花蜜と甘露
「ちょっとした実験に付き合ってもらえないか」
正(シャカ)様からそう頼まれて、私は二つ返事で了承した。シャカ様のラボについていくと、錠剤二つと水を渡される。それを飲んだらここに座って欲しい、とたくさんのセンサーとモニターでごちゃごちゃとした椅子に着席を促され、慌てた私は錠剤をさっと口に放り込み、水で流し込む。自分が何を飲んだのかわからないまま。
座るとシャカ様が自ら私の指先や首筋、こめかみや足首、胸元などにセンサーを張り付けてくださった。貼りつけるたびに、モニターがブン、と低い音を立てて起動していく。詳しいことはさっぱりわからないが、心臓をモニターしている画面だけはわかった。それにしてもさっきから、やけに喉が渇く。身体も、なんだか熱い。
「じゃあ早速、君の身体のデータを取らせてもらおう。項目はもうスポンサーから指示されているんだ。肌に触れた時の反応、口内に指を入れた時の唾液の量、反応した乳首のサイズと固さ、……ああ、陰核もか」
シャカ様はまるで今日の夕飯の献立を羅列するみたいだった。表情はフルフェイスのマスクのせいでさっぱりわからない。
「しゃ、シャカ、さま……?」
「ほう。君は興奮すると、そんな顔をするんだな」
失礼、他意はない。シャカ様が事も無げに続けて、私は自分が何の実験台にされているのか最悪の想像をした。その最悪が、これから現実になるのかどうしても確かめたい私はシャカ様に今更の愚問をぶつける。「わたしは何を飲んだのでしょう?」と。
「俗にいう媚薬だろう。『パートナーをとろとろにして抱き潰したいあなたへ』とある」
「そ、んな」
「ほう。ウカはわかるか? 私はとんと疎くて」
シャカ様は先ほど私が飲んだ錠剤が入った瓶を眺めながらため息をついた。
「生憎「とろとろ」も「抱き潰す」もさっぱりだ」
生体反応はモニターしているから危険はない。辛そうだからさっさと済まそう、とシャカ様はてきぱきとシャツのボタンを外して私の胸を露わにする。たまらず手で隠そうとするが「どうした?」と心の底から不思議そうに問われると、恥ずかしがっている自分がおかしいような気になってきて、諦めて手を体の横に下ろした。シャカ様は定規を手にすると、痛いくらいに屹立した乳首にそっとあてがう。スチール製の定規は冷たくて、びくんっ、と身体が跳ねた。
「普段は何ミリかわかるか?」
「そ、んなの……わか、りませ、んんッ」
「ふむ。段取りを間違えたな。こういった実験は初めてで」
シャカ様はいたって真面目に、真剣に取り組まれているようだから、研究の一環だというのに、ひとりいやらしく反応している自分がひどく悪いことをしているような罪悪感が芽生える。ひとまず今とれるデータだけでも取っておくか、と呟いたシャカ様は、定規をあてがっていた突起をそっと指で摘まんだ。
「んあぁッ!」
「普段よりどうだ? 固さは増しているか? 快感は?」
「わ、ァっ。た、たぶん、ぁんんッ」
固さをしっかりと確かめたいのか、親指と人差し指を擦り合わせるように何度も動かされる。たまらずもぞもぞと足を動かしてやりすごしたが、今度は、左右で差はあるのかと、胸の両端を同じようにして確かめられた。
「あああッ、それッむりぃッ」
はやく、おわって。
私は目をぎゅっと瞑って、暗闇の中、自分の声とは思えない嬌声を聞き続けた。