもたれながらずるずると膝を折ってへたりこみたいところだが、足の間に入れられたカクの足がそれを許してくれない。
「最後の仕上げじゃなァ。さ、壁に手をついて……、あ、そこの木材がちょうど良さそうじゃの。そうそう、乗って、よし……」
「は……ふ、……ぅ、これで、いい……?」
もはや自分で何かを考えられる余力がないため、カクの言う通り、保管してあった木材に乗って身長差を調節し、壁に手をついて、後ろを振り返った。
お尻をつき出すような姿勢で、従順にカクを待ちわびる私を見下ろすカクは、お手伝いが上手にできた子供を褒めるような優しい笑顔で「完璧じゃの」と私をあやしながら、どろどろになった私の恥部に、そそりたった自身を押し付けた。そして顔を耳元へ寄せると、低い、なめらかな声で、私を追い込んでいく。
「はあ、もどかしいが仕方ない。説明せんと。ウカ、もうわかるじゃろ?今から、これを、入れたり、出したり、するからの。いいところは全部これで擦るぞ。クリトリスの裏も、奥も、全部。この体勢ならそうじゃな……入れながら、指で乳首もクリトリスも弄るか。ナカがすごいことになりそうじゃな。ん? 聞いとるか? 身体をいくら捩っても無駄じゃぞ。ちゃんと捕まえとるからの」
まず耳から犯されていく。これから何をされるか、しっかり言い聞かされて、まだ動いていないカクの指を、腰を、嫌でも想像してしまう。揺れた腰は逃げようとした訳じゃない、早くとせがんでいるだけだ。
「じゃ、あとは身体で確かめてもらうかの」
カクが腰をゆっくり寄せてくる。つぷ、と、私の内側に硬くてぬるっとしたモノが入ってくる。襞がじんわりと押し広げられていき、その緩慢な動きにあわせるように、指がそれぞれの突起を捉えて、歯痒いほどのもったいぶった動きでいじめてくる。
ずるり、と抜かれたかと思えば、また、つぷぷ、と入ってくる。ゆっくり、ゆっくり、それの繰り返しだ。滑りがさらによくなって、馴染んだと思ったら、腰をぴったりと密着させてきて、ひたすらにじわじわと奥ばかりを優しくノックされる。
「んあぁッ──! あ、ああ゛ッ! ぅああ゛ぁ────ッ!!」
「焦らしたせいか、いい聞かせがよかったのか……今日は一層いい声で鳴くのう」
「ふっ──! んん゛ぅ……ッ! ん゛ああッ!」
「ああ、すまんすまん。恥ずかしかったか? ちゃんと聞かせてくれ」
そう言って、指の動きをほんの少しだけ、強く、速くされる。もういっぱいいっぱいの身体にさらに刺激が上乗せされていく。
「あああっ! も、や、やめッ! お゛っ、お、かしく──な──っ!」
「あぁ! もう、最っ高じゃの。こんなにひくつかせて……動かすのももったいないわい」
そうは言うくせに、全然何もやめてはくれない。もう自分では何もわからないけど、きっと、もう何度も何度も甘く達しているに違いない。あがったきり、いつ、さがったのかわからないのだ。今辛うじて出来ているのは、とにかくただ立つことだけ。
「ねぇッ!! ほ、んぁあッ! と、にっ! 無理ィッ!!」
「おお、よしよし。良く頑張ったの。名残惜しいが仕方ない」
カクがまたほんの少し、腰と指の動きを強めた。カクが達するために私にさらに与えた刺激は、そんなに激しいものではなかったのに、今のわたしには十分すぎるものだった。自分でもどこにそんな筋肉があったのか、と驚くほど、ぐねぐねとカクを締め付けているのがわかる。
「い、いっ──ちゃ……!」
「わしもじゃ」
カクが短く言い捨てると、腰の動きも止まった。自分のナカに入っていたモノがどく、どく、と脈打っているのがわかる。
早く、座りたい。ベッドに身体を預けたい。シャワーでぐちょぐちょになったすべてを洗い流したい。身体はまだびくつき、跳ねて、カクを喜ばせようとしているのに、頭ではそんなことを思った。でもこれはきっと後ろの恋人が今日全部叶えてくれるはずだ。
私は勝手に安心し、後のことは彼に任せることにして、最後まで身体をひくつかせた。
おしまい
「天竜人には逆らうな、ですよね?」
嫌な予感しかないが、もちろん逆らえるわけがない。カクは目の前が真っ暗になったが、ひとまず目の前の女は天竜人ではないから消去法で奴隷だろう。この地にいるのは、神か、奴隷か、自分たちだ。神の御前に引きずり出される前に、この奴隷から少しでも情報を聞き出しておく必要がある。
「逆らうなどどんでもない。もちろん呼ばれれば馳せ参じるが……、どちらさまじゃったかの?」
「失礼しました。ミョスガルド聖の使いで、ウカと申します」
女性は両手を上げ、敵意がないことを示しながら、封蝋がされた書状をひらひらと振る。封蝋には確かにミョスガルド聖のシンボルマークが見て取れる。書状から女性に視線を動かすと、女性はゆっくりと笑った。
◆
ミョスガルド聖の書状には、天竜人が入り浸っているサロンについて調べてほしい旨が書き記されていた。会員制の極秘サロンで、ミョスガルド聖にもそれ以上はわからないらしい。身内が迷惑をかけているかもしれないから、と相変わらずのお優しさだ。
書状を持ってきたウカという女性は、海軍から紹介された同業者らしい。サイファーポールでも概要すら掴み切れないというそのサロンに、ウカの計らいで、なんとか客として来店できる手筈が整ったとのことだった。
そして来店するや否や、
「海楼石の手錠、失礼しますね」
「“海楼石の”手錠があるのか」
「当サロンは能力者の方も利用されますので、安全のためにも手錠はすべて海楼石製です」
サロンスタッフの女性はにっこり笑いながら、しかし、それ以上言葉を続けない。ウカに「カクさんは私に手錠をかけたいです?」と問われれば仕方ない、諦めて両手を差し出すと、手慣れた様子で両手を後ろに回され、そのまま拘束された。ガチャリ、と無慈悲な音がして、途端に体に力が入らなくなる。立つこともままならない、というほどではないが、とてもだるく、力では絶対に抗えそうにもない。今すぐにでも座りたい。
何かあったらどうするんじゃ、とウカに小声で問うと、ひとまず入店時だけですよと申し訳なさそうな顔で謝られた。
テーブルに案内され、もたつく足で早速ソファに座ろうとすると、ウカにそっと制止され「ごめんなさい、カクさんはこちらに」と促されたその先は柔らかな絨毯の上だ。
「地べたに座れと?」
「ごめんなさい。でも、あまり目立ちたくないでしょう?」
カクが周囲を見渡すと、確かに手錠をかけられた人間は男女問わずみなソファではなく絨毯の上にいた。心なしかみな震えているような気もするが、それにしては怯えている様子もない。ソファにもたれるようにして背中を丸め、膝を抱えているものもいるが、何かを待ち望むような期待に満ちた目でソファに座る人間を見つめている者もいる。 カクが仕方なくソファに背を向けて絨毯の上に胡座をかいて座ると、目の前のテーブルでは香が焚かれていた。店内に充満しているのはこの香りか、と香が灰になり煙が立ち上っていく様をぼんやり見ていると、ウカもカクのすぐ後ろに陣取り、間髪いれず両足をカクの股間のすぐそばに滑り込ませた。カクが、おい何を、と声をあげたのと同時に照明が落とされる。その瞬間、周囲の人間がみな、ごくりと唾を飲んだ。ような気がした。
ぴちゃ……ぷちゅ……
「あ……あ、んぁ……んぉ……ぉ……」
ぬちゅ……
「んぅ……あ、だ、だめ……」
暗闇のなかどこからともなく、水音や呻き声のようなもの、何かを拒む声が聞こえ始め、カクはたまらず後ろにいるウカに説明を求める。ウカはソファに座って自分の足の間にいるカクを見下ろしながら、愛おしげにカクの柔らかい髪を撫でた。
「言ってなくてごめんなさい。ここはね、こういうことが大好きで大好きでたまらない人間が集う場所なんですよ」
「こ、こういうこと、じゃと?」
「そ、こういうこと」
そういってウカはカクの顔を手で包み込むようにすると、カクの両耳を指先でそっとなぞる。耳朶をそっと揺らしそのまま少し爪を立てるようにして首筋をさすられると、ぞわぞわと鳥肌がたった。
「や、やめんか! おい、手錠を……ッ!」
「待って待って。ばれちゃう」
「こんッ……、なこと、ぁッ、……ッ、聞いッ、とら、んッ、ぞ……」
「ふふ、鳥肌たっちゃってる。効いてるね。こっちも?」
ウカはカクの抗議を無視してシャツのボタンとネクタイを器用に緩めた。抵抗しようにもカクにはめられた海楼石の手錠はそれを許さず、カクは首もとから侵入してくるウカの手を為すすべなく受け入れるしかなかった。
それにしてもおかしい。手錠の件を抜きにしても、体の感覚が鋭敏すぎる。自分に殺意を抱く輩を相手にしたことはあっても、こんな、──淫らな──ことは。
ウカはカクの混乱なぞお構いなしに、胸の突起にそっと指を添える。
「ほら、やっぱり。こんなに固くなっちゃって。鳥肌もすごいね。ぞわぞわする?」
ウカは左手を胸元から抜き取るとそのままカクの目元を覆った。そして右耳に舌を差し入れ、右手で胸元の飾りを指先でこりこりと弄り始めた。
「ぁっ……い、いい加減に、ッせん、と……!んぅっ……」
「どうでふ? ひもひいい?」
耳を甘く噛まれながら吐息まじりで囁かれると、背中の方からむずむずと快感がせり上がってくるようでカクの肩が震える。弄られ続けている胸の尖りからは甘い痺れが広がっていった。ウカはいつの間にかヒールを脱いでおり、足先を柔らかく使ってカクの足の間、鼠径部や内股を優しくなぜまわしている。
「よかった。こっちもちゃんと反応してますね」
「うっ、うるさ────あぅ、あッ!」
「あ、ごめんなさい。左側も可愛がってあげたくて」
カクの意に反して膨らんでいく股の間のそれに意識を持っていかれている間に、先程まで放置されていた左胸の飾りも右胸と同様に転がされ、カクは思わず声をあげてしまった。手で口を覆いたくても海楼石の手錠は能力者の身には重くのし掛かる。
ウカは指と足を器用に動かし、決して刺激を緩めないようにしながら、淡々と説明を始めた。
「何もわからなくなっちゃう前に説明してあげますね。ここはね、大事な“私の”お店なの。ご主人様と奴隷がこうやって楽しむ、秘密の、秘密のお店」
言いながら、固くしこった突起を両方とも摘ままれ、カクの口からたまらず「ぅあ゛ッ!」と短い悲鳴のような声が漏れる。そのまま、ぐりぐりと押しつぶすように指を動かされるとカクの腰がびく、びく、と揺れた。じわじわと迫りくる快感を逃がしたくても、ウカの両足がそれを許さない。
「会員の方には色んな……海軍や政府関係者の方も……いらっしゃるかもね。でもそれだけよ。それなのに、うちに天竜人が来てるとか、そしたらそれをミョスガルド聖が心配してるとか、お客様から聞いてね。ミョスガルド聖で助かったけど、それでも慌てちゃった。こんなお店が天竜人に知られたら……、どうなるかわかるでしょう? だから、カクさんには『何の問題もなかった』って言ってほしくって。根回し頑張ったの」
ウカが淀みなく説明している間も絶え間なく与えられる快感に、カクは体を跳ねさせながらも、なんとか理解しようと頭を振る。だがその程度で振り払える快感ではない。結局、「やめろ」とも碌に言えずに、ただ必死に声を我慢するだけだ。
「ッ、そ、そんなのッ……わ、しは死ッ、んでも…言わ、んぞ」
「大丈夫。それは方法があるし、あとね、記憶も飛びますから」
「まさか……」
ウカは恐ろしいことをさらりと言ってのける。わかってやっているのか、笑顔なのが余計に恐ろしかった。ウカのたおやかな笑顔に血の気が引いていく。
「ごめんなさいね。私も必死なの。申し訳ないとは思っているのよ? こんな無理矢理ね。だからお詫びにせめて、どうぞ心ゆくまで楽しんで? ほら、このまま、この固いのコリコリしたら、どうなっちゃうかな?」
「や、めッ! ぁ、あ゛ッ! ~~~~ッ!」
「ふふ、気持ちよさそうだけど、……恥ずかしい?」
恥ずかしいかと問われ、頷くことすら屈辱だ。せめてもの抵抗に、何も言わず唇を噛む。背後のウカは、そんな自分の最後のプライドさえも見透かされ、こんなのには慣れっことでもいうように、唇の端だけで笑っているような気がして癪に障る。
「大丈夫、全部このお香のせいですよ。これね、催淫効果があるの。感度が高まるのよ~。だから、カクさんがいやらしいわけじゃないですよ。安心して気持ちよくなってね」
「さい、いん……?」
「そうそう。だから恥ずかしくなんてないですよ? だってお香のせいだもん」
それなら……、と快楽に身を任せ、甘い言葉のまま揺らぎそうになる弱い自分を慌てて振り払う。
「ふふ、こっちもどんどんムクムクしてますね。よかった」
「う、うるさ──あぅ、アッ!」
「全部夢ですよ、夢。夢なら気持ちよくたっていいでしょう?」
「ッ、ゆ、ゆめ……」
「そう、夢です。起きたら何も覚えていませんから」
「そん、な、ッああぁああ!」
スラックス越しに今までずっと放っておかれた股の間の滾った熱を下から上に思い切り足で扱かれて、今日一番の声が出る。店内に響き渡ったそれを機に、あちらこちらのテーブルからカクのそれと同じ甘美な絶叫がこだました。
「いい声」
◆
スラックスと下着、お靴も全部脱がしてソファに乗せてあげて、あと足を抱えててもらえる? と、ウカがスタッフの女性に指示をだすと、すぐにスタッフ二人が、もうまともに立てなくなったカクを持ちあげソファに座らせた。そのまま両脇に座ると、無言でカクの両足をそれぞれ抱える。ソファの上で、まるで母親が子供を抱えて排泄させるようなポーズを取らされ、カクの秘所が露わになった。かすかにまだ残っている理性がカクの足をばたつかせるが、海楼石の手錠と、快楽で何度も痙攣させられた身体には、振りほどくほどの力は入らない。
「大丈夫、暗くて何も見えてないですよ」
ウカが楽しそうな声音で真っ赤な嘘をついているのがわかる。メインの照明は落とされているといっても、間接照明のうすぼんやりとした灯りはあり、目も慣れた。カクには目の前のウカのうきうきとした表情がわかるのだ。それならもちろん。
こんなところで情けをかけられ、破壊の限りを尽くすような怒りを覚えるところだが、催淫効果のある香り、筋肉が弛緩するかのような海楼石の手錠、散々跳ねさせられた身体、もう何かを考える余裕がなかった。とにかく早く終わってくれと、そればかり祈る。
恥ずかしがり屋さんだから目隠しもしてあげて、というウカの声に両脇のスタッフが手際よく布でカクの目元を覆った。
「痛くしないから、リラックスして」
まず指で慣らしますね、というウカの声色は、単に何かの施術や治療なんかを始めるように聞こえて、カクが取らされているポージングとのギャップに余計羞恥心があおられるが、それも束の間だった。
カクさん、怖いかもしれないから貴女たちはお耳とお胸を可愛がってくれる? というウカの言葉に、両脇の女たちが首肯の代わりに耳に舌を、乳首に指を添えたかと思うと息つく間もなくそれぞれが思い思いに弄び始める。激しいわけではなく、むしろ、ゆっくり、身体に快感を覚えこませるかのような執拗な責めでかえって辛かった。
「あっ! あ、ああっ……ふ……んッ──! ん゛ん゛ッッ!」
「本当にごめんなさいね。両耳舐められながら両乳首かりかりされたら、それだけで気持ちよくてたまらないのにね……」
「や゛、めさせ……ッ、ろ、ぉッ……んッッ」
「んん~……、でも、それしながらのほうがいいと思うのよ」
鼓膜を震わせる控えめな水音と規則的に休むことなくタップされている胸の突起からのシグナルはすべて快感に変換されて、股座のモノを滾らせていく。ほとんど刺激されていないそれは、健気に上を向いて切なげに震えるばかりだ。
「力抜いてねえ、あっ、すごおい……」
「ふっ、ぅあッ……、ん゛ッ! や、め……~~~~ッ!?」
「わあ、飲み込むの上手ですね」
「あ゛ぁあッ! きもち、わる、い……ッぁ、はゃ、く、ぬい、て、ぁあッ!」
「気持ちよくてびっくりしちゃいますねぇ、お香のせい、お香のせい」
「ゃ、やめ゛ッ! そこッ、あ゛っ! なん……、あ゛ぁッ!」
「あぁ、いいなあ。私たちはもう体が慣れちゃって、あんまり効かないのよねえ」
ウカの指がそこに触れるまではかすかな希望を抱いていたのに。
無慈悲なウカの指が自分で触れようなどと思ったことのない穴に指を入れ、執拗に一点をトントン、トントン、と押し込むように刺激する。押し込まれるたびに、頭が真っ白になり、自分の知っている「自分」がいなくなるようで、カクは初めて恐怖した。
これは、知らない。
そこ、を指で軽く押されるだけで、じゅっと快楽が染み出し、一瞬で全身に回るような錯覚を覚える。ずっと放っておかれているペニスは、腰が浮き身体が跳ねる度にひくつき鈴口からだらだらと透明の液体を溢れさせ後孔を濡らすほどだ。
耳を犯す水音の間隙を縫って、指示を出すウカの声が途切れ途切れに聞こえてくる。ただ、耳を澄ませてもかえって差し込まれる舌の音を拾うばかりで意味がなかった。
「ああぁああぁああッ!?」
急に散々放っておかれた陰茎を扱きあげられて、大きく口を開けて喘いでしまった。そのタイミングで口に何か器具があてがわれ、口が閉まらなくなる。
「口枷って、……私、大っ好きなんです。カクさん……、いえ、人間から「言葉」を奪っちゃえるでしょう? これでもう私、カクさんが何を言ってるか、」
「全然わかんない」
「ふっあ゛ぁッ! あ゛ッ!! あ゛ァっ!」
「え? 気持ちがいい? よかったあ、それならもっと動かしますね」
「あっああぁあ゛あ゛ッ! ~~~~ッ!」
「ふふ、ぎゅうぎゅう締め付けてきてすごいわあ」
「ぅあッ────ぅあ、あ、あっ、あっ、あっ──ッッ!!」
「ほら、いっちゃうね……いく、いく、いく……」
「ぁあ゛っ! あっ! あ、あ、ああっあ゛、い、いう、いう、い゛っ!」
「いっちゃえ」
「い゛っ──ッ!」
びりびりと電流のような衝撃が全身を貫いて、視界が真っ白になる。快感がはじけて、籠った熱が放出されていく。びくん、びくん、と肉棒が痙攣しているのがわかった。 薄れゆく意識の中で、ウカの、これくらいでいいかしら? という不安げな声が聞こえる。お任せください、と答えたのは両脇の女たちだった。
まずい、と思った時にはもう遅く、カクはそこで意識を手放した。
◆
「おお、カクくん。多忙なところすまなかったね」
サロンへの潜入から数日後、ミョスガルド聖から報告のため呼び出しがかかった。応接間のソファに座るよう促され、出されたコーヒーに口をつけながら、とんでもない、と口だけは気を使っておく。
「で、どうだった? 天竜人がまた市井の人々を虐げていなかっただろうか?」
「店長曰く、天竜人が来たことなど一度もないそうじゃ」
「そうだったか! いやはや、なんとも……それなら一安心。だが、無駄足を踏ませてすまなかったね」
「いえ、お気になさらず」
「そういえば、ウカさんから君宛に招待状が届いていたよ」
「ウカ?」
「今度は自分のお店にも遊びに来てほしい、と」
私も一度行ってみたいが気を遣わせてしまうからね……、というミョスガルド聖の言葉が遠くに聞こえる。
受け取った招待状から、仄かに懐かしい甘い香りがしたと思ったら急に心臓が跳ね上がる。あわせて、なぜか後ろの穴がきゅ、とすぼむ。わけもわからず、招待状の字を見つめ続けた。
“辛くなったらいつでもご相談下さい”
おしまい