こんどはぼくの番

 私はなんでも「初めて」が好き。だって「初めて」はいつまでも「初めて」のままでしょう?初めての彼女、初めてのキス、初めてのセックス。「初めて」は絶対に塗り変わらない。
 だから、一人入った酒場のバーカウンターでたまたま隣の席にいた、人懐っこいカクくんと盛り上がって、安宿になだれ込んでみたらカクくんが「実は、……シたことなくての」と言葉を濁すから、内心それだけで心が躍った。
 ただ、確かにカクくんは若いだろうけど、顔も小さくて、肌もきれいで、手足が長くて、初対面の私と安宿に一緒に来れちゃうコミュ力で、そんな機会がなかったなんて正直信じられない。でも、信じられないけど、嘘を言うメリットも見当たらなかった。

「そうなの? 全然見えないね! あっ、変な意味じゃないよ?」
「その、機会がなくて」

 ベッドの上で胡坐をかきながら、いまさら俯いて恥ずかしそうにしているカクくんが私は可愛くて仕方がない。私は彼のすぐ隣に座って「じゃあ、初めは私が触ってもいいかな?」とカクくんの耳をくすぐるように問うと、カクくんは黙って頷いた。
 私は、カクくんに横になってもらうと、服を脱がせて下着姿になってもらう。私も同じように服を脱いで添い寝し、出来る限り肌を密着させた。そのまま他愛のない話をしていると、緊張して強張ってたカクくんの身体が体温で少し緩むのがわかる。「あのドラマ面白いよね」と会話を続けながら足を絡めると、カクくんの身体がびくん、と跳ねた。

「ごめん、ごめん。いきなりだったね」

 そんなこと、本当は微塵も思っていない。私は「そのまま、寝てていいよ」と声をかけて、身体を起こすとカクくんの下着に手をかけた。するり、と脱がしたいが、主張するモノのせいでなかなかうまくいかないので、ソレにそっと手を添える。カクくんは腕で真っ赤になった顔を覆って、隠すようにしていた。
 下着を脱がすと、ビンッ、と跳ね返るカクくんにゆっくり舌を這わす。こういうのも初めてだろうか。軽く咥えながら「こえもはひめへ?(これも初めて?)」と質問すると、カクくんは激しく首を縦に振った。そういうことなら、あまり刺激するのはやめておこう。

「じゃあさ、今度はカクくんが好きにしていいよ」

 私はカクくんの隣に再度横たわり、攻守交替を告げた。カクくんは涙目になりながら、はあはあと肩で息をしていて、やりすぎたかな? と不安になったけど「じゃあ」と身体を起こした。

「……、キスは?」

 遠慮がちに聞いてくるカクくんの不安そうな表情に子宮がぎゅっとなった。「していいよ」と答えると、カクくんはおずおずと唇を重ねてくる。フレンチ・キスかなと油断していたがカクくんは意外にも舌を絡めてきた。え? え? と驚いている隙に手を恋人のように握られ、思わず握り返してしまう。舌が触れ合うたびに身体がぴくりと跳ね、手に力がこもる。
 それに気づいたのか、カクくんは執拗に私の舌を追いかけてきた。
 ぷは、と唇を離す頃には、私の方が肩で息をする羽目になっていた。

「じょ、上手すぎない?」
「お姉さんがいやらしいだけじゃろ?」

 「童貞相手にこんなに気持ちよさそうにしとるんじゃから」カクくんは照れながらも、先ほどとは打って変わって、余裕の表情だ。

「さっき舐めてもらったからの。お返しじゃ」

 カクくんは躊躇なく私の股に顔をうずめようとするので、慌ててそれを制した。ビギナーには色んな刺激が強すぎるに決まってる。「最初は指がいいな」とお願いしたら「そうか」と素直に応じてくれた。

「手のひらを上に、中指をそっと入れてみて?」

 私は身体を起こしてカクくんの手を取ると、そっと秘所まで誘導した。カクくんの指が入り口を割って入ってくると、自分でも思った以上に濡れていてびっくりする。カクくんが「キスだけでこうなるんじゃの?」とニヤニヤしているのが悔しい。
 カクくんの指は長くてごつごつして、でも、わたしのそこは、カクくんの指を難なく飲み込んでしまった。一本しか入ってないのに存在感がすごい。自分の意志に関係なく、きゅ、きゅ、と痙攣して、カクくんの指を締め付けている。そのたびにカクくんがわざわざ「おっ、きゅっきゅしとるの」と無邪気に言うからすごく恥ずかしかった。そろそろ抜いて、と言おうかと思ったらカクくんが「もっと気持ちいところがあるんじゃろ?」と言いながら、中指をくっと折り曲げた。

「んああああっ!」

 瞬間、びくんっ、と身体が弓なりに大きく仰け反って腰が浮いてしまう。カクくんは「おお、噂は本当なんじゃな」と変に冷静で、私の羞恥心を余計に煽った。

「ちょ、なんで……」
「童貞でも知識はあるもんで」

 そう言ってカクくんはまた私の弱いところをぐにぐにと刺激してくる。

「やっ! まっ、て! あ゛ッ! ああ゛ッ!!」

 私はカクくんの手首を掴んで必死に乞うことしかできない。私の身体がカクくんは中指、たった一本に屈服し始める。こんなの、初めて。



top