貫きざまに噛む

 ねえまた跡つけてるでしょう? と問われ、カクはしまったなと思いつつ、の背中に花を散らし続けた。の言い方が責めるようなものではなかったし、責められたとしてもやめるつもりはなかったからだ。返事をしないでいたら、ねえなんでつけるの? と素朴な疑問を投げかけられ、カクはの背に唇を寄せたまま口を開く。

「プリンに名前、書くじゃろ?」
「冷蔵庫の?」
「そう、冷蔵庫のプリン」

 私はプリンだったのかあ、と呑気な声を出してるだったが、カクが股の間の割れ目をそっと指でなぞると、ぬるりと滑り、ほんのわずかに腰が揺れた。つぷ、とそのまま指を沈めていくと、がぷるぷると小刻みに震えナカをびくつかせる。
 後ろからの蜜壺をかき混ぜるように指を動かし、カクは考える。本当はもっと「これは自分のものだ」と示したい。冷蔵庫のプリンに名前を書くだけでは足りなすぎる。シャツやハンカチにイニシャルを刺繍するように。首輪でつないでその首輪にハートの錠をかけたら、リードで引いて常に隣に置いておく。
 ふと、快楽で縛るのもいいか、と指を増やしながら思いついた。きつく閉じた肉壁をゆっくり指でひらくようにしながら馴染ませていくと、は腰を揺らして快楽を逃がそうとするので、空いていた手で腰を掴む。のびく、びくとした震えが、ナカだけでなく腰からも伝わってきて心地よい。
 こうやって自分なしではいられない身体に躾けてしまえば……、そこまで考えてカクはそっと首を振った。
 カクは考えるだけで実行しない。いつも思い浮かべては踏みとどまっている。人の身体と心は、すぐに壊れることを知っているからだ。それでも『わしのじゃろう?』とは決して聞かない。彼女が『うん』と言わなかったときのことが、カクは恐ろしくて仕方がない。
 尋ねるかわりに、柔らかく解した秘所へ固くそそり立ったモノをあてがって、ずぷずぷと腰を沈めていった。ぎゅうっときつく収縮してくる感触を楽しみながら、彼女の背中に上半身をぴたりと密着させてゆっくり抽送を繰り返すと「あ゛ッ、そ、そこばっかり! やめ゛ッ、てッ」というのくぐもった甘い叫びが鼓膜を優しく揺さぶってくる。
 そうか。こうしながら聞けば、彼女の喘ぎ声が「うん」と響くかもしれない。思いついて、カクはまた首を振る。結局無言で、最奥をトントンとノックしながら彼女の肩口に噛みつくようなキスをして、今日もこのどうしようもない征服欲を満たす振りをする。



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