ショコラ・ノワール

 カクは、彼女の手が自分の短い髪を何度も何度も梳くのが好きだった。びくん、と体が跳ねるのにあわせて彼女の指がカクの頭皮をぎゅ、と掴む。また何もなかったかのように彼女の指がカクの頭を撫でていく。
 彼女がこうして髪を梳いてくれるのは、カクが彼女の胸に顔をうずめているとき。ベッドに寝転んで向き合ったら、彼女のふわふわしたふたつのまあるいやわらかいものに頬を寄せる。すると、とく、とく、と優しい音がしてカクは心から安心する。
 と言いつつ、指はどうしても、そのやわらかいものの中心でつんと、上を向く突起をくりくりと弄りまわしてしまうのだが。戯れのつもりが、カクはいつもやめられなくて、そのうち彼女がカクの頭を両手でぎゅう、とかき抱くまでがセットだ。
 あまりに指で弄りすぎるとヒリヒリとして気の毒だろうと、カクは頃合いを見て、それの一方を口に含んで舌で転がすことにしている。毎回飽きもせず「いっぺんに舐められたらいいのにのう」と残念そうに言うのだが、そのたびに彼女の悩ましい甘い声が漏れてきて、カクは密かに満足感を覚えていた。「ふやけちゃう……」彼女が小さな声でそう呟いたら、もう一方に唇を寄せて、唾液でてらてらと光る方をまた指ではじく。
 ちゅうちゅうと赤ん坊のように無心で乳に吸い付くこの時間、彼女は必ず「かわいいね」と言うのだが、カクはそれが彼女の合図だと知っている。
 「かわいいのはじゃろ~」「おっぱいだけであんあん喘いで」「腰が揺れとるの、ばれとるぞ」「下はどうなってるんじゃろうなァ」「素直におねだりしたらいいじゃろ」舌で乳首をこねながら意地悪な言葉を重ねていくと彼女がぞくぞくと鳥肌をたてていくのが分かるのに、カクはわからないふりをして、もうしばらく飴玉を転がす。



top