赤い快感の跡

「こんな跡だらけの身体で誘ってくるなんて、趣味が悪いのう」

 カクは、立ったまま壁に手をつくの背中に散った赤い花弁をなぞりながら、吐き捨てるように言った。は動揺した様子もなく淡々と「そういう任務なんですから、致し方ないじゃないですか」と説明する。もちろんわかってはいるが癪だった。カクが「さすがにシャワーは浴びてるじゃろうな?」と恐る恐る問うと、は肩越しに振り向き無言でカクを睨む。カクは「すまん、すまん」と形式的な謝罪の言葉を口にしながら、両手をするりと移動させ、胸の膨らみに手を添える。まだふにふにと柔らかい突起を指で摘まんで転がすと、はさすがに前を向いた。同時に、の髪がはらりと流れ、露わになったうなじにも、背中と同じキスマークを見つけてしまう。

「こいつ、自分じゃ確認できない場所にばかり……」
「そん、ッぁ、なに……ついて、ます、ッんぁ」

 喘ぎながら訝しむにカクは違和感を覚える。そして聞いてしまう。

「なァ、、お主こんなにここが好きじゃったか?」問いながら、両の先端をカリカリと指で掻くようにすると、は背中を仰け反らせながら「ァぁああっ」と声を漏らした。身体を無理矢理握って、搾り取ったような声だ。カクの嫌な予感は的中する。額に青筋が浮かぶのが分かった。

「随分と育ててもらったようじゃなァ?」
「そっ、んあぁっ! や、ちが」
「違わないじゃろ。よかったのう、気持ちいいところが増えて」
「ひど、いです、ッ!」

 カクがの足の間に硬くなった己を滑らせると、なんの抵抗もなくするりと動く。胸しか弄っていないのにこれか、とカクはまたイラついた。

「こんなに濡らしておいてよく言うわ」
「こ、これはッ! 先、輩に会え、たッ、からぁ!」

 思わずカクの手が止まる。はここぞとばかりに「仕事でのセックスと恋人とのセックスは違うにきまってます」と言い切った。

「そ、そんなのわからんじゃろ?」
「ひどいッ!」

 もう少し確認せんと、カクは言いながら愛撫を再開し、顔が見られない体位で良かったと胸をなでおろす。



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