それは私の宝物#進捗 #KISSMEMORE 書き直し 続きを読む アイスバーグさんは私より五つ上で、初めて彼を見かけたのは廃船島で汗を流しながら槌や鑿をトントンカンカン鳴らしている姿だった。親を含めた周囲の大人たちは、なんだか毎日怒っているか悲しんでいるかで、そんな家や軒先には居たくもなく、近所に友達がいるわけでもなかった私は日がな一日、島をぷらぷらしていた。そうしているうちにある日辿り着いたのが、母からは危ないから近づくなと口を酸っぱくして言われていた廃船島で、彼はそこにいた。 今となってはたった五つ、と思うが、子供の頃の年の差というのはなんて大きいのだろう。彼はもう十分、大人の男の人に見えた。彼の上腕に踊るタトゥーの存在もそうだが、誰に指示を受けるでもなく、自分で考え、自分で決めて、黙々と作業する姿が彼を大人だと思わせた一番の理由だったかもしれない。彼は泣いてもいなかったし、怒鳴ってもいなかった。一心に作業していた。 廃船島には私と同じくらいの男の子もいたけれど、その子は一人で楽しそうで、私はかまってもらえずつまらなかった。あと、その子はなかなか一所でじっとしておらず、あっちにいったり、こっちにいったりで、なかなか話しかけるタイミングもなかったのだ。その子がフランキー、という名だというのは本人からではなく、アイスバーグさんから教えてもらった。 そんなわけで、私は歳の近いフランキーとはあまり仲良くなれず、毎日決まった場所で作業するアイスバーグさんが、いろんな道具を使って木を船の形にしていくのを見つめていた。ある日は木を削る音と匂いを、ある日は大きなのこぎりで木を分断するさまを、雲の形が変わるのを眺めるようなぼんやりさで、ただ眺めた。 数日同じようにしていたら、アイスバーグさんから声がかかった。 畳む favorite いいね No.467 2024/01/02(Tue) 18:30 763 字
アイスバーグさんは私より五つ上で、初めて彼を見かけたのは廃船島で汗を流しながら槌や鑿をトントンカンカン鳴らしている姿だった。親を含めた周囲の大人たちは、なんだか毎日怒っているか悲しんでいるかで、そんな家や軒先には居たくもなく、近所に友達がいるわけでもなかった私は日がな一日、島をぷらぷらしていた。そうしているうちにある日辿り着いたのが、母からは危ないから近づくなと口を酸っぱくして言われていた廃船島で、彼はそこにいた。
今となってはたった五つ、と思うが、子供の頃の年の差というのはなんて大きいのだろう。彼はもう十分、大人の男の人に見えた。彼の上腕に踊るタトゥーの存在もそうだが、誰に指示を受けるでもなく、自分で考え、自分で決めて、黙々と作業する姿が彼を大人だと思わせた一番の理由だったかもしれない。彼は泣いてもいなかったし、怒鳴ってもいなかった。一心に作業していた。
廃船島には私と同じくらいの男の子もいたけれど、その子は一人で楽しそうで、私はかまってもらえずつまらなかった。あと、その子はなかなか一所でじっとしておらず、あっちにいったり、こっちにいったりで、なかなか話しかけるタイミングもなかったのだ。その子がフランキー、という名だというのは本人からではなく、アイスバーグさんから教えてもらった。
そんなわけで、私は歳の近いフランキーとはあまり仲良くなれず、毎日決まった場所で作業するアイスバーグさんが、いろんな道具を使って木を船の形にしていくのを見つめていた。ある日は木を削る音と匂いを、ある日は大きなのこぎりで木を分断するさまを、雲の形が変わるのを眺めるようなぼんやりさで、ただ眺めた。
数日同じようにしていたら、アイスバーグさんから声がかかった。
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