BUKKOMI

memo

⚠️脳直気味です

約束のほうき星#掌編

 昔もこうしてナマエと一緒に彗星をみた。そのとき流れ星と間違えて願い事をしたのだが、やはり彗星ではだめなのか、願いはまだかなっていない。
「まさかと思って来てみれば。わしぁ、もう子供じゃないんじゃから付き添いなんぞいらん」
「たしかに。部屋から抜け出すのが上手になったね」
 ナマエが肩にかけたショールをぎゅっと体に巻き付けるようにしながら微笑んだ。グアンハオの夜はおそらくこの世界で一番安全だが、肌寒さはどうしようもない。
「ほら、風邪ひかんうちに部屋に戻らんと」
「どっちが世話係かわかんないな」
 私もまた見たくってさ、とナマエは草むらに腰を下ろし、そこから動かなかった。仕方なく自分も隣に座る。

 世論に疎くても任務ではあまり困らない。始末しろと言われた人間を粛々と始末する。新聞なんて読んだら、余計なことを考えてしまうような気がして気分が乗らなかった。例えば「なぜこの男は死ななければいけないのか」とか。一度、新聞には隅から隅まで目を通すカリファに面白いのか、と聞いたことがある。
「面白くはないわ」
「じゃあなんで読んどるんじゃ」
「世界が平和に近づいていることを確認したいからよ」
 それ以上何も言わなかった。
 今日もカリファは新聞をめくる。かさり、という音につられて目をやると一面に「彗星」の文字が躍っていた。新聞から目を離さないカリファに一面だけ読みたいのだとねだって手渡されたそれには、今夜、彗星が最接近するのだという記事が掲載されていた。ふと、昔の約束を思い出す。いや、約束なんてしっかりしたものじゃない。それでももしかしたら。

「子供の戯言、十年も覚えとるんか」
「さすがにずっと覚えてたわけじゃないけど、今朝の新聞で彗星の記事を読んでね。そういえば『次も一緒に』って誘われたな、と思い出して」
 カクに寂しい思いさせずに済んでよかった、とナマエは笑うが、カクは顔から火が出そうだ。
「そうそう。あのとき、あなたは彗星に何をお願いしていたの?」
「そんなの覚えとらんわい」
 カクの火照る頬を冷たい夜風が撫でていく。ナマエは、ふうん、と興味がなさそうでほっとする。カクの願いはずっとひとつ。
『せかいがへいわになってナマエとずっといっしょにいられますように』
 彗星はまだこない。畳む

No.428
967 字
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