大人の遊び方

「今日は次のステップじゃ」

 カクがあの意地の悪い笑顔でこちらを見下ろしている。「、まさかと思うが、ばんざいしてそれで終わりなんて、思っておらんじゃろうな?」と耳たぶを唇で甘噛みされる。最近、こういうスキンシップが多くなったとは思っていた。部屋で本を読みながら、他愛ないお喋りをしながら、指を絡め首筋を舐められる。手首を捕まれ鎖骨を舐められる。腰を抱かれ後ろからカクの固くなったものを押し付けられて、手は胸の突起や足の間にのびる。いじられて、まさぐられて、撫で回される。
 でも、「失礼、読書の邪魔じゃったな」と、「すまんすまん、それでパウリーがどうしたんじゃ?」と、終わっていたので、私もはあはあと肩で息をしながら、続けてとも言い出せず、ただ疼く体を持て余していた。

「今度は入れて気持ちよくならんとなあ」

 カクはそう言ってベッドに寝転んでいた私の足の間に座ると、手のひらを上にして右手の中指をゆっくり差し入れてきた。今日も、ほんのさっきまで部屋で雑誌を読みながら、体の至るところを撫でられ、耳を、指を、唇を舐められていたので、そこはもう蕩けている。

「ふ、あ......、あっ......」
「どうじゃ?怖いか?」
「怖くは、ない、んっ......ぁあっ......」
「ほう、ちゃんと気持ちいいのを覚えたんじゃな。偉いのう」

 いいか?今日のもちゃんと覚えるんじゃぞ、と言いながらカクが中で長い指を折り曲げ、私のお腹側の襞を擦ったり、トントンと刺激し始める。ゆっくり指を出し入れしながら、手前や奥、右寄り、左寄り、と色んなところを刺激されているうちに「んん──っ!?!?」と体が勝手に跳ね、ビクビクと痙攣するような快感が走る箇所があった。私は訳がわからず、つい首だけを起こしてカクの方を見てしまう。「な、なんかいま......」恐る恐る尋ねると、カクは「ここじゃろ?」と私と目を合わせながら同じところを刺激してくる。

「あああっ! そ、そこっ! ────ッ!」
「よしよし、ここか。あとでたっぷりこすってやるからのう」
「な、なあああっ! なに、これっ!? なん、でっ!」
のいいとこ、じゃろ?」
「──────ッッ!!」

 知らない! こんなの、知らない! そこを擦られるだけでガクガクと震えるような刺激に苛まれた。乳首をつままれるのでも、舐められるのでも、クリトリスを吸われるのとも、しごかれるのとも違う、一瞬、意識が持っていかれそうになるような快感。「カ、カクっ! これっ、────怖いッ!」押し寄せる快感の狭間でなんとかそれだけ言うと、カクはふっと手を止めた。

「そ、そうか。すまんすまん。でも気持ち良かったじゃろ?」

 カクはそう言って、指を動かすのはやめてくれたけど、抜いてはくれなかった。細くて、でも私のよりは太くて骨ばった指がまだ中に入っている。意識すると、そうしたいわけではないのに、きゅっと中が締まるのがわかって、気恥ずかしい。意識しないように、意識しないように、と思えば思うだけ、襞が収縮してカクの指に絡み付いているのがわかった。もうカクの方は見れない。こんなの答えているのと同じだ。カクもそう思ったのだろう、それ以上聞いてはこなかった。こっそりカクの顔を盗み見ると、ひく、ひく、と微かに痙攣する私のお腹や自分の指が入っている谷間とを見ながらほくそ笑んでいた。

「焦りは禁物じゃの。よし、お詫びじゃ。の仰せのままに」
「えっ?」
「ほら、どうしてほしい?」
「そ、それは......」

 知ってるくせに、と小声で言うと、カクは「当たってるといいんじゃが」と言いながら私の体を起こしたので後ろ手で自分の体を支える。寝そべっているよりカクと顔の距離が近くなって安心した。ちゅ、と軽く口づける。

「……正解」
「よかった。じゃあ、これは?」
「んっ! ......ぁあッ......」

 カクが胸の尖りに手を伸ばしそれを摘まむと、指で転がすようにゆっくりと動かす。甘い痺れが広がり、中に入っているカクの指をまた締め付けた。「これも正解みたいじゃのう」とカクが微笑む。カクはそうして暫く自分の指にひくついてくる私の中のうねりを楽しんでいるようだった。

「これはどうかのう?」

 カクが左手を胸から離し、そのまま私の口の中に親指と中指を差し込む。その指で私の舌を掴み、上顎をなぞって、唾液まみれになったその指を足の間に持っていき、中心の核を剥き出しにした。だめ、と思った瞬間、ビリビリとした快感が体を貫いて駆け抜けていく。ぬるぬるとした指で一番敏感な部分をくりくりと弄られ、上下にさすられた。「あぁ、これもいい感じじゃ。きゅうきゅう吸い付いてくる。乳首の時とはまた違う感じじゃのう」カクがのんびりとした口調で何か言っているがそれどころではない。いつまでたっても、むしろ、時間を増すほどにそこはぬるぬるとするようで、指はいつまでも動き続ける。
 中に入っている指はいつの間にか2本になっていて、私の方も、さっきより存在感の増したそれを中で感じていた。

「このままイッたら、中はどうなるんじゃろうな?」

 カクが私の顔を覗きこみながら楽しそうに問うてくる。私はせめてもの抵抗で顔を背けるのだが、もう限界だった。

「────っあ!っあ!!いっ......いくっ......────んんッ!!」

 おお!す、すごいのう......指が千切れそうじゃ────目の前にいるはずのカクの無邪気な感想が遠くで聞こえる。


「今日の目標は、入れて気持ちがいい、なんじゃが......」

 後ろ手で体を支えていられなくなった私は、余韻が残る体をすぐ横たえた。よっこらせ、とカクがのしかかってきて、さっきまで指が入っていたところに、硬くなったものをあてがう。入り口あたりで先端を少しだけ入れたり抜いたりするのは、決して焦らすつもりではなく、抵抗なく入るようにと、してくれている動きなのだと想像はできるのだが、緩慢なその動きについ腰が動いてしまう。

「やらしいのは大歓迎じゃ」

 カクが安心したようにゆっくり腰を沈めていく。半分くらいまでいれたら、ゆっくりぎりぎりまで抜き、また半分。また抜いて、今度はもう少し奥へ。入ってくるのも、抜かれるのも、気持ちがいい。そうして、この前よりもずっと短い時間で、カクの全部を飲み込んだ。

「どうじゃ?怖くないか?」

 うんうん、と首を縦にふると、カクは、良かった、と安堵のため息をついた。そして、念には念をと、繋がったまま接合部のすぐ上にある突起にまたしても指を添えた。

「こ、怖くないってば!」
「さっき入っとったのは指じゃったろ?」

 こっちでも試さんと、と再び先程と同じように指をゆるゆると動かす。指の動きにあわせて痙攣する熱くて柔らかな襞のせいで、さっきとは比べ物にならない圧迫感と、入っているカクのかたちが嫌でもわかってしまう。

「はあ、いい具合じゃ。ぴったりじゃのう、わしら」

 嬉しそうにこちらを見ながら、でも、指は止めない。私にまともな返事を期待していないのはもうわかっているけど、それでも恥ずかしくて両腕で顔を隠してしまう。それを見たカクは、私の両腕をとって上にのし掛かるように組敷くと「さっきのいいところ、覚えとるか?」と言いながらゆっくり腰を押し付けた。

「──ッ! ......ッ! ──あッ!」
「そう、ここじゃろ?」

 届く届く、と言いながら、ゆっくり、何度も、さっき暴かれてしまった一番感じるところを的確に擦り、突いてくる。もう頭がチカチカしていて、自分がどんな声をあげているのかすらわからない。中がどう蠢いているのかも。

「あっ、っ! またお前────ッ!!!」

 急に名前を呼ばれ、一瞬我にかえる。私の腰は快楽に溺れ、カクの意図しない動きをしていたらしい。中に入っているものがドクドクと脈打って、少しずつ硬さを失っていく。あああ......、というカクの声はちょっと情けなくて申し訳ないが笑ってしまう。

「あっ......ちょ、──ッ!わ、笑うと、刺激が......。あっ!」
「ふ、ふふっ......。カクの声もかわいいね」
「......には負けるわい」

今日の目標達成。



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