肉の修惑

「わあ、おっきい」

 自分のブツに柔らかい手指を這わせながら股の間で無邪気に笑う彼女は、自分の知らない彼女だった。焦点の定まらない潤んだ瞳をこちらに向け、緩んだ艶やかな唇からは赤い舌が覗くような錯覚を覚えた。色なんて、判別できない暗闇だというのに。

「どんっだけ飲んだら、こんなになるんじゃ」
「たくさんだよお、たくさん、たくさん」

 彼女は今日、友人の独身最後の夜を祝うパーティーに参加するのだとはりきって出かけた。男子禁制、女だらけのバチェロッテパーティー。帰りは迎えに行くかと聞いてみたものの、男子禁制だから! と断られ、仕方なく部屋で彼女を待つことにした。そしたらこれだ。よくこの足取りで辿り着いたなと感心するほどの千鳥足。普段、節制している彼女からは想像がつかない。

「楽しかったあ、楽しかったあ、からあ、たくさん飲みましたあ」

 肩からずり落ちるカーディガンもそのままに床に座り込む彼女をなんとか抱えて浴室に放り込む。

「わかった、わかった。ほら、シャワー浴びて、歯を磨いて、寝るったら寝る」

 なんとか寝る支度を整えさせ、まだ乾ききらぬ髪もそのままに、ベッドに寝かせたら、これだ。

「はあ、カクのおっきいね~。なんで?」
「そんなとこにおるからじゃろ」
「うそお! わたしがさわるまえからおおきかったよお」

 なんでそこだけしっかりしとるんじゃ、こいつは! 苛立ちが募る。酒で火照った身体から香るボディクリームの香り、汗で首筋に張り付いた髪、湿った熱い吐息と、覗く鎖骨、組み敷いたら絶対に抵抗できないだろう力の入らない身体、そういったものを見せつけられて、反応するなというのか、こいつ。

「のう? あんまり煽らんで欲しいんじゃけど」
「あおる?」

 彼女の身体は、液体と疑われる猫と同じように、自分の腰から下に隙間なくフィットした。股間に血が集まって、ドクドクと脈打つのが分かる。彼女はそれに頬を寄せて、違う生き物みたいにビクビクと跳ねるそれを楽しんでいる。

「酔っ払いと寝る趣味はないんじゃ」最後の抵抗。
「酔ってないよ!」

 酔っ払いの常套句だ。頭が痛い。

「ねえ、カク。しよ。したい。ほしい。いれて? ねえ、いいでしょ? うずうずしてるの、ここ」

 普段の彼女なら絶対にしてこないねだり方に、カクの中で何かが弾けた。彼女の脇下に手を入れて、股の間から引っ張り出す。頭が並んだら、すかさず後頭部に手を添えて、半開きの唇をこじ開けるように舌をねじこんだ。

「んんんんんんんぁあ、あっあ」
「まだキスしかしとらんぞ。随分喘ぐのう」
「きもちい、もっと」

 試しに、開いた片手で胸をまさぐり、固くしこった突起をぐりぐりと弄ぶ。

「あ、んんんんッ、ああ、あ、いい、きもちい、もっと! もっと、いじってえ」

 揺れる腰を抱き寄せると、脚を絡め下半身を擦り付けてくる。酔いが醒めたら。彼女はどうなるのかと想像して、カクはまた一層自身が固くなるのがわかった。煽ったのは彼女だ。覚えていても、そうでなくとも。



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