No.368
2023/11/06(Mon) 22:10
779 字
ルッチが素っ気なく返すと、パウリーは視線を空に彷徨わせて少し間を取ってから真面目な声音で「なあ、何かあったのか?」と心配した。嘘の気配に敏感なルッチとカク、ブルーノには、悲しい哉、その心配に嘘がまったくないのがわかる。こういう男を騙しているんだった、とルッチは改めて自覚した。そんな男をおれは今日も騙す。
祖母とパウリーのご両親、パウリーがそばにいて、避難所だったけどそこにはいつもの日常に近いものがあった。おばさんは、いつも私と祖母の分のパニーニも作ってくれて、ピクニックのように過ごしたのを思い出す。みんなでカードゲームをして、パウリーはよく無茶な勝負に出ては負けていた。悔しそうにするパウリーをなだめ、明かりが落ちるのに合わせて、続きはまた明日とタオルケットにくるまる。暗くなると一転、馴染みのない天井と知らない人の息遣い、衣擦れの音。なかなか寝付けなくて、朝方にようやくうとうとした。毎回、寝付いたくらいに起こされる羽目になり、外に出ると決まってからりと晴れた空だったから、眩しさが恨めしかった。快晴の下、カードゲームの続きをすることはない。そうしてまた次のアクア・ラグナがくる。
『はい』
「パウリー! いますぐ海列車に乗ってセント・ポプラにきて!」
お願いだから! はやく!
受話器の向こうからドタバタという足音のあと、バタンとドアが閉まる音が聞こえた。
肩で息をしながら、静かに受話器をおく。駅に走り出す。
「わたし、カクさんのこと好きだった」
ウカはまるで罪を告白するみたいな青い顔だった。
恋の話にはそぐわない、あまりの神妙さに、ぶは、と噴き出してしまう。何を言うかと思えば。
「なんだよ、それ! 別にわるかねえだろ?」
でも、と続くウカの言葉を無理矢理遮る。
「カクはいいやつだよ」
「すごくひどいことを言うんだけど」
「ん?」
「お金、が一番喜ぶ気が」
「それは開口一番、本人からも言われたわい」
カクさんは心底呆れ果てた様子で首を横に振った。パウリーのやつ、本当に言ったのか。なんだか私まで申し訳なく思って、なんかごめん、と幼馴染の代わりに思ったまま謝る。残念な幼馴染から、他にリクエストはなかったのか聞いてみるが、カクさんは少しの間のあと「くだらんことしか言わなくてのう」と困ったような顔をした。ヤガラレースの馬券でもねだったのだろうか。あり得る。
昔、副社長とよく一緒にいたカクさんという職人さんは人当たりも良くて、まあまあ話した。カクさんは「お菓子を寄せる人」で、街の人からもらったお菓子を、一人じゃ食べきれんから、とよく課に横流ししてくれた。そんなカクさんは、もう二年も前に辞めてしまったけど。
あとはルッチさん。ルッチさんは変わった職人さんで、理由はよく知らなかったが肩にハトを乗せて、ハトを介して話す人だった。そのくせ、面倒見はいいのか、なかなか書類を出してくれない副社長を引きずるように連れてきて『このバカが迷惑かけてすまない』と副社長の代わりに謝ってくれたりした。それで顔見知りになって、廊下やドック内で会うと、会釈をするくらいには知り合った。でも、ルッチさんもカクさんと同じく二年前に辞めた。
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