BUKKOMI

memo

⚠️脳直気味です

海辺の二人 #掌編

「随分手間をかけさすのう」

 そう言いながら付き合ってくれた彼は、口調のわりには楽しそうだった。夕焼けに染まる海は美しく、沈む夕日に伸びる光の道はゆらゆらと波にあわせて形を変えた。沈む太陽に希望を感じたのは初めてだ。何もこんな日に。
 浜辺には私たちしかいなかった。波の音が意外に大きい。
 革命軍である私を殺しに来たのだと、彼は説明した。どうにも逃げられないと観念した私は『出来れば海辺で死にたい』と頼んでみる。冗談みたいな私の頼みを最後まで聞いてくれたのにも驚いたが、本当に連れてくるのだからもっと驚いた。

「手を握っててくれる?」
「この期に及んでまだ注文が?」
「不快かな?」

 どうせ死ぬなら、と気が大きくなって言ってみたのだが、彼は軽く息を吐いた後、大きな掌を黒いスラックスで乱暴に拭って、思っていたよりずっと優しく私の右手指と絡めた。彼の右手にはいつの間にか刀が握られている。

「武器、使うのね」
「今日は持っとるからのう。使わなきゃ手が汚れるじゃろ」

 あれ、嫌なんじゃ、と眉を顰める彼がおかしかった。『手が汚れる』とは文字通りの意味なのだろう。素手で命を奪うことへの抵抗感が、彼にもあるんだなあとぼんやり思って、なんだか嬉しくなった。

「最期に言い残すことは?」
「それを伝えに行ったあなたが私の大事な人を殺しちゃうかもしれないじゃない」
「それもそうか」
「仲間も、友も、家族も。どうかあなたに会わないで欲しい」
「嫌われたのう」

 寂しそうに言うのはずるい、と思う。目を閉じる。

「痛くしないでね」

 彼がぎょっとしたのが見なくてもわかった。手元が狂わないことを祈る。畳む

No.419
715 字
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